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第六話 敗北せよ悪魔ども!
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しおりを挟む九蔵をさらえば、ニューイが悪魔の世界まで追いかけてくるはずだ。
そのままバラバラに粉砕してティーポットに詰め、拡大領地の統治をさせよう。悪魔王が喜ぶ。ドゥレドの株が上がる。
それに九蔵をさらえば、最近悪魔王がハマっているゲームを教えさせられる。
悪魔王は人間の身でゲームの強い九蔵を気に入っているのだから、自分が九蔵よりうまくなれば問題なく、接点も増える。
そしてなにより──悪魔王とイイ感じになりつつ九蔵もゲットしたドゥレドをニューイが羨ましがる顔が見られる!
実はドゥレド、ロマンチックに誰かを口説くことが壊滅的に下手くそだった。
悪魔は誰しも誘惑に長けている。
しかしロマンチックが欠如したドゥレドは、さっぱりうまくいかない。
脅しや堕落、契約のための誘惑なら得意なのだが、人間の女ですらなかなか抱くのは骨が折れた。
それに対し、ニューイはうまい。
普通に会話をしているだけで人間をオトしベッドインしては、サクッと欲望を食べる。悪魔として魅力がないニューイは、妙に悪魔以外とはうまくやる。
絶対に肉体美を持つ自分のほうがイケているというのに、なぜ骨の悪魔に人間は靡くのだろう?
人間すらオトせない自分は……愛しの悪魔王をオトせやしないのか?
他者の懐に入り誰とでもうまくやるコミュ力と、甘ったるいトークスキル。
優等生のドゥレドとて、劣等生のニューイにコンプレックスを抱いていた。
つまり、だ。
ドゥレドが本気で企てたこの作戦が難関問題になりえるクオリティだった理由は、ドゥレドが心からニューイに嫌がらせをしたかったからなのである。
「ね? 純愛でしょ?」
「…………」
「まぁ言っておくケド、アタシが一番あのお方にお会いしてるワ。アタシの恋は愚直に爆走。まずは認知。何れは、フフフ……!」
全てを聞いた九蔵は、無言でスッと真顔でスマホを取り出した。
そしてトントンと叩いて文字を打ち、スッと画面を見せる。
『ただの逆恨みでは?』
「失礼ねッ! かわいいクマちゃんのジェラシーと言ってちょうだいッ!」
『言いますから声を返してください』
「交換条件よッ! クゾウはアタシにゲームを教えてニューイを納得させなさい! シタゾウは了承したんだからアンタだってイイって言うんでしょ!?」
『誰だシタゾウ』
ドゥレドの話を聞く九蔵の脳内イメージは〝悪魔王の同担拒否古参ガチ勢リア恋ファン〟だ。
間違いなく悪魔王のトップオタクだが、地雷が多そうなので関わりたくない。
譲らないドゥレドをどうすれば、と悩む九蔵に、ニューイが「平気だよ、九蔵」と言って髪にキスをした。九蔵の頬が微かに赤くなる。
「さぁドゥレド、約束通り話は最後まで真面目に聞いたのだ。九蔵の舌と声を今すぐ返してくれないと今の話を全てズーズィに教えるからね? この部屋にはコトダマを仕込んであるのだよ」
「!?」
「あぁんッ!? アンタオトメの秘密をなんだと思ってんのよッ!」
が、すぐに青くなった。
(コトダマってあのビー玉録画機か? ってことは──俺の浮かれポンチ鼻歌も録画され……ッ!?)
そうなったら死ぬしかない。ズーズィにあれが見られると世界中に言い回る勢いで弄ばれるに決まっている。そんなの困る!
というわけで、一悶着。
慌てた九蔵がスマホを駆使して必死にニューイを説得し、九蔵の舌と声とコトダマを交換することで、事なきを得た。
ニューイもドゥレドもズーズィも。
こうして考えると、悪魔はみんな敵に回すと厄介なタイプばかりな気がする、九蔵なのであった。
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