345 / 454
第八話 シスターワンコとなりゆきブラザーズ
13
しおりを挟む俺に楯突くのは性分かコラ。
死んだように眠れ。大人しく看病されろってんだ。
「ほれ見ろ。立てもしねぇし大声も出せねぇからあぁなってたんだろうが。サイボーグだって故障すンだよッ」
「あーもーじゃあわかったんで、先輩あっちいってくださいよ……バカフィルター通って感染したら、めんどくさいでしょ」
「一緒に住んでンだからここにいるしかねぇだろうが。テメェが黙って寝てろ」
目元を腕で覆いながら覇気のない文句を言われても、どうってことはない。
長男を舐めんなよ。
親が留守の時に美環が風邪をひいたら、俺が面倒見てたんだ。
ブスくれた表情のままとっととキッチンへ向かい、給湯器から熱めの湯を出して風呂桶に溜める。
不機嫌丸出しの俺はハンドタオルと桶を持って寝室へ戻り、変わりなく転がっている三初の服を脱がした。
プチプチと濡れたままのシャツのボタンを外し、インナーを脱がせて上半身を裸にする。
続いてジーンズも脱がせて下着姿にさせるが、三初は「自分でやるんで」と呻くだけで、起き上がれはしないらしい。
体温は熱いのにヒヤリとした素肌は、風邪菌を貰った上で濡れ鼠のままでいた迂闊のツケだ。
「ふん。三時間もなにやってんだ。不調になったらじっとしてるとか、猫かよ」
「……はぁ……にゃーお」
ぎゅっと固く搾った温かいタオルで汗を脱ぐってやると、三初はようやく諦める。
ゆっくりと息を吐いて、降参の鳴き声をあげた。
「お前、なんで俺に連絡しなかったんだよ。スマホ机の上に置いてただろ」
「や、まぁ……何年ぶりってくらいの風邪ですし……立てるようになったら、自分で横になれたんで、いて」
パシッと頭を叩くと、されるがままの三初はそっぽを向く。
でも今回ばかりは自分にもこいつにも腹が立って、手を出さずにはいられなかった。
「もっとわかりやすく弱れ。ふん」
「いて」
もう一度パシッ、と叩いて三初を転がし、背中側も拭いてやる。
居心地悪そうな三初には見えないように後ろに回り、湧き上がる苛立ちを抑えた。
俺が不満顔だったのは、三初がすぐ近くにいた俺に、頼らなかったからだ。
熱が出たら体が重くて立てないだろうし、血圧の低いこいつが立ったところで、どの道目眩がして動けない。だからあぁしていた。
力を入れすぎないように背中を拭いてやりながら、肩を押さえる手がザワつく。
「……じゃあ、ちょっと来てくれって、呼べばよかったじゃねぇか」
「そう拗ねないでくださいよ」
腕で目元を隠したままの三初の返事になにも言えず、タオルをお湯で洗って絞った。
拗ねているのは正解。
恋人で、年上で、先輩な俺に頼りがいがないのかと、そういう気分だ。
けれど自分にも不満があるというのは、俺は三初が風邪をひいているのを気がつかなかったというところである。
もちろん普通に考えて気づけないというのはわかるが、理屈じゃない。
(……三初は俺が風邪を引いた時、言ってなくても気づいてくれたのによ……)
勝負事ではないけれど、俺も気がついてやりたかった。
ちょっとだけ、罪悪感がある。
こいつは付き合っていなかった頃のただの先輩の俺でも、突っぱねたのに自分から戻ってくるような男だから、だ。
20
お気に入りに追加
1,376
あなたにおすすめの小説
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる