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第七話 男たちのヒ・ミ・ツ

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 九蔵の背がグンッ、とのけ反る。

 反射的に括約筋が収縮するが、悪魔の呪文で操られたぬるま湯には関係ない。


「ヒッ……これな、んだっ……?」

「ただの湯さ。むしろ絶対傷つかない。俺はオマエの体を検分すんので忙しいから、そっちはまじないに任せてんの。そういうのを使う展開のマンガとかポルノ動画が、あるんだとよ」

「んも、っ……変態プレイ、じゃねぇの……誰に聞いたんですかぁ……っ」

「カントク」


 ニッコリ、と語尾にハートがつきそうな甘い声で告げられた九蔵は「クソ、俺、かんとくさん、嫌いぃ」と眉をひそめ、への字口でふてくされた。


「ぅ、っ……はっ……あっ……」


 ゲル状の軟体生物と化した湯は九蔵の中へ押し入り、窮屈な肉穴を内側から膨らむように拡張していく。

 湯の塊が出入りするたびに、乱れる水中からぷちゅ、ぷちゅ、と卑猥な音が鳴った。

 一切とっかかりのないゲルの塊だ。
 その塊に、犯されている。


「んっ……んっ……」


 不定形のそれをヌルン、ヌルン、と抽挿されるたび前立腺が圧迫され、柔らかい肉芯が熱を増して膨張した。

 ゲルに拡張されている間もニューイの舌に肌をなぶられる。ニューイが歯を掠らせられるたび、九蔵は「ンッ」と微かに喘いでしまった。

 たまに噛まれる。
 美味しそうに、前戯をされる。

 乳頭に吸いつくリップ音が鳴ると、九蔵は控えめに抱えたニューイの頭をつい胸にうずめるように押しつけてしまった。

 胸は、好きだ。
 吸われるのが、特に。

 そこが一番感じるようなふしだらな感度ではまだないが、キャンディーを味わうふうに転がされると内が疼く。


「お。ここはわりあい、膨れたな」

「そ……ぅ…く……っ」

「重力に負けて胸筋に引き止められる程度の肉だけど、皮だけだと食いにくかった。嬲りやすくていい」

「んふっ……うひ。なんもでねぇ、のに……そんな吸うん、ですか、っは…ぁっ……」

「そうだよ?」


 片眉を上げて「孕まなくても挿れて出すだろ」と言い、ニューイはニヤリと笑った。おっしゃる通り。九蔵も釣られて、にべ、と笑う。

 首筋や胸元を愛撫し九蔵と笑い合いながらも、ニューイは片手で大殿筋を揉みつつ背中や腰つき、裏腿の肉付きを確かめた。

 もう片方の手は膨らんだ腹をなぞる。
 押せばグニ、と凹む。

 張りのない駄肉の感触を楽しまれ、陰毛を指先でクルクルと巻き取り遊ばれた。

 その先で芯を持ち始めて頭をもたげる陰茎には、触れてもらえない。

 駄肉の下でうっすらと厚みを増した腹筋をグッグッとすり潰しては、時折、耳元でフッ、と笑われた。


「ほんと、だらしねぇな……クク」

「んっ……いじわる、すんなよぉ……」


 恥ずかしい反応だ。言い方だって、九蔵はもう少しマイルドにしてほしかった。
 例えば柔らかいだとか、モチだとか。

 なんだかそういう乙女ゲームのヒーローが丸みを帯びたヒロインをオブラートに包むような言い方で誤魔化させてくれ。

 九蔵はそう訴えて拗ねていると伝わるように首を振り、体をくねらせ、頼りなくニューイを睨む。

 けれどニューイは九蔵の乳首をシャツ越しに舐めながらゴキゲンにからかう。


「現代じゃ、太った人間をデブって言うんだっけか」

「う、嫌、それは悪口ですぅ……てか俺、ちょっとは痩せた、し」

「悪口か。そら悪かった、けどまぁでも前より肥えたんだろ? 俺をほったらかして贅肉と仲良くしてたんだ」

「酷ぇー……っん、っ……バカ……っ」

「クク、知るか。恥じらって死にそうになってる時のオマエは、強引に虐められて、過激な言い方で叱ってほしいくせに」

「っひ……ぁ、あっ……っ」


 勃起した乳首へフッと息を吹きかけたあと歯で噛みつかれ、九蔵は熱っぽくほどけた声で鳴いた。

 ニューイは隠しごとも誤魔化し方もへたくそなくせに、九蔵のヒミツの見抜き方だけは、良く知っている。

 酔いどれモードの意地悪ニューイ。
 相変わらずド酷いやつめ。

 嬉々として九蔵をからかうこの様子をあとでシラフのニューイが見ることになれば、千年悪魔とて、ムシになるのだろうか。


「ふ……っ?」


 九蔵がそんなことをボンヤリ考えていると、直腸を拡げていた湯が、胎内で筒状にグポ、と拡がった。




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