誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

文字の大きさ
上 下
22 / 454
第二話 先輩ワンコの沽券

06

しおりを挟む


 未だに天ぷらを食べていたせいでそばを余らせている冬賀の器を目で刺し、ズズ、とそばつゆを啜る。

 いいだろ。
 つゆも甘くて美味いんだよ。

 それをなにやら納得した顔でうんうんと頷いた冬賀は、いつものようなあっけらかんとした、度量の大きい笑顔でカラカラと笑う。


「まぁ前立腺マッサージの風俗あるしなぁ。俺はついて行ってやれねぇけど、今度サイトのリンク送ってやるよ」


 瞬間、俺はゴブゥッ! と甘くて美味いつゆを吹き出した。


「ゲホッゲホッて、てめ、なにをどうしてそうなったんだあぁッ!?」


 コイツは笑顔でいったいどうしてバカを言い出しやがったんだコラ。

 頭がミラクルになっているのかトチ狂ったことを言い始めた冬賀に、ついそばつゆを吹き出した俺はゲホゴホ咳き込む。

 というかなんで俺のエロ事情の話みてぇになってんだよ。

 やめろ。親指立てんな。
 友人の新たな一面を受け入れてやる気満々の穏やかな顔をすんなアホが。バチボコに腹立つわコノヤロウ。

 きたねー、と文句を言いつつもお絞りでテーブルを拭く冬賀を容赦なく睨みつける。
 もちろん俺の目つきの悪さにもとっくに慣れた冬賀には威嚇が通じない。

 冬賀はケラケラと笑いながら綺麗になったテーブルでズルル、と蕎麦を啜って、俺の眉間のシワを指でトン、とつついた。


「でもさ、ケツって素質あったら一発でハマるらしいーから気をつけろよ。後ろ使わねーとイケなくなんだって。従兄弟がハマって今カマ化プラス、ゲイバー経営してんぜ」

「ハッ、そりゃねーだろ。お前の従兄弟が元々ゲイだっただけじゃねぇか? 普通一発で物足りなくなるかよ」

「むぐ……アイツはなんか遊びでハッテン場行って好奇心でヤッたらしいからなぁー。ま、前立腺マッサージぐらいなら大丈夫じゃね? 対象女だし。掘られなきゃいいんだよ。お前がゲイに言い寄られなけりゃオーケー」

「ん……あー……まぁな」


 なんでもないように雑談をしてくる冬賀に、そばをズゾゾと啜る俺は、微妙な返事を返すしかない。

 まさかもう掘られてるとは死んでも言えねぇ。手遅れだぞお前の友人。
 なんだったら一回ケツに挿れられながらイってる。死にたい。

 おあげの出汁が滲んで甘くなっている蕎麦のつゆを惜しんで啜り、飲み干しながら、不機嫌を隠しきれない口調で反論する。


「つーか俺お前や三初みてぇなイケメンじゃねぇし、顔も別に美形じゃねぇし、俺がゲイにモテるかよ。かと言ってなんかこう、イメージ的なガチムチゲイっぽくもねぇし。そうそう言い寄られてたまるか。もしきたら、玉潰して返り討ちにしてやる」

「バーカ。俺がゲイにモテる男のタイプなんかわかるかよ。でもお前、目つき悪いのと笑わねーの置いとけばイイツラしてんぜ? そんでタッパある割に腰細いからエロい」

「ここの払いお前持ちな」

「あっ? オイまだ俺蕎麦食ってるだろぉが!」


 ガタンッ、と立ち上がって、騒ぐ冬賀に中指立ててから出口に向かった。

 蕎麦や天ぷらを運んでいたアルバイトの女の子に「ごちそうさん」と声をかけると、ちょっと頬を赤らめて腰をガン見された。

 いや聞かれてたのかよッ!

 なにが悲しくて若い女の子にあんな目で見られないといけないのか。もうしばらくこの蕎麦屋には来れやしない。

 きつねそば、気に入ってたのによ。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

犬用オ●ホ工場~兄アナル凌辱雌穴化計画~

雷音
BL
全12話 本編完結済み  雄っパイ●リ/モブ姦/獣姦/フィスト●ァック/スパンキング/ギ●チン/玩具責め/イ●マ/飲●ー/スカ/搾乳/雄母乳/複数/乳合わせ/リバ/NTR/♡喘ぎ/汚喘ぎ 一文無しとなったオジ兄(陸郎)が金銭目的で実家の工場に忍び込むと、レーン上で後転開脚状態の男が泣き喚きながら●姦されている姿を目撃する。工場の残酷な裏業務を知った陸郎に忍び寄る魔の手。義父や弟から容赦なく責められるR18。甚振られ続ける陸郎は、やがて快楽に溺れていき――。 ※闇堕ち、♂♂寄りとなります※ 単話ごとのプレイ内容を12本全てに記載致しました。 (登場人物は全員成人済みです)

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

ドSな義兄ちゃんは、ドMな僕を調教する

天災
BL
 ドSな義兄ちゃんは僕を調教する。

見せしめ王子監禁調教日誌

ミツミチ
BL
敵国につかまった王子様がなぶられる話。 徐々に王×王子に成る

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

処理中です...