誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

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第三話 概ね普通の先輩後輩

24【挿絵注意】

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 三初は俺の言葉に一層理解不能な顔をして、口元を右手で隠す。その間も俺はスリスリしている。心なしか赤らむ頬。図星か?

 こうして触っただけなのにここまでの反応を示すということは、やっぱりそういうことなのだろう。

 鈍くてデリカシーのない俺にも、ようやくお前の考えてることがわかった。

 やっぱ年下だよな。
 俺は胸元を触れていた手を引っ込め、今度は少し乱雑に三初の髪をわしゃわしゃとなでる。


「っ、あのね」

「いいんだぜ。つか、いいだろ。テメェがあからさまに他人を気にせず好き勝手に振る舞うのは、元々性悪ってのもあるけど、多少理由があるんだろうよ」

「や、触んないでくれませんかね……まず脳みそ整理するんで、先輩に指摘されるとは思わなかったし……」

「あ? 考えることねぇじゃねぇか? 俺は気にしてねぇし、つか俺も気づいたの今だし、そもそも先輩だからな。お前のそういうのも、受け止めてやるよ」

「……。そういう問題じゃないでしょ」

「そういう問題なんだ、よっ」

「っは……ちょっと、っ……」

「お前はなんでもできても、なんでもしなくてもいい。無傷なフリして笑うな」

「!」

「よーしよし。いい子だ、いい子」

「……。まぁ……こういうとこは、昔から……あー……なる、ほど……なるほどね……はー……」


 いちいち文句を言わないと気が済まない根っから天邪鬼な三初を、いい子いい子と強めにワシワシなでてやる。

 なでられる三初は人の話をちゃんと聞いているのかわからない様子で、ブツブツと考え込んでいた。

 その顔は複雑そうで渋いものながら、いつものいけ好かないニヤけた面よりずっとイケメンに見える。

 四つ年下の後輩。
 四つって結構デカいよな。


「な。普段はやいやい言っちまうけど……普通に俺は俺のことを自分でするし、お前になに一つ期待とかしねェし。仕事も感情も」


 ポン、と髪をひとなでして手を引く。

 こうやって俺の行動に嫌味を言わず大人しくしてると、かわいげがあるな。

 凶悪な笑みしか浮かべられない俺だが、そう考えると自然と微笑みが漏れた。


「お前の嫌いな仕事と人間関係な。俺は最低限以上なにも求めてねぇ。好きなようにしてればいい。ムカついたら容赦なく殴るし怒鳴るけど、三初 要以外になれとは思ってねーよ。だから、わかるだろ」

「……ん。それはとっくに知ってますよ。あんたがそうだって」


 モゴモゴと手の中で捏ねる言葉はよく聞こえなかったが、三初はなにかに納得したように息を吐き、俺と視線を合わせる。

 どうだ? ちょっとは先輩らしく、察して気遣うってのができてると思う。

 なにを気にしていたのか、周囲を警戒して生きるのは大変だ。正直、誰が好きでも関係ないだろ。

 後回しにしていた疑問を改まって掘り返すには、今しかない。……わざわざ口にするのは恥ずかしいけどな。


「──好きになってもいいんだぜ?」


 俺は小さなことは気にしない、豪胆な男だからな。

 いつもとは逆に、俺のほうが愉快げに口角を上げる構図。そっと影を落とした三初の手が俺の前髪を指先でつまみ、擦り合わせて離れていく。


「突然なにを言い出すかと思えば……いいんですか? 俺、この感情……認めちゃいますよ?」


 ジッ、と目を合わせる三初は、もう数分前と変わらない飄々とした面立ちに変わっていた。なんだよ、ちょっと照れてたくせに。

 挑戦的な言葉をかけられ、俺はコクリと頷き返す。

 好きになってもいいだろ。そういう感情の矛先は森羅万象が自由だ。他がごちゃごちゃ言うことじゃない。


「いいぜ。だってお前──欲求不満の隠れゲイなんだろ?」

「はい?」


 慈愛に満ちた俺の返答を受けた三初は、抑揚のない声を上げて無表情で小首を傾げた。







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