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第七話 男たちのヒ・ミ・ツ
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しおりを挟む「羞恥心とプライドは紙一重で、混ざりあうとヒミツになるのだね」
「まーな。世の中の浮気疑惑やら失言やらの半分くらいは、そういう見栄でできていると俺さんは思います」
「あぁ、本当によかった……私はてっきり……!」
「てっきり?」
ホッと安堵の息を吐くニューイに、九蔵はキョトンと首を傾げた。
ニューイは唇をとがらせ、ちょびちょびと指先を合わせてこねくり回す。
なんだ? まだ拗ねているのか?
尋ねてみるがノンノンと否定するニューイ。ならなんなのだ。
「…………」
「うっ……視線が……かわいい……!」
「今そういうのいいです」
九蔵にジト目で睨まれ、両手で顔を覆いながら悶絶するニューイ。
モジモジするニューイはヒヨコのようで、若干かわいい。
反射的に仰け反りそうになる衝動をガッツでねじ伏せた九蔵は、真顔でスッと手を上げ、指をクイクイッと曲げた。
次はお前の番だろう?
男らしくかかってこい。
そういう意味だ。
挑発を受けたニューイは拳を握り、シャキ! と背筋を伸ばす。
「ぅよし……! 昨夜、酔った私がキミになにを白状したのかは覚えていない。なのでもしかしたら私の本音をキミはもう知っているのかもしれないが、腹を括ってあけっぴろげていこうっ」
「バッチコイ」
「しかしこう見えて千年越えの拗らせ悪魔なので、アシストを頼めるかい?」
「よしきた。リズムにノりましょう」
「かしこまるよ」
コク、と頷き合う。
真剣に向き合い真顔でバッチバッチと手拍子をしながら、謎のリズムにノってみる九蔵とニューイ。
ちなみに、ゲーマーの九蔵はリズムゲームも嗜んでいる。
そして九蔵は、やる時はやる。
かつ、器用な男である。
それらを踏まえて、レリゴ。
「さぁさぁ白状行ってみよーう!」
「はい!」
「大人の口枷いい子ぶりっ子! 聞き分けいいフリやめちゃって!」
「はい!」
「悪魔の本音が聞きたいなー!」
「はい悪魔の本音を聞かせたーい!」
「はい、それでは!」
「それでは!」
「いきましょ!」
「いきましょ!」
「勢い大事!」
「勢い大事!」
「リズムも大事!」
「リズムも大事!」
「悪魔のヒミツが聞きたいなー!」
「はい私のヒミツは? 実は見栄張り余裕なし!」
「はい!」
「夜中コソコソ! 特訓してます! 家事にゲームに若者言葉! スーパーダーリン目指しますので、もっと私を見てくださーい!」
「はい悪魔のプライド聞きたいなー!」
「はい私のプライド? 実は好きな子負けたくない!」
「はい!」
「恋人限定! 負けず嫌いで泣き虫毛虫! 家事も仕事も愛も性技も! 私がキミより優等生だぜ!」
「はい!」
「でなきゃ慌てるオロオロ拗ねる! 彼氏にだけは頼りたくない! 頼られたがりのプライドでーす!」
「「イエァ!」」
九蔵はパァンッ! とニューイと手を打ち合わせ、キレのいいハイタッチをした。
大人の男二人、早朝。
寝起きの九蔵とニューイは、バイブスなるものがブチ上がっていた。
そう。テンアゲである。
(腹を割った話し合いにゃあ勢いとノリが大事だったんだな……!)
特に原稿はないが息ぴったりの白状リリックを真顔でノリきった九蔵は、ふう、といい汗を拭った。
世のパーリーピーポーたちがひたすら楽しげに友人に囲まれている理由を、空気で理解した瞬間だ。
「九蔵! 言えたのだよ!」
「よーしよしよしいい子だニューイ!」
「うっ!?」
同じく喜ぶニューイに、九蔵は勢いとノリでギュッと抱きついた。
硬直するニューイの頭を、そのままわしわしとなでくりまわす。
「う、う……うぉぉ……」
「羞恥心を克服した気分だぜ……! これでお互い白状したし、もう裸で話し合えるよな? 足りないとこ詰めていくか」
「バスタオルは、ほぼ裸である……」
「は?」
「なんでもないよ……ちなみに話を詰める件だが、さきほどの理由で私はキミに頼りたくない。しかし理性の強化訓練だけは九蔵を頼らずに九蔵と特訓できているので、頼らない案件は実質チャラだと思うぞ」
「お、おう……?」
ゴキゲンな九蔵が頭を離すと、ニューイは真顔で情状酌量を主張した。
よくわからない。
とりあえず、自分の頼りがいを気にする九蔵の願いは叶えられないそうだ。
「それがお前さんのプライドってな」
「う……まぁ、そういうこと……です」
ストンと改めて正座をすると、ニューイは八の字眉で俯きつつ、モジモジと指先をこねながら肩を丸めた。
顔は真っ赤で涙目だ。
見るからに、言えたはいいものの言ったことを激しく後悔していた。
なんだかいつもと逆になったようで、九蔵はほほうと興味深い。
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