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第三話 恋にのぼせて頭パーン
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「……あ~……う~……」
盛大に達してしまったあと。
ニューイに美味しく性気を食べられ我に返った九蔵は、毎度おなじみのやってしまったぜ現象に支配されていた。
ついさっきまでの九蔵は、ズーズィの後押しにより腹をくくった無敵モードだ。
しかしそれも一度我に返ってしまえばなにをどうしたってうまい空気に持っていくことができず、これ以上醜態を晒す手札もない。
ゆえに現在は射精の余韻に浸ることもなく、パンツ一枚のままベッドの上で丸くなっている。
体液やらあれそれはニューイが処理してくれたが、心のダメージは計り知れなかった。言い訳はすまい。
男、個々残 九蔵。
どうぞヘタレ童貞引きこもりと詰っていただいて結構である。
「あぁ……ついやってしまった……もし九蔵に意地悪だとかねちっこいだとか思われたらしばらく立ち直れそうにない……しかしそれも九蔵がやたらめったらやらしくて美味しそうでかわいくて気が狂いそうで……マズイ……これはマズイぞ……」
そんな九蔵のそばで九蔵と同じくパンイチのまま丸くなっているニューイも、なぜか頬を赤らめて悩ましげに唸っていた。
なにを唸っているのか知らないが、九蔵の恥辱より平気だろう。だって顔がいい。九蔵は息を吸うようにニューイを贔屓する。
ふと、唸っていたニューイが顔をあげ、眉をハの字に垂らしてもじもじと九蔵を伺った。
「あのな、九蔵。九蔵は、ああいうことが……全裸で後ろに指を挿れられながら自慰をすることが好きなのかい?」
「ぐふっ」
出たな。ニューイの質問攻撃。
近頃のニューイは九蔵関連の質問に余念がない。小学生並みになんでなんでと九蔵の意図や思考回路、プロフィールなどを聞いてくるのだ。いきなり聞いてくる。
わかっているが今回は内容が内容なので、九蔵は思わず枕に呻き声を吐き出した。
数秒震えてからなに食わぬ顔でムクリと顔を上げる。余裕ですけどなにか?
「……いやまぁ好きっつーか、あれはあの、あれだ。共同作業による連帯感の向上を兼ねたなんかあれですはい」
「なんかあれ……? よくわからないが、九蔵は今後もああいういやらしいお誘いをかけたくなるということかい?」
「やらっ、や、今後、お誘、は」
「その……九蔵はこれからも、私に中を触ってほしいと言う時があるのだろうか……? す、スケベなことを、したいと……?」
ニューイは緊張しているのか頬を赤らめて視線をうろつかせながら、ピンク色のややズレた疑問を投げかけた。
九蔵からすると「俺が好きなのはやらしいことじゃなくてお前さんなんですよてやんでい!」だ。
だがそんなことを言えるはずもない。言ったらただの告白だ。
正直全然継続的にスケベなことはしたいが、九蔵の羞恥心はもう限界である。
「お前のほうは、どう、なんだよ」
「どう?」
「ニューイは、さっきシたあれがやらしいことだって思ったんだろ? したらほら、やらしいことすると、やましい気分になりますよね」
こらえきれずに尋ね返した声は震えていたし、胸はドンドンとうるさかった。
「つまりその、まぁ、お前も同じようにそういう気分になったら、ついでに性欲処理的な感じで挿れてもらっても俺は別に構わないですってこと……だよ」
モゴモゴと尻すぼみな声で言った九蔵は、うす暗い室内に差し込む月明かりが照らすニューイを、チラリと伺った。
手ごたえを確認したい。
自分の痴態にエロさを感じてくれたのなら、少しくらいは食事ではなくて欲望の対象になれたのだろうか。
もしそうなら大歓迎だ。その気になったのなら是非使ってほしい。そしてあわよくば、ちょっぴり好きになってほしい。
九蔵はそんな淡い期待を胸に抱いていたが──ニューイはガバッ! と上体を起こし、これでもかと言うほど首を横に振った。
「い、いや! 私は九蔵にたくさん触り九蔵の顔をたくさん見ているが、性欲処理の対象になんて見たことはない!」
「っぇ……」
ハッキリと言い切るニューイに、九蔵は喉の奥が一瞬ヒュ、と詰まった。
そんなに必死に否定するほど、ニューイは九蔵を性欲の対象とは思っていないらしい。ついさっきまで熱を共有していたのに、この体には官能を煽られることがないと言う。
胸に抱いていた期待がガラス細工のように砕け、ほんの数秒、思考が灰色に染まる。
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