喫茶つぐないは今日も甘噛み

木樫

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第三生 現地住民舐めたらアカン

04※微

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「イッサイ」

「…………」

「イッサイ、これ」

「……ん」

「イッサイ。触れ合うか?」

「……ジェゾがシてぇなら」

「日夜よ。そら、こちらへ来い。せっかく剥いた肌だ、繕ってやろう」

「あぁ……」

「よいこだな。口付けて、噛んで、舐める。イッサイ、ちゃんとお主の好きなところで感じさせて出させてやる」

「ん……ぁ……」

おれはお主をかわいがっておるのだ。そうだろう? 己の子猫ネェロ

「ぅ……っふ……ジェゾ……」


 ちゅ、ちゅ、と背後から唇をあちこち落とされ舐められ、逞しい腕で逃さないとばかり抱き寄せられて、もう片腕は下着の中に滑り込み股間をまさぐられる。

 その間、ジェゾは剥き出しの背中をベロベロと舐め、噛みながら、自分がいかに甘い飼い主かを一斉に言い聞かせる。

 なんとなーく、さっき食らった盛大な肩透かしの訂正をされているような気がした。

 ジェゾなりの謝罪だ。
 実は一斉はもうあまり気にしていないしジェゾの説明にも納得していたのだが、ジェゾは一斉が〝ジェゾが酷い男でいじけてしまった〟と思ったようだ。

 本当を言うと、ジェゾは「そんなに獣に抱かれたいものか?」とイマイチ一斉の気に共感していない。

 まぁ、それもそうだろう。

 一斉がした恋の自覚なんてつゆ知らず、明かされてもいない。
 そもそも不吉だなんだと忌避されてきたジェゾにとって、自分を好ましく思われることは想像すらしないことだ。
 好かれる要素がないと思っている。

 当然、一斉のアプローチもあわよくばの下心も察したところでただの親愛としか認識しておらず、甘えを知った無知な子猫は愛いものよ、としか感じていない。

 だがそれでも、押しも押されぬ最強ジャガーとて、かわいい飼い猫に勘違いされて涼しい顔じゃいられないらしい。


「イッサイ。聞いておるのか? 己の声を」

「ん、はっ……聞いてるぜ……」


 ゴロゴロと唸りながら擦りつく。
 焦っているわけじゃないが無性に一斉を構いたくなり口数が増えてしまうジェゾ。

 まるで本物の猫のようにチョイチョイと前足でちょっかいを出して、一斉が返事をするかどうか丸い目でひょっこり覗き込み、じーっと具合を観察している。

 そりゃあ、かわいいからこそからかってしまうし、身を案じもするのだ。

 そもそも「やりすぎた。すまん」と言えば済む話なのに一斉の反応をチェックするあたり、ジェゾも大概こじらせた大人だろう。

 大人の猫も拾われ子猫も、所詮はただの猫ということだ。愛情表現に癖がある。


「はぁ……ん、……ンッ」


 ジョガーパンツの中で獣の腕が動くたび、チュクチュクと濡れた音が響く。

 少し前に感じていた興奮を思い出したように体が火照り、背後から回された腕に額を当てて目を閉じ、腰を丸める。

 獣の手と人の手は違う。

 表面の硬いグミのようなクッション性のある肉球と毛の密集した指が肉茎を包み込み、柔らかく揉む。

 それだけでも特殊な感覚だが、全長を握ったまま先端を親指でほじれるほど大きな手は、上下に動かさなくても膨れた性器からトロみのある液を絞り出せた。

 少し腰を突き出すだけで、根元から先っぽまでたまらなくれるのだ。


「甘ったれだな、イッサイ」

「ふ……っィ…っく……」

「イキたい時にイくがよいよ。……近頃つい思う様過ぎた。おれが気ままに手を出すと舌が回らぬほど責めかねん。自重せねばよ……」

「ぁっう……はっ……」


 根っこのイジメっ子気質を多少悪びれたジェゾの声に言葉も返さず、掠れた喘ぎで戦慄き、快楽に耽る。

 汗ばんだ肌をザラザラと荒れた舌が丁寧に舐めると妙にヒリつくし、そこを唇の産毛でなぞりながら噛まれると悶えそうなくらい疼く。


「ンッ……ぅ、んッ……んッ……!」


 そして精力旺盛な若者らしく刺激されただけドクドクと昂り、好きな相手の手の中で限界を迎えた。

 迸った精は飛び散ることなく布地に当たってじわぁ……っと広がり、不快感と解放感を同時に与えて下着を汚す。
 中でヌチャ、と濃厚な音が鳴る。


「な。十分に良いだろう? わかれば、お主はなにも案ずることなく飼われることに甘んじて怠惰に眠っておればよい。己になんぞなどと考えず、脆弱な小動物を全うしておれ」

「ふ…ん……はっ……」


 いい子いい子とばかりにペロペロと耳の裏を舐められて、一斉は火照った体と荒い呼吸を整えながら、汗ばんだ額をジェゾの腕にスリ……とこすりつけた。

 ジェゾが触れるといつもこうだ。
 欲深さと浅ましさと若さで、簡単に本能を見せびらかす。
 ジェゾに隠し事はなにもできない。

 大きく、強く、揺れない獣。

 そんなジェゾは一斉の内面をよく見抜くし、骨抜きに依存させることなど造作もないとばかりに手軽に囲う。

 だからされるばかりでは落ち着かず飼い主にオトクを与えようとする性質を指摘し、大人しくさせようとしているのだ。一斉はそれがよくわかる──が。


「……れ、ぁんま、よ」

「ん?」

「俺、あんまこれ……嬉しくねんだ。ちょ……と、だけ」


 は、は、と小刻みに息を吐き、ゴクン、と中に溜まった唾液を飲み込んだ口を、一斉はむず痒そうに開いた。

 蒸れた下着の中でぐしょぐしょになった獣の掌へ、出したばかりのモノをぬちぬちと控えめに擦りつける。

 それから毛むくじゃらの腕を舐め、湿った毛皮をカプ、と歯で咥える。とても囁かな当てつけだ。


「…………」

「一人だけアガッてんの、みっともねぇし……俺も、男だからよ……」

「……。イッサイよ」


「ジェゾ、アンタをよがらせてぇな……」


 お役立ちアピール。
 ──だけじゃなくて、単なる性欲と、愛しいあの子とエロいことがシたい。

 自分だけがイかされる不慣れな居心地の悪さもあるが、単純に一斉は好きな男に奉仕する自分に興奮するタイプで、相手が喜べば喜ぶほどキモチイイ従順で無口な肉食系ネコ男子なのである。

 が、その言い方はちとアレだ。

 頭が痛そうな顔をしたジェゾは「お主、毎度もう少し語弊のない言葉選びができぬのか?」と嘆き、眉間のシワをモミモミとほぐすのであった。




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