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第五.五話 ツンギレチョロインとあれやそれ
01
しおりを挟むめくるめく官能の世界(特殊プレイ寄り)を経て、ドロリとアンニュイな気分が満ちる休日の午後。
半泣きで好きなんかやめてやると不貞腐れているというのに強制的に第二ラウンドへ上がらされ、記憶が朧になるほど繰り返し抱かれて意識を失ったあとの話だ。
目を覚ますと、俺は後処理を施された状態でシーツにくるまれてフローリングに転がされていた。
わけわかんねぇだろ。
俺もわけわかんねぇ。
理解及ばず、数分ぼーっとその場で瞬きをしていたくらいには意味不明だった。
まぁ寝ぼけてもいたけどよ。早起きの弊害である。
それからいつの間にやらシャワーを浴びて部屋着に着替えていた三初がコーヒーを差し出したことでふんわり覚醒した俺は、そこでようやく、自分がフローリングに放置されている現状を理解したのだ。
で、コーヒー片手にサイボーグ疑惑の暴君を問いただしたところ、曰く──
『え? シーツ替えるのに邪魔だったんで蹴り落としただけですけど? 先輩の無駄吠え防止で後処理はしたし足の指の間から全身拭き取って洗濯も済みで、ついでにシャツとスーツはクリーニング中。至れり尽くせりですよねぇ……』
──と、いうことらしい。
言いたいことは多々あるが、とりあえず蹴り落とすんじゃねぇよコラ。
一応先輩だろうが。彼氏以前に。
後処理と洗濯をついでにしてくれる優しさを見せておいてなんで俺本体の扱いは雑なんだよ、おかしいだろ。つかテメェはいつもおかしいなチクショウ。
頭の中によぎっていたのは文句の群れだったが、その時の口から出た言葉は「コーヒー……もっと甘くしてくれ」だった。
酷使された挙句寝不足からのフローリング起き。
ボケた脳みそはツッコミを放棄したらしい。
ノーパンなのはさておき、一応グレーのスウェットを着せられていたことも、文句を言わなかった一端である。
……毛がねェ上に下着もねェと、スースーしやがるけどよ。
あと最後のほうはなんだかスパンキングが加速して、鞭で打たれた気もするけどよ。
現実を直視したくないので、都合の悪いことは全て一時的に忘れることにした。尻がヒリヒリすることも、全て。
大人には時に、現実逃避も必要なのだ。
──そうして軋む身体と倦怠感を無視した、現在。
ソファーに寝そべる俺は三初と二人、リビングルームにて、クリスマスプレゼントの開封式を執り行っていた。
「お、おぉぉ……」
パカ、と開いた箱の中身を目視し、ついと声が漏れてしまう。
三初からのクリスマスプレゼント一つ目は、腕時計だ。
それもソーラー電池で電波機能がある上に、耐水設計でダイビングでも使えるいい時計である。
ジムでプールを使うことも多い俺は、耐水性の腕時計が欲しいなと思っていた。
外すのがめんどうなのと、時間もすぐ見れてなにかと便利だからだ。
プールで泳いでいる、くらいしか言った覚えはないが、いつ知ったのか。
腕時計を前にしばらく感激する。
……って待てやコラ。
これ結構値の張るやつだろ。職場の先輩にゃやらねぇ価格帯だろ。クリスマスプレゼントでこれとか非常識レベルだろ。
まだ付き合ってもない上に脈アリかもわからない状態で数万の時計を贈ると即決する三初の金銭感覚に、俺は目玉をひん剥いてドン引きした。
本人は「金銭感覚ってか惜しくないかどうか、だけど、まぁいいか……」と一瞥した。
よかねぇわ。惜しめ万札は。
いや別に俺も万札は使ったけども。そりゃ大人相手だし先輩だからってだけだぜ。……な、なんだよ。
気を取り直して、二つ目開封。
一緒に入っていた封筒の中身はこれまた俺の声が上がる逸品で、有名ホテルのスウィーツビュッフェ招待券だった。最高だ。
テレビで見たパティシエの本格ビュッフェだぜ?
全種類を網羅するしかねェ。休みの日に行こう。絶対行こう。
「やべーそこそこアガる。今度小型のジオラマ作ろ。会社で」
「会社で作んな」
チケットを持ってニマニマしていると、十個ぶんのキャラエッグの中身をコレクション棚に飾り立てた三初が、満足げに頷きながらクソ発言をした。
アガる、と言っているがいつもとまったく変わった様子がない。
コイツの喜怒哀楽の解像度が通信制限並みなせいで、俺にはしみじみと眺めてるだけにしか見えねぇ。もちっとわかりやすく表に出せ。
俺のクリスマスプレゼントは、イエローのレザーキーケースと仲直りを兼ねたキャラエッグ。
キャラエッグはおまけだったんだが、キーケースの箱を開いた時より、キャラエッグの包装紙を開けた時のほうが三初の目は丸くなっていた。
ちなみにチョコ部分は俺が消費したぜ。
あぁいうチープな味わいのチョコもわりかし好きなんだよな。
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