159 / 462
第四話 ケダモノ王子と騒動こもごも
04※
しおりを挟む「ふふん。どうかな? 九蔵はこういうことは好きかい?」
「好きじゃないです……っ」
「うっなんて攻撃力の高い言葉……!」
九蔵が燃えるような頬を震わせて睨むと、ニューイは大きなダメージを受け、ガックリと項垂れた。
攻撃力が高いのはお前のほうだ、というセリフはゴクリと飲み込む。どうせ言ってもわからない。
「九蔵~好きじゃないは私を殺す呪文である~……心配しなくとも、舐めた口で舌を入れるキスは控えるから平気だよ?」
「バカっ……は、恥ずかしいって……なんで飲んじゃうんだよ……っ」
「? 飲まれるのが好きな人間の男は多いからね」
ほら見たことか。
ニコニコ笑顔で「九蔵を喜ばせたい」と言うニューイには、九蔵の羞恥心なんてわかりゃしないのだ。
「それじゃあ、九蔵は私にどんなことをされると気持ちいいのだ?」
「いっ……いいからなにも聞かずにケツにち✕こ挿れろください……! セックスってそれ目的だろがいっ!」
「ムードがないのだよ!」
せっかく盛り上げているのに! とショックを受けるニューイをせっついて、九蔵はさっさとズーズィ印のゴムを投げつけた。
柔らかな金色の髪とルビー色の瞳を持つ王子様が、自分なんかの粗相を受け止めるトンデモ暴挙。
あまつさえわざわざ飲み込む瞬間がわかるように触れさせるなんて、あんまりだ。
(くっそ……仕事みたいに、セックスにも実技研修あればいいのに、なんで人生はいきなり本番させんのかね……っ)
「暗転しろよもう……っ」
九蔵は不思議そうな顔でゴムを装着するニューイを横目に、真っ赤に染まった頭を抱え、小声でぐあぐあと悶絶した。
ニューイに触るのも触られるのも長く持たない。触れたところが全て溶ける。
舐めたり噛んだり吸ったり咥えたり飲んだり、五感で犯されると、ダメになった。
気持ち悪い声が出るし、不細工な顔でマヌケに美しくもない裸体をニューイに晒す。考えただけで吐きそうだ。
早く終わってほしい。
自分の精液の味が不味くないかどうかが気になるようなセックスだと、なにも集中できない。
「よし。お待たせ九蔵」
「待ってねぇからマジではよ突っ込んで、終わらせてください。俺のために……!」
「終わ、……ウゥム……」
パーフェクトな裸体を晒してにじり寄るニューイに、身の振り方がわからない九蔵は、なるべくムードとやらを破壊して言った。
するとニューイはキョトンとしたあと、すぐに不満を呻いて九蔵の足をグッと掴む。
「残念だが、挿れて出して終了する交わりを私は知らないのだ」
「ぉあっ……!」
「それに、まだ始めてもいないのに終わってしまうと困るっ」
「はっ……!?」
それからそのまま九蔵の足を引き寄せ大きく左右に広げた。
ニューイは九蔵が驚いている間に、自分の膝の上に九蔵の尻をテンと乗っける。
そして九蔵がなにかを言う前に、九蔵の足を掴む手にキュッと力を込め、ニューイは拗ねたように唇を尖らせた。
「あのな……言っておくが、これまでのキミとの餌やり中、こっちはずいぶん我慢をしていたのだよ?」
「っ……」
ドクッ、と胸が軋む。
恥ずかしくて熱かった胸に、別の熱が入る。嬉しいというシンプルな熱。
〝なんでもないフリをできていたのは、何百年も生きている悪魔だからだ〟
ニューイはそう言いたいらしい。
その言葉を裏付けるように、ニューイの欲望は九蔵の尻のそばでラテックスをまとい、熱くそそり立っている。
餌やり中は全く反応していなかった。九蔵はいつぞやそれを嘆いた気がする。
けれど、今は滾っているのだ。
これから九蔵を貫くことに、たいへん興奮している。九蔵を性の対象に見ている。
ニューイの顔に似合わないふしくれだった逞しいモノ。最中のニューイも、予想していたよりもっとずっと〝雄〟だ。
「っ……この体勢、恥ずかしい……っ」
今からこの雄に抱かれるのだと思うと、九蔵は有り余る恥辱に身が焦がれた。
困ったことに、待ち望んでいるからだ。
10
お気に入りに追加
282
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる