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第五話 冬暴君とあれやそれ
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三初の部屋へ連行されてから、室内へ入ってしっかりと鍵をかけられたあとに、目隠しが解かれた。
ここへ向かう道のりから推測すると、どこかのマンションだ。部屋の中は広く、一人暮らしにしては部屋数や機能など、いろいろなものが充実している。
車も持っていていい部屋に住んでいていて、物欲があまりなくとも持っている小物や服は質がいい。
俺と同じ給料をもらっているだけじゃ病気と怪我でデッドエンドな毎月が背水の陣生活になると思うので、なにか副収入でも得ているのかもしれない、と訝しんだのがファーストインプレッション。
昨日通話の向こう側にいただろう男は、見当たらなかった。
三初が言うには、諸事情で一晩泊まっただけの昔の先輩だとか。
特に誤魔化す素振りもなくやましいことはないと言われて安心したあと、俺は腕を引かれ口八丁手八丁で浴室を経て、寝室に連れて行かれた。
俺の部屋の、二人寝ると若干狭苦しいゆとりのない寝室。
それとは全く違った、広い部屋に広いベッドだ。
まるでホテルのように部屋の真ん中にヘッドを壁に着けたベッドが置いてある。空間殺しレイアウトと言ってやりたかったが、それは叶わなかった。
シンプルで物がないとも思うけれど、カラーがまとまったインテリアがらしくてムカつく。
俺が昨日望んだお宅訪問は、まあ、そんな感じ。
──で、現在。
「ふッ……うぅ、うっ……!」
なにをどうしてそうなったのか──俺はその広いダブルのベッドで、口枷手枷足枷のトリプルコンボの上、強制剃毛プレイを敢行されていた。
おかしいだろ。
もう今日何度言ったかわかんねぇくらい言ってるけど、声を大にして言わせてくれ。
「ほ、ほふぁひぃふぁぅあッ!」
「暴れないでくださいよ? スパッと女の子になっちゃうかも、ね?」
「ンぅ……! ふぃはぃうぇ……ッ」
ザリ、とシェービングクリームを塗した陰毛が剃られる感覚に思わず膝を閉じそうになると、即座に内ももをバシッと叩かれて、諸悪の根源がニンマリと笑う。
殺意しか湧かないが、シリコン製の口枷によってまともに文句も言えない。
暴れようにも、手首と足首を背後でX字の拘束ベルトで繋がれた俺は、自ら股間を晒すようなポーズでベッドに寝そべることしかできないのだ。
「ひぃぇ、ふぁ、あ」
カァァ……! と頬が羞恥と苛立ちで染まったまま、唯一自由な目で足の間から見える三初を睨みつけた。
遮光カーテンで日差しが遮られ、オレンジ照明がやわらかに照らす室内。
本来なら仕事をしている時間で、外ではたくさんの人が日常生活に精をだしている平日の午前だ。
にも関わらず。
俺は惚れた腫れたが決着したクリスマスに、意気揚々と全身ツルッツルにされているのである。
……ああそうだよ。全身なんだよ。
もうすでに陰毛以外の首から下の毛は全部風呂場で処理されたんだよッ!
男、御割。齢二十九にして無毛に戻される。凶悪犯曰く──〝なんでも言うこと聞いてやるって言いましたよね?〟だ。
そりゃ言ったが、これがキレずにいられるか?
俺は一発殴っただけだぞコラ。過剰報復すぎンだろ。
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