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第七話 先輩マゾと後輩サドの尽力
08(side三初)
しおりを挟む好きな人だろうがなんだろうがデリカシーが皆無である、鈍感でアホな先輩。
そしてなんとなく正解をわかった上で自分の気分を優先する、他称性悪な俺。
そんなプライベートの対人関係に難有りなこと請け合いの俺たちカップルは、恋人と過ごすなんでもない土曜日を、どうしているのか。
結論は、適当。
予定は未定。
本日は健康的に早朝ランから始まった。
早起きしたくせになにやら考え込んでいた先輩がいきなり走りに行くと言い出したので、ルーティンワークを終えた俺がそれに付き合ったのだ。
順にシャワーも浴びたあとは、お粗末な脳細胞にわずかばかりでも栄養が届くよう、朝食を作ってやる。
ほっといたらまず野菜は食べないんだよね、犬だから。
飲み屋以外でも食事を共にするようになり始めた半年前くらいに気がついたことだけど。
手料理が好きみたいで、与えたら与えただけ食べる。お残しはしない。
だからここぞって感じに手作りにかこつけて、五大栄養素を補給させる。
なんかああ見えて、というか見た目そのままかもしれないが、御割先輩は家庭的ななにかしらというのに弱い。
それは料理以外はそつなくこなしていることに由来すると、推理している。
先輩が長男で年の離れた妹さんがいるらしい。その妹をかわいがっていることしか、家庭のことはわからない。
両親に甘えられなかったせいであのとおり、三十目前にして究極の甘え下手が形成されたのだろう。
そんなことを考えながら作った食事を取らせると、しばらく先輩はココアを飲んで静かに機嫌を良くしていた。
単純で結構。
口に出さずとも耳と尻尾が見えるからわかりやすい。
俺はその間にパッドを弄りながら今日はどこへ散歩に連れて行こうか、とプランを考えるのがだいたいの流れ。先輩は気づいていないことだ。言う気もなし。
大型ショッピングセンターやら都心部をうろつくのは楽だけど、マンネリだからなー。先輩あんまショッピング興味ねーし。
俺との付き合いで事柄はなんでもいいが、慣れる、というのは一番問題がある。
先輩にはいつでも刺激を与えないと。
なんでって? そりゃね、俺が新鮮な先輩の反応が愉快で気に入っているから。
だから昨日もいつも通り本気で嫌がるギリギリを見極めつつ、面白おかしくいじめていたのだが、ふと事後のまどろみで思うところがあった。
先輩のドマゾの素質を開花させたのは、俺だ。
おかげで先輩は尻を叩くといい声で鳴くようになったし、多少乱暴に抱いたほうが反応がイイくらいには、無自覚でハマっている。
けれど徐々にいたぶっているとは言え、その呵責は非常に優しいものである。
いや、恥ずかしながら俺も、先輩にはつい甘くなっちゃってねぇ。
ほら、甘やかしてほしいとか、さ。聞いちゃうとまぁ、かわいげがあってさ。
気分的には気ままに餌をやっていた懐かない野良犬が、ついに腹を見せて甘えてきたってカンジ。
あらら、ってなでてやっちゃうでしょ? 優しくしすぎちゃって困る。
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