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第九話 先輩後輩ごった煮戦線
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しおりを挟む未だに熱い体を叱咤してのろのろと起き上がり、少し冷静になってきた頭でシーツの汚れを嘆く。
ホテルの清掃員の人に心の中で土下座した。
ローションは使っていないとはいえ、シンプルに自慰後のシーツは申し訳ない。
シミになる前にティッシュペーパーを手に取り、自分のドロドロな下半身と、シーツに零れたぶんのクリームや体液を拭う。
『まあ、言ってもあんた速攻ぐずってたじゃないですか』
「あ、っあれはお前、わざとだかんな。別に、本当は余裕だったっての」
『小学生のまだ本気出してないぐらい薄っぺらい言い訳ですね』
「誰が小学生だよ性悪生」
ベッドと体を綺麗にしたティッシュペーパーをエチケット袋に入れて、ギュッと縛った。
『でも楽しんでたでしょ。恥ずかしいの大好きですもんね』
「誰がッ! チッ、もうしねぇからな! さっさと出張終わらせて、帰るッ」
『ん? 帰って本物の俺とシたいって?』
「マジで俺の意志を誤訳しかしねェ耳だなテメェ」
フン、と不貞腐れる俺は、こうして気づかないまま勝敗を煙に巻かれてしまっている。
三初との勝負の俺の勝率はだいたい二割あるかないかなので、わかりきっている結果だ。
下着と下衣を身に着け、ハンズフリーを解除したスマホを耳に当てる。
そろそろ竹本が帰ってくる時間だ。
それは向こうもわかっているのだろう。
少しだけくだらない掛け合いの会話をしてから、通話を終えることになった。
『会うとしたら、出張明けですかね』
「おー。明けに会うか。今週は休日出勤してるやつら増えてそうだな」
『でしょうねぇ。それ乗り切ったらひと段落だから、やってもらわなきゃ困るんで』
「ほどほどにやれよ。出張明けまで、会えねぇんだから」
『ま、それなりに管理してみますよ』
「テメェのそれなりって嫌な予感するんだよな。まぁいいか……じゃあな」
しかし終了ボタンを押そうとすると、『あ、そうそう』と声をかけられ、疑問を感じながら再度耳にスマホを当てる。
「? んだよ」
『俺も触りたい、修介』
「っ!?」
ビクゥッ、と肩が跳ねた。
一瞬、息が止まったかと思った瞬間である。
『だから今日はあんたの勝ちで、俺の負けですね』
「なん、負けって、っ」
『ふっ、ですが、最後は俺が勝ちますよ。負けっぱなしは性に合わない』
「お、オイッ!」
混乱を極める俺を残し、愉快そうな笑みを残して通話はブツッ、と切れた。
耳まで真っ赤になってスマホを握り締る俺の複雑すぎる心情は、やり場を失って心臓の鼓動を加速させるだけだ。
ベッドに腰かけて震えながら、悔しくて唇を噛み締める。
(あ、の野郎……ッ! 言い逃げしやがって、結局俺の負けじゃねぇか、クソ……ッ)
名前呼びは不意打ちに最適だが、やられると死ぬ相互に効果てきめんな不意打ちだ。
「うお~、帰ってきたぞ~」
手で口元を覆い内心で悪態を吐くと、ガチャ、と部屋のドアが開いて、スッキリとした顔の竹本が帰還した。
どうも浮かれている。
酔いつぶれてはいないが、酔うほど酒を飲んでいるらしい。
明日に残らない程度ならいいけど、コイツ、マジで割と図太い野郎だな。
アルコールの力と夜の街の力で機嫌がいい竹本は俺を怖がることなく、軽率にそばに近寄り、よ! と手をあげる。
が、俺の顔を見て、首を傾げた。
「あれ、御割ぃ。なんでそんなえっろい顔してんのぉ? わへへ。顔真っ赤で、目ぇ潤ませちゃってぇ~」
「は、ぁ……?」
「さてはお前、デリバリーしやがったなぁ? やーいメス顔御割ぃ。プレイ内容はおね攻めですかぁ?」
「…………」
──とりあえず、だ。
この後俺は竹本に四の字固めをキメたわけだが、これは絶対に間違っていないと思う。
今度ふざけたこと抜かしたら、それ以上口を開く前にバックブリーカーをキメてやっからな。全自動失言マシンめ。
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