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第四話 後輩たちの言い分
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しおりを挟むゆっくりとした動作で近づき、スっと目を細める。
俺の上に乗っている中都を見て、三初は俺の前に腰を下ろし長い足を組んだ。
俺を見つめ、コテンと小首を傾げる。
うっ……これあれだ。逆らったら面倒になるやつじゃねぇか。
尋ねるんじゃなく、言外に同意しか許さないってな空気出すやつだ。三初命令形。
「別に? 俺がずっとイイコでマテしてんのなんか忘れて? 存分にイチャこいていいですよ? 文句言うのも、ね? あはは」
「う、な、なんで怒ってんだよテメェ、十分くらいしか待たせてないだろ」
「それな! 俺とセンパイのスキンシップタイムを邪魔するなんかっ」
「来いよ駄犬」
「中都、一回降りろ」
「はいっす」
違った。
三初命令形、ガチトーンバージョンだった。
それはついさっきまで喧嘩を売っていたポメラニアン、中都までもが素早く俺の上から降りる威圧感があった。
命令されると二言も三言も文句をつけたくなる俺も、こればっかりは危機察知能力が働いてしまう。
つい中都を避けてから、四つん這いで三初の元へにじり寄ってしまったくらいだ。
顔はぶすくれているし、まだ紅潮もしてるが。
素直に従うのは俺の性根が許さねぇ。
難儀な性分だが、それが俺という生き物である。
「なんだ、ッいッ」
「男抱きしめて赤くなってんじゃないですよ。……?」
一見機嫌が悪いように見えないがドン底の三初は、寄ってきた俺のむくれた頬を見て、シワになった眉間にビシッ! とデコピンをした。ぶちのめしたい。
しかし三初は人様のデコに暴行を働いたくせに、なぜかキョトンとする。
弾き心地か? 弾き心地が悪いのかコノヤロウ。デコを出せ、ぶん殴ってやるよ。
機嫌の悪い三初にそれを言うと後が面倒なので心の中で吠えて、現実では唸るのみの俺だ。なんだ。もうちょっと熱すぎてそんな気力がない。クッソ頭イテェ。
そうして唸る俺から三初は視線を外し、中都に目を向けた。
「八坂、この山先輩のだよな? 何着渡すの?」
「なんっ! じゅ、十着くれぇって思ってけど!」
「そ。じゃあこれとこれとこれと、あとこれ。このコート。そんでこのパンツ二本。あとは趣味じゃないし似合わないから要らね」
「あ?」
「えっ!?」
ポカンとする俺と中都。
なんでテメェが決めんだ?
そんでなんで急に用を急がせるんだよ。別にいいって言ってただろうが。
驚く俺たちを後目に、三初は俺の貰う衣服をチョイスして、さっさと畳み、さっさと店の袋に手際よく詰めていく。店員かお前は。転職しろ。
「用事終わり。八坂は永遠にサヨナラ。行きますよ先輩。さっさと立って?」
そして俺は腕を捕まれ立ち上がらされる。
理解不能の俺。アンド中都。
「は!? やだ! なんで俺のセンパイ盗んの!?」
「盗る盗る」
「そこじゃねぇだろ! お前のでもねぇし! ちょっとま、靴ちゃんと履けてな、三初……!」
「裸足でいいから」
「いいわけあるかッ!」
「三初ぇぇぇぇっ!?」
──バタン。
「……え、デジャヴじゃね!?」
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