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第九話 先輩後輩ごった煮戦線
08
しおりを挟む──そんな調子で、俺と竹本の新生コンビは、早くも三日目を乗り切っていた。
しかし乗り切っただけで、うまくできてはいない。
反響の理由として、有名ミーチューバーたちがおもしろおかしくサイトで先行公開していたトポスのアレンジレシピを紹介したせいだということは、判明した。
ありがたいが、タイミングの悪さがとんでもない。俺はやっぱ呪われてんのか?
おかげで客の数に対してこっちの人が少ないから、なにかとうまくいかないことばかりなのだ。
まず手が回らないで行列を捌けないと、結果的に売り上げが伸びない。
トポスもアイスも、単価が安いからだ。
行列には集客効果があるが、並ぶのはめんどうだと敬遠されることもある。
加えてSNS映えのためにトッピングも付けているので、提供には多少時間がかかった。
忙しいせいか、接客担当二人もサービスのクオリティが下がっていると思う。
並んだ上でぞんざいに扱われては、顧客の心象はよくない。リピーターを減らす。
たまにクレームがくるが、クレーム対応の仕方が壊滅的なので怒り倍増。
俺が出ても、俺自身が下手くそなので解決に時間がかかる。
それについては朝礼と終礼で言ってはいるものの、どうも二人は腑に落ちていなかった。
確か大学生だったか。
若い男女の二人だ。
俺は後輩、職場の年下にはおしなべて苦手意識を持たれやすい。
それにここは会社ではないし、俺はこういう実際にモールの中で販売をすることに関しては、素人だろう。
接客下手な俺がガミガミと言ってもいけないと思って、なるべく抑えて言った。
(それがどんぐらい効いてんのか、わかりゃしねぇしな……)
風呂から上がった後、ボフッ、とホテルのベッドに倒れ込み、渋い顔をする。
更新されるデータと戦い、本社と母体の間に挟まる竹本には、問題を起こしているわけじゃないスタッフのことなんか、押し付けられない。
今日だって疲れたから癒されてくるとか言って、出かけて行った。
なので今このホテルの部屋で、俺は一人だ。
「…………」
モゾモゾと動き、丸くなる。
沈黙するスマホを点けて、もう一度消す。
いや、別に。
なにも寂しくなんてなってねぇよ?
そもそもお互い忙しいから出張中でも連絡取らないようにしようって、俺が決めたんだ。密かに。うん。
「…………」
もう一度スマホを点けて、メッセージがない画面を見つめ、消す。
まぁ、なんだ……密かに決めたのは、アイツが送ってくるなら返事を返すのはやぶさかじゃねぇっていう、そういうアレだ。
だけど三初は「今暇?」なんて用はなくても構いたくなる恋人のような理由では、メッセージを送らないタイプだろう。
普段も、基本的には業務連絡。
たまに謎の写真が送られてきたりはする。
「……写真か。変な写真がありゃ、それを見せるっつー口実が……じゃねぇ。ない。ないないない。アホか俺は」
ブンブンと手を振り、スマホをポイッと投げた。
こんなの俺らしくねぇ。赤くなんてなってない。超絶ノーマルな顔色だ。
顔を合わせる時間が減って、たった一週間。全く会わずに、たった三日。
毎日顔を合わせて日常を過ごしていた弊害で、ギャップにやられているだけに決まっている。
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