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第二生 もぎたてフレッシュ喫茶店
05
しおりを挟むちなみにドリンクバーのレベルが多少上がっているので、飲んだ本人が自覚できる程度に付与の効果も上がっている。
同じ人に飲ませてもほとんど経験値が入らないドリンクバーだが、図鑑を集めたり新しい容器や効果を考えたりすると多少経験値になるのだ。
ついでにマヒ、毒、睡眠などの状態異常効果も付与できると気づいた。
はたして使い道はあるのだろうか?
喫茶店には不要な気がする。
まぁ効果は薄いしスタミナ消費も激しいので、大した用途には使えないだろう。
ひと狩り行こうぜ! なゲームの経験がある一斉にとって、付与効果はイメージしやすい。
体力、気力、魔力(それっぽいのがあるからたぶんある)なんかは消耗するようで、回復効果を付与できる。
筋力、防御力、俊敏性なんかの消耗しないステータスは、底上げできる。
一斉はジェゾが早く帰ると嬉しい。
任務やクエストならまだしも、ダンジョンに潜ると場合によるが三日は帰ってこない。
なので俊敏性アップの付与をしておいた、と言うと、ジェゾはまたしても無言で額に手を当てた。
いや、低レベルだぞ?
大袈裟に受け取られたところ申し訳ないが、かなりちょっとした効果だ。
「スキルも呪文も魔装具も必要なくただ飲むだけでバフ効果があるドリンクか……己が密かに、効果と持続時間を研究しておかねば……」
「あんま期待しねぇで、な。……ジェゾ、時間だぜ。ひと狩り、行かねぇの?」
「はぁ……行ってくる。よいこで待っておれ」
「ん」
お疲れ気味のジェゾは一斉の顎をモフモフの手ですくい、チュ、と触れるだけのキスをして屋敷を出て行った。
もしや外出取りやめなのでは? と期待したのだが行ってしまった。無念。
「……ま、俺がネコ科なら、ひと狩りも着いてくンだよ……」
人間族なので留守番するだけ。
ちなみに俺、人間の中じゃケンカ強いほうなんだぜ? と。
一斉はガチャンと鍵を閉め、ポリポリと後頭部を掻きながら朝食の後片付けをするべくキッチンへ向かった。
──あの日からごく自然な動作で贈られるキスにも、もう慣れた。
恋人に限らず触れたり舐めたり甘噛みしたりが親しい相手への愛情表現らしい種族柄、ジェゾは一斉に口付けることになんら忌避感がない。
一斉としては願ったり叶ったり。
なんならジェゾに倣って白い毛皮を舐めたり噛んだり、ナチュラルに動物的なスキンシップをし返す程度には馴染んでいる。好きにしてくれ。
『これから毎日毛繕いをしてやる』
あの日の言葉のとおり、ダンジョンに潜る日を除いて毎日、ジェゾは朝な夕な、暇を見つけると一斉の体を舐めた。
初めは確かに落ち着かなかったが、慣れるとむしろ幸福である。
基本的にはキスに甘噛み。
夜はシャワー後巨大ベッドへ呼ばれ、野生のジャガーよろしく横たわるジェゾのモフモフ腹毛に埋まって毛繕い。
ジェゾのそれは健全なものだ。
一斉もそれと受け取る。ようにしている。そこ含めてまぁ慣れた。
たまに、ごくたまーにムラリとくることを除けば大歓迎だ。
「ふぁぁ……ねみ……今日は、昼寝日和だな……」
『ほなドリンクバーの研究進めてからお昼寝するぅ~?』
「あぁ……けど研究は絶対ェだぜ。タナカとグウゼンに尽くすよ俺は……あの二人に俺一生頭上がんねぇ……」
『勉強からは逃げ回るくせにドリンク修行はバカ真面目やなほんま。義理堅いんはええけど息抜きかて大事やでぇ~?』
「ツーミン好きなの……バルコニー、ハンモックだろ……」
『ピンポーン、や!』
くあ、と欠伸をしながら、一斉が一人になると飛び出すツーミンを指先でチョイとなで、のんびり歩く。
巷で噂の若者の人間離れ。
ネコ科ならぬネコ化進行。
紛うことなき人間族の身でありながら、着々と飼い猫が板についてしまう一斉であった。
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