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第二話 先輩ワンコの沽券
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「ちょっと、なに感じてるんですか。もう勃起しないでくださいよ? いい加減戻らないと俺は余裕だけどあんた仕事終わんねぇよ?」
「っせぇな、誰のせいでこんなことになって、ん、っは……っ」
「あー……ゴム持ち歩いてないんでうっかり。あと先輩が中に出せってうるさ「あぁぁあ黙れッ!」マジでうるさいわ……声ガッサガサだし」
足を持ち上げられ中に指を突っ込まれ、奥に溜まった精液を掻き出される。
──結局。
我慢しきれなくて開き直り、泥沼に溺れた俺は、現在しっかりと抱かれ、三初の首に腕を回してしがみつきながらせめてもの責任として後処理をされていた。
今度は気絶しなかったが喉が終わってる。あと尻と関節がギシギシしてる。帰りたい。切実に。
チャプ、と残滓が掻き出され水面に波打つ音を響かせながら、俺は大人しく処理が終わるのを待つ。……仕方ねぇだろ、負けたし。つーかアレ流されたら困るしよ。そういうことだ。
中を指で掻き回されるとまた勃ちそうになるが、流石に何度か出しているのでそうはならなかった。
というか昼休憩のリミットから二十分も遅刻しているのがやばい。
なにがって俺の仕事の進捗だ。
「はっ……あー……昨日の企画通ったら、提携してるスーパーの、っ、ン……ポイントカード会員情報洗って、客層全店リスト、出させねーと……」
「俺が確認して仕上げたからたぶん通りますよ。開発部がヒィヒィ言いながら作った新商品のオープニングね……そのリスト、会員だけじゃなくて非会員の顧客も週一ランダム曜日集計させてデータ化してあるんで、あとで送ります」
「んなっ、んだよソレ。っ、ん」
「あの高級志向のマーケット、うちと自社ブランド食品の製造関係で共同してるでしょ? 取引の頻度高いんでもう関連データだけ共有してもらおうと思いましてね。半年前に提携した時に向こうの人と話し合いして、商品パターンに合わせて販売シュミレーションできるように、各項目細かく種別に分けさせたんですよ。もちろん手間のかからないようにある程度は自動でデータ化されますんで問題なし。で、そのデータはうちのシステムからでもアクセスできる共有クラウドに自動保存。お好みのデータをピックアップしてリスト化できるから……ま、半時間でまとめて資料にして、あと半時間で進行ミーティング用のシュミレーション結果スライド作成イケるな……課長が企画ポシャらせても三分で覆せるし……よし、今日中に企画スケジュール素案組んで定時帰宅。あ、先輩は商品資料まとめて制作会社のCMプランナーに話つけといてくださいね」
「わかってたけどテメェマジでムカつくぐらい準備いいなコノヤロウ」
「作業効率と速度向上。あのシステムは他の提携マーケットにも導入したし企画部全体が市販の販売ターゲット絞りやすくなったんで、うちの部長は俺にあんま強く言えないんですよ。……はい、おわり」
「ぁッ」
にゅる、と中から指が抜かれ、ピク、と体が震えた。
湿った陰部をトイレットペーパーで赤ん坊のように拭われ、ようやく服装を整える。
拭われてる間は三初の毛根引きちぎる勢いで髪の毛掴んでたケドな。死にたい。
硬い便座の上で腰が折れるんじゃないかってくらい体丸めたり反らせたりと無茶をしたので、もの凄く腰が痛かった。
俺はよろよろと個室から出て、酷い二日酔いを患った朝のような表情で手を洗う。
三初はそんな俺をにんまりと機嫌よく見つめ、なぜか同じ洗面で手を洗う。
邪魔だと言うが、べっと小馬鹿にしたように舌を出された。
「テメェは普通に俺と接することができねぇのかオイ」
「滅茶苦茶普通でしょ。これがまぁ、俺の素? 素じゃなくていいなら、しゃーなしキャラエッグ十個で一日だけ他社と企画すり合わせてる時みたいにしますけど」
「一日だけかよ! いらねぇわアホ!」
「イ゛ッ……!」
ガンッと三初の靴を踏みつけ腰を庇って猫背になりながら、俺は顔を赤くしつつトイレを後にする。もちろん怒りの赤面だ。当然。
ずっと素面の三初だったのに今更他みたいに仮面かぶられたって、胸糞悪いだけだ。
それなら今まで通りのがマシだろ。
またキャラエッグなんて子どもの菓子買いに行って笑われるのもムカつくし、はぁ……仕方ねぇな、馬鹿野郎。
ため息を吐いて、ガシガシと自分の髪を乱暴に掻き回す。
「昨今デリケートなパワハラ問題ですかね」
「おうおう裁判なら受けて立つぜセクハラ大魔王がッ」
顔が怖くて不器用な俺がどれだけ口悪く全力で突っぱねても、この馬鹿野郎は俺にちょっかいを出しに来るのだ。
第二話 了
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