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第六話 敗北せよ悪魔ども!
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しおりを挟むいつの間に入ってきたこの空間直通悪魔め。しかも相変わらずピチパツティーシャツに短パンか。いい加減季節感を身に着けてくれ。そしてドアから入って来てくれ。
文句を言いたくても声に出せない。
それもこれもドゥレドのせいだ。
(はぁ~……このやろう。文句言うためだけに声返してほしいですね)
「まぁそう警戒するな。オレは危害を加えに来たわけじゃない」
九蔵がノッソリと起き上がってスマホを手に取ると、ドゥレドは首を横に振った。
無害なら、人さらいに来たわけじゃないということだろうか?
確かにうまい屋と違ってここはニューイの拠点。乗り込んできたところで分が悪い。
(じゃあなにしに来たこの迷惑悪魔は)
「おい、あからさまに迷惑そうな顔をするんじゃない。オレは話し合いで解決してやる気になったんだぞ?」
「?」
「つまり和平だ。正攻法で行くのは悪魔として癪だが、このままじゃ埒が明かない。頑なにオレを後回しにするお前たちを待つのはやめたんだ」
「…………」
「〝めんどくさいから無視して寝てやろうか〟とか考えるな!」
考えを読んで憤慨するドゥレドに、九蔵はなるべく距離を取ってベッドの端に移動し、ジト、と警戒心に満ちた目で睨んだ。
まあ手は打ってある。
実は今の九蔵はニューイに呪われているのでこの部屋から出れず、ドゥレドにさらわれることも不可能なのだ。
突然悪魔が現れてもさほど動じないのは九蔵の性格でもあるが、ドゥレドの襲来に備えていたというのも大きい。
九蔵がそう考えていると、ドゥレドはドン、と球体の入った鳥かごをちゃぶ台の上に置く。
真顔で見つめ合う九蔵とドゥレド。
「クゾウの企みも織り込み済みよ」
「…………」
「一応行動観察をしてニューイが遠くへ離れるタイミングを狙ったが、この部屋はニューイのテリトリー。部屋の中を出口に指定して空間から出た時、妙な感じがしたからな……ガチめの呪いをかけていたと仮定すると、オレが入った瞬間アイツはそれを知るだろう。それすなわち──」
ドガンッ!!
「さて、まずはただいまのキスだね」
「──本命が一分以内に来るわけだ」
(まずは玄関のドア直してください)
突然ぶっ飛んだ玄関のドアと弾丸のように二人の間に立ったニューイに、ドゥレドはうんうんと頷いた。
ニッコリと笑顔のニューイに対して、九蔵の顔色はグレーである。
確かにニューイは「なにかあったらすぐ駆けつける準備をしたよ。ホームは絶対に安全なのだ」と言っていたが、直帰にも程があるだろう。
撮影スタジオにいたはずが、急に消えていいのだろうか。ズーズィあたりの協力がある気がする。
(……。いやまあ嬉しいですけどね)
驚愕と胸キュンが同時に襲ったような気分になりつつ、九蔵は玄関ドアの修繕をジェスチャーで伝える。
「あぁ、ごめんね九蔵。つい早くキミを抱きしめたくて勢いがついてしまった。すぐに戻るから待っていておくれ」
「!?」
するとニューイは笑顔のままパチンと指を鳴らしつつボキッ、と首をもいだ。
そしてそのまま体はもいだ首をドンッ、とちゃぶ台に乗せて勝手に動き出し、キッチンで手洗いを始める。
「っ? っ?」
「久しぶりだな、ニューイ」
「久しぶりだね、ドゥレド」
「アカデミーのデーモンランキングでオレに勝ったことなど一度もないとわかっているはずだが、まさか無視されると思わなかったぞ」
「今の私はドジでノロマな落第生ではなく、九蔵の王子様なのだよ。九蔵の方針に従うし、私はキミに負けないからね」
「フンッ! 生首の王子様など笑わせる。というかお前、オレを無視してイチャイチャするな。ダメっ子のお前に恋人なんて身の程を知れ。イチャイチャするな」
「するさ。イチャイチャ」
「するな」
「するさ。ラブラブ」
「ラブラブするなッ!」
ニコニコと笑顔のまま挨拶を交わす生首と、やたらニューイを目の敵にするドゥレドの会話。ホラーだ。もうただのホラーを通り越してサイコホラーだ。断面図なんか見ないぞ。
九蔵は視覚だけで頭が痛くなった。
声があれば何度ツッコミを入れたかわかったもんじゃないだろう。
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