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十五皿目 正論論破愛情論
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一ヶ月も触れ合えていないことを嘆いた翌日。
日常と化した自給自足の夕食も終わってイズナがどこかへ消えてから、俺とリューオが二人、カードゲームで気を紛らわせていたところだ。
「はじめまして、シャル。俺は霊界の王──精霊王、アマダ・サアリオッツ。気安く接してもらって大丈夫、アマダと呼んでほしい」
突然訪ねてきたのは、俺の目の前でにこりと愛想よく微笑む、落ち着いた美形の男。
黒く滑らかな髪をひとつにまとめ、澄んだサファイア色の瞳を魅力的に緩める。
敵意はいっさい感じない、明るい笑顔だった。
彼は精霊界に来た時には会わなかった、玉座の間の向こう側の人である。
そして現在、アゼルを精霊城に引き止めている男でもあった。
俺の護衛という名目で共に滞在することを許されているリューオは、俺の斜め後ろに控えている。
素知らぬ顔で大人しいが、敵意を携えて警戒を解かない。
精霊王アマダの後ろにも、護衛らしき側近が一人控えていて、リューオと彼は睨みあうように気配を膠着させていた。
俺はリューオの脇腹にトンと密かに肘を当ててたしなめる。
リューオはすぐに目を逸らして、バレないように俺の足を突いて仕返しをした。まったく、なにごとも負けず嫌いだな。
それでもその男は目を逸らさずに敵意を持ってリューオを、俺達を睨んでいた。
白い髪の美しい男だ。
長い髪がゆらめき、男らしくも神聖さすら感じる容貌は、まさに精霊足り得る。
美しいだけではなさそうだ、というのが俺の見解だが。
視線に気づいたアマダは自己紹介に続き、背後の側近に目を向ける。
睨んでいることに気がついて、しょうがないな、と呆れた笑みを漏らした。
「こっちは左王腕セファー・ヨルィオ。精霊城で王の左腕、政務を補佐してくれている。セファーでいい。仲良くしてほしい」
「わか、」
「いえ、王。仲良くする気はありませんよ? 王の邪魔をするものは無価値です」
「おぁ……」
「またお前はそんなこと言って、もう」
ユリスやアゼルとはまた違う、どちらかと言うとゼオに近い様子でツンと関係を断ち切るセファー。
アマダが苦笑するだけなのを見るに、いつもこうなのだろう。
えと、しかし俺たちは邪魔? を、する気はないぞ。
その気がないのに取り付く島もなく突き放されたのは、ちょっと寂しいが別に気にしてない。
彼はおそらく、アマダのことがとても大切なんだろうな。
精霊族が性別を気にするのかは知らないけれど、セファーの瞳にはアマダへの愛情があるように感じた。
ふふん。俺だってそういうものをわかるようになったんだぞ?
アゼルやリューオたちやキャットたちを見ているからだ。
隣のリューオは不快感丸出しの〝うげぇ〟っとでも言いたそうな顔をしているが、それはまた脇腹をつついておいた。また足をつつかれた。
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