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第七話 男たちのヒ・ミ・ツ

09(sideニューイ)

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 ──というやり取りから、更にサクサクッと数日が経過した、ある日の夜。


「…………」


 現在のニューイは、撮影現場のはじっこにてはじっコぐらしと化していた。

 ザワザワと周りがザワついている。
 しかし誰も声をかけない。

 当然だ。ニューイは黙っていれば、誰もが振り向く高身長異国顔のキラキラブロンドイケメン。九蔵が誇る顔面兵器。

 そんなニューイがモデル服でパリッとキメたまま、通路付近で壁に向き合い、丸くなっているのである。

 しかも今のニューイは撮影も終わり、その後の雑用手伝いも終わっているので、あとは帰るだけだ。

 だがしかし、動かない。

 桜庭モードのズーズィにハハハと笑われ動画撮影をされようが、ニューイは帰り支度すらしようとしなかった。

 その理由はひとつ。


(あぁ九蔵……九蔵九蔵九蔵……! 今日も帰りが遅いなんて酷いである……! キミはマイン一つで私を地底に落とす罪なオトコだぞ……! というかせっかく共に夜を過ごせる日勤だというのに、どういうつもりでスキンシップを禁じた上の帰宅遅延を起こすというのだ? わざとかい? しかし私を放置した結果、九蔵をかわいがりたい欲求がたまりにたまると困るのはキミであるが……)

「つまり九蔵は、今度の餌やりで心臓を鷲掴みにしてほしい、と……?」


 未だに──九蔵と和解していないのだ。

 ボソ、と囁くニューイは不貞腐れたオーラを醸し出しつつも、逆に誘われている気さえして脳内がネオンピンクに染まる。

 それも仕方がないだろう。
 餌やりの時に慰めている九蔵と違い、ニューイは二週間と少しの強制禁欲生活中。

 しかも悪魔はすべからく性欲が強いくせに、ほぼ自慰をしない。

 ムラムラした時は悪魔同士で喰らい合うか人間を誑かしてサクッと抱くという、オープンエロ文化がある。

 とはいえ、ニューイはもともと淡白なのだが……愛しの恋人に対しては、いろいろかなーりねちっこい。


「寝ている間にグズグズにして犯したい」


 好きな子相手に夜も紳士でいられるわけがないニューイは、真顔でゴンッ! と壁に両手をつき、頭をぶつけた。

 九蔵の苦手な魂イキ。
 アレでなんとかならないものか。

 心臓こと魂の中心をグチャグチャにされると、九蔵は感じすぎて快楽餓鬼になる。素直に甘える上に、大胆だ。

 いやらしいことをもっともっとと求めるようになる自分が嫌だ、と九蔵は渋るが、ニューイは大歓迎だった。

 まずは眠る九蔵の服を剥いで、裸のまま思いっきり密着したい。

 長い手足と男らしい肩幅を持ちつつも厚みのないあの胸に舌を這わせ、抱き寄せた背中側からズップリと深く手を埋める。

 それだけじゃあ起きないと思う。
 が、起きたとしても平気だ。

 意識のない状態でトばされると人間は酩酊したように夢心地が続くので、体と脳は達しているのに自我、意識だけは置いてけぼりをくらうはず。

 そうやって常に絶頂し続ける体を、中も外もすみずみまで触りたい。

 舐めて味わい、匂いを嗅いで、体温を重ね、肌の質感を粘膜のひとつひとつまでしっくり愛おしみたい。


「ふふふ……もうお風呂には入らせないのだ……夜勤明けでくたびれた九蔵の全ては、私が感じるのだからね……プリン一つ自分じゃ食べられないダメ男に堕落させてあげるのだよ……!」


 ゴン、ゴン、と頭をぶつけつつワキワキと手を動かし、妄想に浸るニューイ。

 はたから見るとただの不審者イケメンなので、ニューイの周りの無人サークルがササッと拡大する。

 それにも気づいていないほど、ニューイはいろいろともうダメなのであった。

 なんせこうなるくらい、九蔵とニューイの話し合いは平行線の一途を辿っている。




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