誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

文字の大きさ
上 下
198 / 454
第五.五話 ツンギレチョロインとあれやそれ

03

しおりを挟む


 しかし画面の中のマルイは、どうもマヌケなショットばかりだ。
 ゴミ箱にはまっていたり風呂に落ちてほっそりとしていたり、ねこじゃらしに必死になりすぎたのか腹を見せて伸びている。

 どんくさい写真ばかり撮っているところを見るに、コイツは根っからなんにでも弱みを確保し愉快に笑う悪魔なんだろう。

 なりゆきとは言えペットにすらサディストとは。軽く引く。

 ペット部屋なんて作っているからにはかわいがっているのかとも思ったが、理由は「毛がつくのも壁湿気るのも嫌なんで隔離」だった。隔離って言い方やめろ。


「つーか名前テキトーすぎだろ。ナガイとマルイって見たまんまじゃねぇか」

「わかりやすいでしょうが」

「名前らしさ皆無だろ」

「寿限無寿限無より合理的でしょうに……じゃあ先輩ならどう名付けるんですか?」


 ほれほれと振られて思いついた通り直感で答えると、全力で哀れまれた。

 な、なんでだよッ?
 モシゲとネコキチ、かわいいだろうがッ!

 ぶすくれた俺は目の前に差し出されたままの三初のスマホの画面を、投げやりにスイスイと好き勝手めくっていく。


「ケッ、猫とヘビばっかりじゃねぇか」

「まー見られちゃいけないものはそれらしい場所で管理してますからねぇ」

「見られちゃいけない……あ! テメェ俺のアレ消せ! もういらねぇだろっ」

「やですよ記念写真なのに」

「なんの記念!?」


 俺を脅すために使っていたあの写真を消せとがなると、一瞬で却下された。

 俺の悲惨な写真がなんの記念になるんだちくしょうめ。殺意記念か? 今すぐ自撮りしろよだいたい同等の記念写真だコラ。

 こうなったら見つけて消してやるッ!

 意地になった俺は血眼になって画面をめくり、全ての元凶を葬り去ろうと躍起になった。──そしてペイッ、と一枚めくった結果。


「は?」
「あ」


 画面に映るは、動画である。

 しかしそのサムネイルが見覚えのある人物であり、もっと言えば、かなり恥ずかしい状態の人物だ。

 背後の三初がおっといけねぇ、とでも言いそうな軽い声をあげた。
 おいやめろ。嫌な予感しかしない反応をやめろ。

 ……そういやぁ半べその俺に容赦なく羞恥プレイを敢行しながら、妙に交換条件の連呼を強いられていたような気が……。


「…………」


 ポチ、と再生ボタンを押す。


『す、好き、だ』

『フッ……んー?』


 ダンッ! と強くタップし停止させる。

 ゆっくり後ろを振り向くと、小首を傾げられた。
 俺はそっと画面に向き直り、もう一度、恐る恐る再生ボタンを押す。


『好きだ、三初……っみはじめ好き、だ、すき、っひ、ぃひ……っ』

 ダンッ!

「消去どこだ消去ッ!」

「はい壊れるから返してね機械音痴先輩」

「あッ!?」


 間違いなく無許可の盗撮動画だと判明した瞬間消去を強行する俺の手から、スルリとスマホが奪われてしまった。


「待て待てッ、消したら返すから貸せよッ、消したら返すッ! もしくは死ね! 今すぐ地獄に猛ダッシュしたら許してやるッ!」

「まぁまぁ落ち着いて聞いてください。大の大人の泣き顔パ✕✕ン潮吹き告白ですよ? 普通に考えて動画撮るでしょ」

「どこの世界の普通に考えてだよッ! 鬼畜星のサドルールが地球で通用するわけねェだろッ!」


 奪われはしたが諦めちゃいない。
 ギシッとソファーを鳴らして背後に振り返り、逃げられないように三初のタートルネックのセーターを思いっきり掴む。

 この犯罪上等アウトロー野郎がッ! 顔と力と金と口車でなんでもまかり通ると思うなよッ! 実際たいていまかり通る世の中だが、俺に関しては通さねぇッ!

 絶対に逃がさん。
 消すまで逃がさん。

 これ以上いざという時の奥の手を増やされてたまるかってんだッ!




しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

上司と俺のSM関係

雫@更新不定期です
BL
タイトルの通りです。

市川先生の大人の補習授業

夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。 ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。 「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。 ◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC) ※「*」がついている回は性描写が含まれております。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...