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融解コンプレックス(2)
03
しおりを挟むそれから甘酒をよく冷まして飲み、新年の豪勢なオブジェの写真を撮った。
雪がフーフーと甘酒を冷ましている間、直はぼーっとしていてなにを考えているのかわからない。昔からだ。
けれど雪がオブジェの写真をニンスタに上げようとすると、直は「俺も撮る」と下手くそなカメラワークで写真を撮った。
「ん? なんで撮んの?」
「映えるから」
「ブレとるで」
「そか」
やはりよくわからない。
雪は甘酒もおみくじも写真を撮ったが、そこでは無反応だったくせに。
もともと直とこういうイベント事を楽しむことは滅多にない。
こうして初詣に誘われイベントに参加する直はレアで、そこでの振る舞いのノーマルは知らない。
だが直がなぜそんなことをするのかを考えると、なんとなーく、付き合いの長い雪は答えがわかる。
「ナオ」
「へ」
ブレブレの撮った写真を興味なそうに眺めている直の背中をバシッ、と叩くと、直が不思議そうに振り向いた。
雪は直の手からスマホを奪い、直のポケットにズボリと戻す。
「お前なぁ、俺とノリ合わせんでええねん。二人でも普通に楽しいやん」
「っ……」
「おもんなかったら帰るて。俺が嘘で連れと遊ばんの知っとるやろ? アホ」
呆れたため息を吐く。
ジロリと睨めば、直は驚き目を丸くしたまま黙り込む。
まったく、困った犬だ。
直は自分で初詣に連れてきておいて、雪が自分と二人じゃつまらないだろう、とトロトロしていた。
ドマイペースで言葉足らずが不思議ちゃんの服を着て歩いているような直。
おかげで雪の知る限り、長身で逞しい体の割に色素の薄い美形とモテ要素のある直はこれまで恋人どころかモテとは無縁に生きていたと思う。
けれど本当は優しく、割と気遣い屋だ。
不器用でスローなだけで。
仮恋人以前に幼馴染みだというのに今更気を使われて、雪はたいそう不服である。
「……でも一緒に騒ぐんがええんやろ? ユキの友達は、いつも一緒に」
「あ~? アイツら好きで撮っとんねん。お前は写真興味あらへんし、そもニンスタしてへんやん? 俺のこれかて出かけた時の記念写真や。俺のニンスタはアルバムとか日記的なサムシーング」
「ようわからん……」
「まーかまへん。記念写真は俺の担当な。ナオは自分の行きたいとことかやりたいことに俺誘う担でええわ」
兎に角ノリを合わせる必要はないと伝えると、直はコクリと頷き、もぞもぞとマフラーに口元をうずめた。
直の頬が赤い。
やはり寒さには勝てないらしい。
「うし、屋台行くで~。あったかいもん食ってあったまり」
「……暑い……」
「寒いくせに強がんなや!」
耳まで赤い直にワハハと笑って、雪は屋台ゾーンへ足を進めた。
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