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第五話 サキとキョースケ。
17(side今日助)※微
しおりを挟む「ケツ、っ気持、ち……っあ、あっ」
「アハッ」
「は、入って、俺のなか、出て……っ、咲の、おっ、っ……奥に、当たる、何回も、当た、ぉ、あ……っ」
「当たる? 当ててんのヨ」
「んぁっ……ぁ、うっ……出たり入ったりすると、んん……っ擦れて中身出そうだ、ぁ、そこ気持ちいい……っふ、気持ちいい……っいい……っんは……っいい、ひっ、気持ち、もう無理、や、無理、うう、うあっ……うあっ……」
「は、わかんねーなぁ」
「はぁっ、も、ぐちゃぐちゃでわけわかんねぇから、あ、イ、イク、やめ……ッん、ッんんん……ッイク……ぁイ、イク、イクイク、イクッもうイクッイッ」
「ン、……はっ……」
自分の頭の中でフラッシュする感情や感覚をそのまま出力する。
俺が感じる咲からの刺激を本人に説明する。壊れそうな体の責任はお前にあると当てつけているようで胸がむず痒い。
感じるまま口にすると自分でもわけがわからなくなって矢継ぎ早に言葉を重ねると、咲はよくわからない顔で首を傾げてグッと奥深くに押し込み、熱いものを注ぎ込んだ。
「うく……っあ、ぁ…ッぁ…」
熱い、血潮のような精。
ドクドクッドクッ、と脈動し、咲の体液が俺の腹の中に吐き出される。
俺の細胞一つ一つに染み込んでしまえばいいのに。
死に損だって、咲は言うけどさ。
わけもわからず脳内が真っ白になってぼうっと意識が回復し始めると、腹の上がシャツもろとも、自分の出したもので汚れていた。
「これで合ってる?」
荒れた呼吸のまま呆ける俺に、Vネックカットソーの襟首をバタつかせて体の熱を逃がしている咲が、ボソリと尋ねる。
合ってる。なにがだ?
なんで俺に、いや、あぁ。
思考がまとまらず、脳裏にハテナをフワフワ浮かべる。汗ばんだ額に強めのデコピンが飛んできたが、意味はやっぱり理解できなかった。
脳がクリアになるまで、そう時間はかからない。
体内を埋めていた肉茎が引き抜かれ、注ぎ込まれた種がダラ、と漏れ出した。
漠然と感じながら、もったいないなぁ、と乾いた笑みを浮かべる。
そんな情けない姿を咲に見られたいわけじゃないから、うまく力が入らずに重だるい身体をもぞつかせて、布団の隣に追いやっていた薄っぺらな毛布を手繰り寄せた。
芋虫のようにもぞもぞと這う俺を、咲は眠そうな瞳で眺めている。
疲れてるなぁ、と声をかけると、昨日まで熱を出して寝込んでいたんだ、とどうでもよさそうに言われて、俺のへらりとした笑顔は硬直した。そんなこと知らなかった。バカ。
咲曰く、昨日の昼ぐらいには熱が下がっていたらしい。
一人眠るだけでただただ退屈だった、と愚痴を言われて、俺は内心なんとも言えない味の悪い感情を抱えていた。
なぜか勝手にズーンと沈む俺を見て、咲は首を傾げて「頭おかしくなったの?」と的はずれな質問を飛ばす。
答えられるわけがないから、肘をついて覗き込む顔へ曖昧に相槌を打ち、誤魔化すように手の甲を擦りつけた。
滑らかな輪郭をなぞる俺の手の甲は、未だに火照っているわけだが。
「ん、ナニ? ほっぺ剃り残しある?」
「ないよ。あっても色素薄いだろ? 咲は。しかもカミソリ負けするしなぁ……」
「え、バカにしてんの? やっぱいつも通りの面白おかしいセックスのほうが良かった系?」
「そ、それは勘弁……きれいだって褒めてんの。受け取っとけよー」
「脳ミソ沸いてんね」
素直に褒めただけなのに、酷い吐き気を催したように舌を出しながら顔をしかめられた。
相変わらず、外面に対する自己評価が驚くほどズレている男だ。
自分で自分を持ち上げて茶化すジョークはいいくせに、人に言われる賛辞はすべからく突っぱねる。
俺から見るとこうも人間味のない美しい人間は、そうはいないと思う。
そこまで容姿の美的感覚が狂ってるわけでもないはずが、自分に対しては異常な物差しの歪みを持っている。
「あー、酒ねぇのかよ」
「ねーなー」
ケロッと表情を入れ替えて尋ねる咲。
身型を整える咲と取り留めのない話をしながら、俺の口元はゆるりと緩む。
どこか枠に当てはまらないところがある不思議な咲と共にいると、いつか感じていた不安は、いつの間にか霧散していた。
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