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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園
03
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会議をしよう。
となっても、この世界にはスクリーンもプロジェクターもない。
なので二畳分ほどの大きさの模造紙に文字とイラストを使ってまとめられたプレゼン表を、部屋の壁に貼り付けた。
その脇に立つ俺は、長めの棒でその模造紙の見出しを指す。
「コホン。それではこれから、一週間臨時教師派遣についての具体的な計画を説明致します。お手元の資料の一ページ目をご覧下さい」
「…………」
「こちらを」
俺の説明に合わせてライゼンさんがさっと資料をめくり、模造紙の正面に持ってきた椅子に座るアゼルに渡した。
先程から瞳孔が開き気味なアゼルの目が資料を追いかけるのを確認して、説明を続ける。
「まず簡単にこの計画に至る理由ですが、資料にあるとおり学園経営部門の教員不足と、顧客からのクレーム対策による緊急措置です」
「…………」
「報告書を昨日読んでいらしたでしょう?」
「…………」
ライゼンさんが声をかけると、ギュンッ、と目が吊り上がった。記憶にあるらしい。
「うん。魔法陣学はスキルが必須の魔法であり、神殿のない魔界ではスキルの有無すら当局では把握が困難で、急な人員が見つからない」
「…………」
「その問題は昨今勇者である移動型スキル判定機……じゃない。リューオ氏の協力のもと、改善しつつはあるものの、依然状況は改善途上といったところでしょう」
ペシペシ、と模造紙のグラフをつつきながら悩ましい声をだす。
うーん……リューオは細かい仕事が嫌いなんだ。
なんだかんだ言ってアゼルとは悪友のような関係なので協力はしてくれるが、体がなまると言ってすぐ陸軍に混ざってしまう。
強者に絶対服従。
タイマンで負けたら拒否権なしな魔族社会において、何度アゼルに負けても懲りないリューオは奇特な存在だろう。
だからこそ魔王の悪友なんて立場が務まるわけだが、魔界の人員把握は蝸牛の如き速度である。
「そんな苦しい状況である今」
ペシン! と模造紙を強く叩いた。
会議の盛り上がりだからな。演出だ。
「声がかかったのが、背後関係の確認や能力の確認が既に取れていてすぐに派遣できる魔法陣の使い手──つまり私、大河 勝流ですね。私が今回の計画に協力することになりました」
「ブラボー!」
「…………」
バババン。ドヤ顔の俺だ。もちろん演出である。
ちょっと恥ずかしいが、ライゼンさんと決めた演出だからな。
ライゼンさんはパチパチと拍手をして賞賛を贈ってくれる。けれど本丸のアゼルが相変わらずの仏頂面で、我慢ならない様子だ。
俺は両手を広げてドヤ顔をしていたのをスン、といつもの表情に戻して、ライゼンさんにありがとうの意味で片手を上げた。
アゼルに向き直り、小首をかしげる。
「ここまではよろしいでしょうか?」
「…………俺も使える」
よろしくないらしい。
絞り出すような俺も使えるが聞こえる。唸り声すら上がりそうな眼光だ。
しかしプレゼンモードの俺はそのくらいではへこたれない。
プレゼン。それは言葉で人を動かすビジネスな話し合い。
またの名を、言葉で人を唆す。
俺の場合は、納得してもらえるまでひたすら、延々、それはもうずっと語り続けること。しつこいと折れてもらえる。
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