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第十話 悪魔様は人間生活がヘタすぎる
21※微
しおりを挟む「ん、っ……結局おさわりしましたしね。なんなら舐めましたしね」
「でも愛撫は大事だろう? それに私はプニ蔵でも構わないぞ。抱き心地と肌の吸い付きがよくなるのでかえっていい……」
「愛撫とか言うな。っふ、……普通のボディがいいし普通のプレイでいいの」
「普通であるっ。九蔵とお風呂場にいてイチャイチャしたくなるのはむしろ私が健全な証拠さ。九蔵の足だって舐めるのは当然」
「じゃないですね」
昼間は明るくて恥ずかしい。
反響する音だって照れる。
視線をズラして意識しないよう言葉を重ねた。
水も滴るいい男はガン見したいけれど、自分を認知されるなら話は別。
話している最中でも動きを止めないニューイを恨みがましく見つめるが、ニューイはピューピューと吹けていない口笛で誤魔化した。誤魔化し方下手くそかい。
「うむむ……しかたないのである。どんなに立派な悪魔だって恋人とのバスタイムとなればただのエロ男爵さ」
「エロ男爵て」
「明るい場所もバスタイムも真正面からフラグごとへし折るキミが朝風呂に誘うなんて、これはもうイエスに違いないかな、と……!」
「否定はしませんが、ならバスタイムは不健全でファイナルアンサーですぜ。結局セックスすんだもんよ」
「そんな無駄に男らしく現実を突きつけなくてもいいじゃないか!」
腕こそ組めないが堂々と痛いところを抉ると、涙目のニューイが「前から思っていたがキミはそういう雰囲気というかロマンチックの欠片もないなっ」と拗ねる。
グサッ! とダメージを受ける九蔵。
ロマンチック大好き人間の自分にロマンチックがないだと? そんなまさか。
というかそういう雰囲気ってなんだ。
どういう雰囲気だ。エロ雰囲気か。
幾度となくヘタレ童貞なりに男らしく股を開きコミュ障陰キャなりに初カレとイチャコラしてきたと思っていた九蔵は、ワナワナと震えた。ロマンスが足りない!
「だってそうだろう?」
「っん、っ……!?」
「こんなふうに抱いている時、近ごろ九蔵はよく喋る。間違いなく照れ隠しだね」
「っにゅっ、……っく、ぅ…っ……」
震える九蔵を尻目に、ニューイはしみじみと話しながらヌルリと腰を引いて、ズプンッ、と押し込む。
不意の快感に喉がヒクつく。
ぐぷぐぷと小刻みに竿半ばで擦られると快楽に溺れそうで、九蔵はいつも通り平気なフリをしようと口を開きかけるが、ぐっと堪えた。
指摘された手前話しにくい。
なんせ、図星だったからだ。
恋人の〝前から思ってたけど〟ほど殺傷力のある爆弾はないだろう。軽く死ぬ。
交際期間が長くなるにつれて周りが見えてきた九蔵は、羞恥心が疼き、最中のお喋りが増えていた。
セックスに慣れてもそこは慣れない。むしろだからこそ、改めてベッドで甘い雰囲気を出されると妙に恥ずかしくなる。だからついツッコミを入れて誤魔化すのだ。
というか、最中口数が多いのはニューイも同じだと思う。
ニューイだってロマンス不足、……いや初めからずっとゲロ甘でしたね。
ぐうの音もでない九蔵である。
「ん、っ…くっそ……っ」
「九蔵とお話するのも私は好きだぞ? でもたまには舌を焦がして、耳を溶かして、血が蜜になるような睦み合いをしたいと思うのだよ」
「っ……まさら、ウブな処女になれません、ぁっ……どうしろって、の……っ」
「つまり、らぶらぶえっちである」
「もうそんなんばっか覚えてくる!」
「ツッコミ禁止!」
「ぉあっ……!?」
つい反射的に色気もへったくれもないツッコミを入れた九蔵に、喜色満面のニューイがズプッ! と根元まで突き込んだ。
深々と収められると弱い。
ニューイの腰骨で尻肉が潰れて、湯の中でぴったりと互いの肌が吸いつく。
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