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第四話 後輩たちの言い分
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しおりを挟む人を食ったような態度が基本の三初の本心は、とかくわかりにくい。
そしてなにがなんでも目的を達成させるゴーイングマイウェイな性質に加え、そのためのあくどい手段を欠片も悪びれない性質もある。
出会った時の完璧な笑顔で線引きしてなににも執着しなさそうな三初が、たぶん会社に入る前までの三初だ。
それが嘘っぱちだと暴君化するより早い段階で察していた俺は、読めない後輩より自分のカンを信用している。
「……中都と喧嘩すンなよ? そんで思ったことはちゃんと言えよ? 前みたいに黙ンなよ? あ! 絶対手ェ繋ぐなよ……!?」
「ククク、さぁ?」
「テメェたまには俺のいうこと聞けよッ。じゃないと連れて行かねェ」
「そんな選択肢ないですし」
「バグりすぎだろ」
「同行許可は〝はい〟か〝イエス〟しか」
「クソゲーか!?」
なにを言っても正体の掴みにくい返事ばかりで煙に巻かれ、つい額に青筋が浮かんでしまった。
しかもいつの間にやら箸を持ち伸びてきた手が、最後に食べようと取っておいた目玉焼きをヒョイとつまみ、抗議する前に一口で食べられる。
正真正銘のクソ野郎だ。
食の恨みは恐ろしい。肥え太れ。
こんな夜更けにピザをまるごと一枚と俺の目玉焼きを食べていてもまったく損なわれないスタイルを、恨めしく呪った俺だった。
◇ ◇ ◇
翌日。
昨夜の長期戦が案の定ダイレクトに残り、ベッドから這い出るのに普段の三倍ほどの労力を要した。
よく起きれたなって?
舐めんなよ。仕事の日に使ういつもの目覚まし時計に加え、今回はスマホのアラームを五個つけた。
約束は守らなきゃだかんな。なぜか目覚まし時計が鳴らなかったが、ちゃんと起きれたので良しとする。
保険にアラームつけといてよかったぜ。
リビングへ行くと、やはりというかなんというか……三初は俺より早く目を覚まして、カタカタとノートパソコンを弄っていた。
俺はコイツより早く起きれたことがないので、本当に寝ているのか定かではない。
人間かどうかもたまに定かじゃない。
できないことがなさすぎてロボじゃないかと思うけど、よく考えれば人格が破綻しているので結論、ただの三初だ。
映画に行った日に買ったコーヒーは、こうして三初の作業のお供に役立っている。
週末の朝には、見慣れた光景だった。
わかりやすく〝今すぐベッドに戻りたい〟と顔に書きながらやってきた俺に、三初はチッ、と舌打ちして、ノートパソコンを閉じる。なんだコノヤロウ。喧嘩かコノヤロウ。
「起きれない自覚あったのかねぇ……まさか先輩にアラーム機能を使う脳みそがあったなんてな……日付変わるまで犯してやればよかった」
「おー……みはじめ、飯ィ……」
「餌ならレンジの上に置いてあるでしょう。ココア作ってないんで。寝坊してくる予定だったし」
「餌言うな。俺、寝坊しねーし。……くぁぁ……」
「大欠伸しといてなに吠えてんだか」
「うるへェ」
三初はボソリとなにか呟いたように思ったが、空腹と眠気でイマイチ頭が働かない俺は、まぁいいかとスルーした。
どうせ大したこと言わねぇしな。
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