誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

文字の大きさ
上 下
76 / 454
第四話 後輩たちの言い分

13

しおりを挟む


 人を食ったような態度が基本の三初の本心は、とかくわかりにくい。

 そしてなにがなんでも目的を達成させるゴーイングマイウェイな性質に加え、そのためのあくどい手段を欠片も悪びれない性質もある。

 出会った時の完璧な笑顔で線引きしてなににも執着しなさそうな三初が、たぶん会社に入る前までの三初だ。

 それが嘘っぱちだと暴君化するより早い段階で察していた俺は、読めない後輩より自分のカンを信用している。


「……中都と喧嘩すンなよ? そんで思ったことはちゃんと言えよ? 前みたいに黙ンなよ? あ! 絶対手ェ繋ぐなよ……!?」

「ククク、さぁ?」

「テメェたまには俺のいうこと聞けよッ。じゃないと連れて行かねェ」

「そんな選択肢ないですし」

「バグりすぎだろ」

「同行許可は〝はい〟か〝イエス〟しか」

「クソゲーか!?」


 なにを言っても正体の掴みにくい返事ばかりで煙に巻かれ、つい額に青筋が浮かんでしまった。

 しかもいつの間にやら箸を持ち伸びてきた手が、最後に食べようと取っておいた目玉焼きをヒョイとつまみ、抗議する前に一口で食べられる。

 正真正銘のクソ野郎だ。
 食の恨みは恐ろしい。肥え太れ。

 こんな夜更けにピザをまるごと一枚と俺の目玉焼きを食べていてもまったく損なわれないスタイルを、恨めしく呪った俺だった。


  ◇ ◇ ◇


 翌日。

 昨夜の長期戦が案の定ダイレクトに残り、ベッドから這い出るのに普段の三倍ほどの労力を要した。

 よく起きれたなって?
 舐めんなよ。仕事の日に使ういつもの目覚まし時計に加え、今回はスマホのアラームを五個つけた。

 約束は守らなきゃだかんな。なぜか目覚まし時計が鳴らなかったが、ちゃんと起きれたので良しとする。
 保険にアラームつけといてよかったぜ。

 リビングへ行くと、やはりというかなんというか……三初は俺より早く目を覚まして、カタカタとノートパソコンを弄っていた。

 俺はコイツより早く起きれたことがないので、本当に寝ているのか定かではない。

 人間かどうかもたまに定かじゃない。
 できないことがなさすぎてロボじゃないかと思うけど、よく考えれば人格が破綻しているので結論、ただの三初だ。

 映画に行った日に買ったコーヒーは、こうして三初の作業のお供に役立っている。
 週末の朝には、見慣れた光景だった。

 わかりやすく〝今すぐベッドに戻りたい〟と顔に書きながらやってきた俺に、三初はチッ、と舌打ちして、ノートパソコンを閉じる。なんだコノヤロウ。喧嘩かコノヤロウ。


「起きれない自覚あったのかねぇ……まさか先輩にアラーム機能を使う脳みそがあったなんてな……日付変わるまで犯してやればよかった」

「おー……みはじめ、飯ィ……」

「餌ならレンジの上に置いてあるでしょう。ココア作ってないんで。寝坊してくる予定だったし」

「餌言うな。俺、寝坊しねーし。……くぁぁ……」

「大欠伸しといてなに吠えてんだか」

「うるへェ」


 三初はボソリとなにか呟いたように思ったが、空腹と眠気でイマイチ頭が働かない俺は、まぁいいかとスルーした。

 どうせ大したこと言わねぇしな。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

犬用オ●ホ工場~兄アナル凌辱雌穴化計画~

雷音
BL
全12話 本編完結済み  雄っパイ●リ/モブ姦/獣姦/フィスト●ァック/スパンキング/ギ●チン/玩具責め/イ●マ/飲●ー/スカ/搾乳/雄母乳/複数/乳合わせ/リバ/NTR/♡喘ぎ/汚喘ぎ 一文無しとなったオジ兄(陸郎)が金銭目的で実家の工場に忍び込むと、レーン上で後転開脚状態の男が泣き喚きながら●姦されている姿を目撃する。工場の残酷な裏業務を知った陸郎に忍び寄る魔の手。義父や弟から容赦なく責められるR18。甚振られ続ける陸郎は、やがて快楽に溺れていき――。 ※闇堕ち、♂♂寄りとなります※ 単話ごとのプレイ内容を12本全てに記載致しました。 (登場人物は全員成人済みです)

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

見せしめ王子監禁調教日誌

ミツミチ
BL
敵国につかまった王子様がなぶられる話。 徐々に王×王子に成る

処理中です...