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第七話 キョースケと愛し方。
07(side今日助)※
しおりを挟むソープのぬるつきを借りた指はすぐになじみ、間をあまり置かずに躊躇なく二本目が追加された。すぐに三本目も入り込む。
「ンッぐ…あっ……ぁ…ああ……」
目を閉じて、乱暴な拡張に喘ぐ。
指はバラバラに動いて器用に各々が俺を追い詰めた。
拡げられて出入りされて曲がってこそがれて突かれて捻られて、するたびにソープが肉と粘ついてヌチャッヌチャッとやらしく鳴く。
後ろに気を取られていると、肉棒を刺激していた手が動きを早めてむき出しの先端の粘膜をグリグリとこねくり回すから、どうしょうもなくて喘ぐことしかできない。
すっかり泡まみれのまま勃ちあがった肉棒は、トロリと恥ずかしげに蜜をこぼし、泡を洗い流そうとする。
だけどそれを指にからませて一緒くたにニュルニュルと扱いていた咲は、咎めるように根本をギュウッと締め上げた。
「い゛ッぎ……っ、ひ、はっ」
「なぁ、コレじゃどっちが客かわかんねぇよ? 手足縛りつけてベランダに飾られたくなきゃちゃんと奉仕して? キョーちゃん。オモチャだらけで一晩放置されたくないでしょ?」
「ンッ……んそ、うだな……ぁっ…ん、っ……んっ……んっ……」
自分から見本を見せると俺を捕まえたのにずいぶんな言い草だ。
なのに俺は面白おかしく玩具にされても、仕方ないなぁ、と従ってしまう。
左腕でしっかりとしがみついて震える右手を咲の陰茎へと伸ばし、反応していないそれを柔らかく掴んで自分を追い詰める手と同じようにヌル、ヌル、と慰める。
「そう。ほら、もっと頑張れよ。できるだろ? キョースケはちゃんとさ」
「はっ…はっ…ぁっ…んあ、ぁ……っ」
「いつもやってんじゃん。俺の扱きながら犬みたいにハァハァやらしく喘いでなんだって興奮して、客が悦ぶオトコ好きの淫乱ヤローの役柄。自分ばっか腰抜かしてんな?」
「はぁ…っん、っ…わる、い……っく、ぅ、っは…あ……あ……」
咲はしがみつく俺を崩れ落とす気で、中も外も脳もとめどなく責めた。
俺はお決まりのヘラリとした笑みを浮かべて謝るけれど、限界が近くて、震える手がうまく動かない。
(咲と、扱きあいしてる……力抜けたら落ちるのに……俺、すごい興奮してる……)
高揚感に犯され思考ごとどんどん快感に染まっていく脳。
クチュ、クチュ、と肉茎を擦る粘着質な音がどちらの手の中から聞こえるのか、わからなかった。
咲の触った箇所が全て熱を持つ。
体のヌルつきが泡のせいなのか自分のせいなのかすら、わからなくなっていく。
「ぁ、そこ好きだ、咲……っぁあ……」
──咲が自分を客とか、俺とのセックスを仕事って言うのが、大嫌いだ。
俺にとってはこうして感じ合うだけで正気が煮崩れそうになるほど夢中になってしまう行為なのに、そんな俺の感情や体温、快楽や声、吐息、締めつけ方なんかの全部をただの業務の一貫にしてしまうから、大嫌いだ。
そりゃあ、元はと言えば俺がハマってはいけない沼に堕ちたのが悪い。うん。
わかってる。ちゃんと受け入れてる。
男娼と客。売買。バイバイ。
でも、俺がこうやって必死に喘ぐ理由を、全て利害関係で片付けてしまう咲が、俺はたまに心底から憎らしかった。
本気の俺の告白をいつも「はいはい、金ね」って冗談にしてしまうのが、悲しくてしんどくて、寂しくて。
咲が嫌いだ。
その言葉は遠回しな拒絶なのか、勘弁してくれよという否定なのか、わからない。
それとも、まさか本気でみじんも、自分に向けられる愛情を信じていないのか?
それこそ冗談みたいだ。
こんなに誰しもを魅了してやまない魔性の生き物であるくせに、迷いなく純粋に自分を無価値と思っているなんて、おかしな話だろ?
だから遠回しにお前なんかが、って、言われている気がする。
本気の相手になんて選ぶわけがないって、そういう気持ちじゃないかって、怖い。
咲のワガママを、仕方ないなぁって、受け入れられなくなったら、ふーんじゃあいらないって、玩具をポイ捨てするみたいに、俺との関係をポイ捨てする。
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