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第四話 後輩たちの言い分
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しおりを挟むどこまでも先輩様を小馬鹿にした不思議発言をする三初に、ヒソヒソと小声ながらも果敢に物申す。
すると三初はキョトンとしてから、いつものニンマリスマイル。
この顔をする時は基本的に、俺をからかって遊ぼうとしている。根拠なし。経験則。
「あらら。俺と同じってことはまさか八坂にもケツ掘られたってことですかね? クックック……ビッチ先輩似非処女だったんですか。虚偽申告とか傷つくわぁ」
「このッ、テメェわかってるくせに……! まず男に処女とかねェし先輩様のケツにハメてきた不遜な後輩は俺の人生においてお前ぐらいだわフリーダム暴君ッ」
「当たり前でしょ? 他人と穴兄弟になる趣味はないんで。つか先輩が他に抱かれんのも、まぁ嫌、ですし……ね?」
「なんだよその間怖ェなチクショウが」
ね? と言われてもわからない。
しかもその前の間が意味深で、俺は居心地悪く顔をそらした。頬もやや赤い。
くそ……三初が近くて人口密度上がってんのか? なんかやっぱ、暑い……気がする。残暑の本気、にしては遅いしよ。
まさか、地球温暖化も三初のせいか。
否定しきれねぇ。コイツならできそうだ。
お綺麗な顔で「穴兄弟」なんて言う野郎だが、システム関係はもちろん全般ポテンシャル高いかんな。ムカつくことに。
「……待てよ? 一棒一穴主義ってことは……他のやつに一回我慢して抱かれりゃあ、この大魔王の呪縛から解放されるんじゃ……?」
「御割先輩のそーゆーとこガチでキラァイ」
「三初クンのそーゆーとこマジクソファック地獄に落ちろォ」
わざとらしく作った高めの声で腹の立つ言い方をされ、即座に倍返しにする。
三初は深くため息を吐き、そっと体を離した。
「あーあ、マジかよ……この状況この流れで〝穴兄弟は嫌〟発言をそう解釈するとか、ホント先輩って難攻不落ですよね」
「は? なに?」
「いーえ。直球投げる前に牽制と変化球で外堀固めなきゃなのに、バッターが打席に立たない状況が悩ましいだけです。……ま、一番は俺が野球ベタで、ボーリングしかできねぇってのが最悪かね……はー、俺も相手もこの感情も、めんどくせぇな……」
「? なんで野球の話になンだ……?」
わからねぇ。
いつにも増してこいつがわからん。
三初は俺の隣に並びトン、と壁に背を預け、心底億劫そうに腕を組む。
体の熱が冷めないのでニットの襟元を掴み、パタパタと胸元へ風を送る。なぜか舌打ちされた。拳を握るが、それを振るうのは我慢するしかない。
なぜなら三初が、仕事終わりに新発売のコンビニスウィーツを買いに行ったら売り切れていた時の俺と同じ目をしているからだ。
あれは相当にショックだぜ。
よくわかんねぇけど、俺にとっての仕事終わりのご褒美スウィーツぐらい、三初にとっちゃ野球が大事みたいだな。
そう考えると、悩むコイツをどうにかしてやらないと、という気になってしまった。
まぁその、なんだ。
一応先輩としてどうにかしてやんねぇとだろ? ガラじゃねぇけどな。
こう目の前で落ち込まれる? 疲労される? とにかく萎びた後輩とか同僚を見つけると、俺はどうにも困ってしまう。
どうにかしてやりてぇけど、うまくできないからだ。
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