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第四話 後輩たちの言い分
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「おい三初。お前俺が昨日言った注意事項、復唱してみろ」
「ン? 八坂と喧嘩しない。思ったことはそのまま言う。手を繋がない」
「フルコンボしてんだよ! 手ェ離せ!」
中都がいつの日かのデジャヴを感じているのと同じく、俺はまたしても繋がれた手を振り回して、デジャヴを叫んだ。
狙ってんだろ? 絶対わざと全部無視しただろ。間違いねェ。だって三初だかんな。
それでも三初はなんのその。
振り回しても手は解けず、さっさと俺を出口まで引っ張っていく。
モール内の客の視線は痛いし、怒りで余計に体が熱くなりフラフラとしてきたし、これが叫ばずにいられるかってんだ。
エスカレーターを下りながらそう物申す俺に、三初は繋いでいるのとは逆の手で俺の顎を軽く掴む。
「はぁ、おかしいと思ったわ……先輩、なんでそんなに体が熱くなってるのか、わかってます?」
「あぁ? それはお前……たぶん、朝のコーヒーになんか入れたんだろ。ツナわさびとコンボキメたんだろうが。わかってんだぞ」
「あのね? 俺そんな暇じゃないんですよ」
「嘘つけ。だって今朝からじわじわ熱ィんだぜ? それしかねェ。お前なら薬盛るぐらいの軽犯罪日常的にこなしてんだろ。十二分に有り得る」
でないといろいろおかしいかんな。
辻褄がこうもピッタリハマるのに、それ以外にあるわけがない。現に昨日まで俺ピンピンしてたし。
なんの脈路もない質問だが、無理矢理目を合わせさせられながらもキッパリ答える。
そして手ェ離せ。……三初が一段上にいるせいで、この体勢がいわゆる顎クイに見えるだろうが。
三初は救いようのない馬鹿を見る目で俺を見るが、俺は三初の背後を死にたい気分でガン見中である。
なぜならイケイケ系な女子高生二人組が、はしゃぎながらガッツリ俺らを見てるかンな。死にてェ。
「うわ目の前でリアルBLショット。イケメンの顎クイ? マジ高まる~!」
高まんな。あと俺とこいつはボーイでもなきゃラブもしてねェ。
そのまま天井ぶち破って召されてくれ。
「てか手も繋いでるし! なになに嫉妬からのこっち見て的な? 体格的にイケメンが受けだよね。あたしクール受けマジ性癖」
残念だったな。コイツ着痩せするだけで、結構ガッチリしてんだよ。
そして性癖ぶち割って悪ィけど、俺が女役だ。現実は非情である。
「あ~あたし男同士の絡みで今日も生かされてる~」
「それな。ヴィレベンで箱買いした缶バ、タピりながら開けよ」
「ウィッス」
言いたいことは多々あるが、声が大きいんだよコノヤロウ。もちっと欲望は隠せ。
そしてイイ酒飲めるわ感覚でタピオカ飲むのかよ! 全く理解できねぇ。
最近の若い子ってのはこんなもんなのか? いやそんな馬鹿な。でもそうなら俺がおかしいのか? なんだかな……頭ボヤボヤするし、よくわかんねぇわ。
ムスッ、とへの字口で不貞腐れていると、はぁ……と特大の溜息を吐いた三初が、顎を掴んだ手でそのまま俺の頬をムニュ、と潰す。
「発熱、悪寒、思考能力低下、フラつき、その他諸々」
「ふみゅぅ」
「それって普通に──風邪ですよね」
「ふぇ」
か、風邪……?
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