誰かの二番目じゃいられない

木樫

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3.もう一番目じゃいられない

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 朝五が声を上げて笑うと、夜鳥は眉を困らせて待つ男の不安を吐露する。


「なんで笑うの? 本気なのに。電気はマメにしておくのかな、とか。脱いでおいたほうが手間が省けてるのかな、とか」


 わかったわかった。
 もう勘弁してくれ。恥ずかしさで死ぬと思ったが、笑い死にしそうだ。

 朝五の脳内に下着一枚で正座するベッド上の武士が形成され、笑いの波が打ち寄せた。傍らで厳かに鎮座するローションボトルとコンドームの箱が更に拍車をかける。

 それを思うと、夜鳥が寝たフリをしていてよかったのかもしれない。

 実写で再生されれば笑い転げてセックスどころじゃないのが目に見えている。


「そもそも普通に朝五を迎えられたとして、どうやって切り出すのかわかんない。俺とセックスしてくださいって言えばいい? ムードがないかも。ネットにはそう書いて……」

「ひ~っ。あ~もうやめろってっ。わかったからっ。これからは全裸待機のち『俺とセックスしてください』でいいからっ」


 散々爆笑を披露したあと。

 朝五は違う意味で熱くなった腹を抱えて、自分に覆いかぶさったまま真剣に困り果てる夜鳥の頭をわしゃわしゃと雑になでた。

 夜鳥は抵抗せずに髪を乱され、恥辱から頬を桃色に染めて朝五を見つめる。

 かわいい。朝五は悪戯っけを顕わに口角を上げ、夜鳥の目を見つめ返した。


「そんな顔でいいよ、夜鳥」

「……俺とセックスしてください」

「わはっ。よろしくお願いします」


 正面切って改められてこみ上げるもので震えるが、しっかりと頷く。

 朝五を一番好きだと言った誰よりも恋が下手くそな夜鳥は、朝五を誰よりも大事に抱くだろう。

 互いの笑みを皮切りに、どちらともなく額を擦りつけ、唇を重ねた。

 角度を変えて夜鳥の舌を誘導し、唾液を混ぜ合わせて吐息を掛け合う。一度落ち着いたはずの肉欲は、すぐに沸き上がった。触れるたびに高まる。

 唾液の溶液を飲み込むと、離れた唇の間にツツ……、と糸が引いた。

 舌を伸ばして糸を舐めとる。その様子を見てゴク、と喉を鳴らした夜鳥に気づくと、愛したがりの虫が疼く。


「もっとやらしいやつ、見せてやろーか」


 朝五は色めかしく目を細め、夜鳥の胸板を押しのけた。

 スウェットのゴムを引っ張り一皮剥くと、力強くテントを張っている股座が現れる。ニマ、と口元に弧を描く。

 悪戯心に急かされ、下着の上から蒸れた雄の茎に甘く噛みついた。

 ピクン、と脈打つ肉棒。愛らしい。片手を自分の足の間に伸ばして、頭をもたげている自身を達しない程度の緩やかさで手淫する。

 自ら慰めながら、下着を剥いで生で触れることなく夜鳥のモノにしゃぶりついた。

 唾液をまんべんなく塗し布を染みつかせ、えらの張った怒張の先端に吸いつき、舌と頬で奉仕する。


「はっ……ぅむ……」

「っ……そんなこと、するの……?」

「んふっ……焦らし返しです。夜鳥が寝てて、俺は結構残念だったんだからさ」


 上目遣いに責めると、夜鳥は申し訳なさそうに唇を噛み締めた。

 本当は怒っていない。
 ただ奉仕で感じてほしくて、朝五との行為を楽しんでほしいだけだ。




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