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第八話 あっちこっちトラベル
40※微
しおりを挟む「なんつか、その、さっき……ナスとビルティがうまくいったら、ダブルデートする約束、したんだよな」
「ダブルデート?」
「うん。最優秀助演男優賞のナスには、素敵な恋人ができればいいって思う。んでルールに逆らえなくてもアシストしてくれたビルティには、アシストしたいって思う」
「むふふ、九蔵は二人に同じようにお返ししたかったのだね。今日はずいぶん縁の下で支えていたのだよ」
「ぷるぷるしてたけどな。……まぁでもそんだけ俺が本気だったからには、たぶん絶対あの二人、悪いようにはなんねぇだろ?」
「それはもちろん!」
「ってなると、ダブルデートは間違いなく行くことになる。なら俺とお前も間違いなくラブラブな恋人関係を維持するべき、なので……」
そこまで言って、九蔵は口元をモニモニモゾモゾともじつかせた。
三秒待たず腹を括る。長々と前置きを置きまくったのだからスムーズに伝えよう。男らしく、潔く、簡潔に。
「ベッドで関係を強化しましょう」
九蔵は炙られた餅のような顔でされど言葉だけはキッパリと断言した。
──自分と恋人の再会が二週間ぶりだということを、この脳はお忘れだろうかって?
いいや、そんなわけがない。
実を言うと飛びかかってきたニューイを受け止めた時から、九蔵はもう互いに腕を回し合い密着しながらベッドにダイブし、唾液で口元をベタベタにするめちゃくちゃなキスをしたくてたまらなかった。
おかえりのキスが激しかったせいで、その熱は不完全燃焼で燻っていた。
なんせ二週間ぶりの恋人。しかも今朝は性欲の処理だってしそびれている。
友人たちの前では態度にも言葉にも出せなかっただけだ。
ぶっちゃけニューイにずっとムラムラしていたし、正直ニューイの顔を見ているだけでこの顔面とこれそれあれどれしてぇなとこそあど妄想モードが止まらない。
だから己の胸襟を開きまくって、九蔵はニューイをベッドへ押し倒した。
そら、悪魔の大好きな据え膳だぞ。
軽率に抱き散らかせ。
そんな九蔵の告白にポカーンと驚き口を開けたニューイは、間もなく、それはもうにへら~っとデレデレな笑顔を見せた。
喜色満面の見本がごとく、満開に咲き誇るトロけた笑顔だ。
「もちろん大賛成さ……!」
「うっ」
「よぅし、そうと決まれば今すぐにでもイチャイチャしようっ。善は急げだっ。さぁ九蔵、今夜の私は正直微塵もロマンチストじゃいられないぞっ」
「うおっ、っ!?」
キラキラと眩しいエフェクトと満開のバラを背景に背負ったニューイにハートをズギュンと射抜かれた九蔵は、あっという間に体の場所を入れ替えられてしまう。
ポカンと開いた口を閉じる暇もない。脈絡もムードも関係ない。
そしてニューイは押し倒した九蔵のバスローブの前をガバッ! と開き、九蔵がなにか言うより早くその唇をパクリと食んだ。
「んんっ……!」
ぶつかるように顔を近づけられたのに、触れる瞬間は柔らかく心地よかった。ヌルリと入り込む舌と、くすぐったい吐息。
九蔵の体からフッと力が抜ける。
緩慢に口付けの角度を変えながら、ニューイの手は生じろい胸元をなで、親指でくにくにと突起をこねて遊ぶ。
そこの感度はそうでもない。
けれど乳首に触れられキスをされることが、セックスの気分を盛り上げる前戯だと知っていた。だから火照る。
「ん」
「ふ……ん、ぅ……」
(吸われんの、あー……好き。ってか、吸うのが好き……かも)
ふっふっと乱れゆく呼吸をかけあいながら、九蔵は巧みな舌使いに耽溺した。
上顎を舐められると気持ちいい。口端から唾液が溢れて顎からしたたる。口を合わせて繋がっているだけなのに、不思議なものだ。
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