上 下
272 / 462
第六話 敗北せよ悪魔ども!

24

しおりを挟む


 九蔵をさらえば、ニューイが悪魔の世界まで追いかけてくるはずだ。

 そのままバラバラに粉砕してティーポットに詰め、拡大領地の統治をさせよう。悪魔王が喜ぶ。ドゥレドの株が上がる。

 それに九蔵をさらえば、最近悪魔王がハマっているゲームを教えさせられる。

 悪魔王は人間の身でゲームの強い九蔵を気に入っているのだから、自分が九蔵よりうまくなれば問題なく、接点も増える。

 そしてなにより──悪魔王とイイ感じになりつつ九蔵もゲットしたドゥレドをニューイが羨ましがる顔が見られる!

 実はドゥレド、ロマンチックに誰かを口説くことが壊滅的に下手くそだった。

 悪魔は誰しも誘惑に長けている。
 しかしロマンチックが欠如したドゥレドは、さっぱりうまくいかない。

 脅しや堕落、契約のための誘惑なら得意なのだが、人間の女ですらなかなか抱くのは骨が折れた。

 それに対し、ニューイはうまい。

 普通に会話をしているだけで人間をオトしベッドインしては、サクッと欲望を食べる。悪魔として魅力がないニューイは、妙に悪魔以外とはうまくやる。

 絶対に肉体美を持つ自分のほうがイケているというのに、なぜ骨の悪魔に人間は靡くのだろう?

 人間すらオトせない自分は……愛しの悪魔王をオトせやしないのか?

 他者の懐に入り誰とでもうまくやるコミュ力と、甘ったるいトークスキル。

 優等生のドゥレドとて、劣等生のニューイにコンプレックスを抱いていた。

 つまり、だ。

 ドゥレドが本気で企てたこの作戦が難関問題になりえるクオリティだった理由は、ドゥレドが心からニューイに嫌がらせ・・・・をしたかったからなのである。


「ね? 純愛でしょ?」

「…………」

「まぁ言っておくケド、アタシが一番あのお方にお会いしてるワ。アタシの恋は愚直に爆走。まずは認知。何れは、フフフ……!」


 全てを聞いた九蔵は、無言でスッと真顔でスマホを取り出した。

 そしてトントンと叩いて文字を打ち、スッと画面を見せる。


『ただの逆恨みでは?』

「失礼ねッ! かわいいクマちゃんのジェラシーと言ってちょうだいッ!」

『言いますから声を返してください』

「交換条件よッ! クゾウはアタシにゲームを教えてニューイを納得させなさい! シタゾウは了承したんだからアンタだってイイって言うんでしょ!?」

『誰だシタゾウ』


 ドゥレドの話を聞く九蔵の脳内イメージは〝悪魔王アイドルの同担拒否古参ガチ勢リアファン〟だ。

 間違いなく悪魔王のトップオタクだが、地雷が多そうなので関わりたくない。

 譲らないドゥレドをどうすれば、と悩む九蔵に、ニューイが「平気だよ、九蔵」と言って髪にキスをした。九蔵の頬が微かに赤くなる。


「さぁドゥレド、約束通り話は最後まで真面目に聞いたのだ。九蔵の舌と声を今すぐ返してくれないと今の話を全てズーズィに教えるからね? この部屋にはコトダマを仕込んであるのだよ」

「!?」

「あぁんッ!? アンタオトメの秘密をなんだと思ってんのよッ!」


 が、すぐに青くなった。


(コトダマってあのビー玉録画機か? ってことは──俺の浮かれポンチ鼻歌も録画され……ッ!?)


 そうなったら死ぬしかない。ズーズィにあれが見られると世界中に言い回る勢いで弄ばれるに決まっている。そんなの困る! 

 というわけで、一悶着。

 慌てた九蔵がスマホを駆使して必死にニューイを説得し、九蔵の舌と声とコトダマを交換することで、事なきを得た。

 ニューイもドゥレドもズーズィも。

 こうして考えると、悪魔はみんな敵に回すと厄介なタイプばかりな気がする、九蔵なのであった。




しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた

羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件 借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

朝目覚めたら横に悪魔がいたんだが・・・告白されても困る!

渋川宙
BL
目覚めたら横に悪魔がいた! しかもそいつは自分に惚れたと言いだし、悪魔になれと囁いてくる!さらに魔界で結婚しようと言い出す!! 至って普通の大学生だったというのに、一体どうなってしまうんだ!?

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

処理中です...