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第四話 ショーゴと浮気。
09
しおりを挟むグルルル、と腹の虫が鳴る。
パスタを欲しがっているらしい。
でも今夜はあの店で食べると決めたじゃん? 俺。あそこ閉まったから、もーなにも食べる気にはなんねぇの。わかる?
わかんねぇかな、俺ルール。
別にパスタでないと、ショーゴでないと、ダメだというわけじゃない。
今日はショーゴとあの店で食事をすると決めたなら、以外は受け付けないのだ。
大通りから住宅街へ入ってのんびり歩くと、歩き始めてから一時間ほどでショーゴのマンションが見えた。
単身者向けのなかなかいいマンションだ。たまにホテル代わりに泊まりに来るのだが、壁が若干薄いのか近所の住民には僅かに声が聞こえているらしい。
そういや隣の部屋のおねーさんが俺とショーゴを見て真っ赤になったことある。
聞こえてるカモ。てか聞こえてるじゃん。ショーゴかわいそ。
まーアイツの喘ぎ声がうるさいせいだけどね。声量自体はそれほどなくても口数が多いので、それだけバレる恐れが多いということ。
俺が声を我慢しないほうがイイって言ったからだったらサーセン。んじゃ今度は窒息プレイ。無言で死んでちょ。
「あ、でもショーゴ死体疑惑あるんだっけ。無理めか。息してないと窒息できねー」
ショーゴの部屋は五階の角部屋。
ダメダメな呟きを虚空にトゥイートしながらエレベーターに乗れば、チーンと一瞬で五階に到着する。
最後にもう一度スマホを確認したけれど、連絡はなかった。
やっぱり死んでる。ウケる。
もし本当に死んでたら遊んでもらおう。
俺まだ死姦とかしたことねぇし、人を食べたこともねぇのよな。解剖もしてみたい。
面白そうなことがきっとたくさんできるはずだ。想像するとしばらく暇が潰れそうなくらい愉快なことに思えて、口角が上がった。
ショーゴはキレイな体をしているから最後は美しい白骨標本にして、毎日一緒に寝てあげる。俺とドアの間になってちょ。
でもショーゴのかわいい目玉だけは、ホルマリン漬けにして飾ってあげよう。
俺のことが怖くてたまらないという、あの涙に溺れた泣く虫の目。
そのホルマリン漬けの前で、よく見えるように他の誰かとセックスする。特等席だぜ? あはは。
泣いて喜ぶ目玉を全方向から眺めて、俺はその目に「バカだなぁ、ショーゴ」といつも通りに笑いかけるのだ。
うんうん、割とよきなり。
他にもいろいろ、ショーゴの目玉とタツキの喉とキョースケの項とアヤヒサの手。
並べたホルマリン漬けをハルに見せて、酒盛りしましょ。白骨標本は壁に四体飾ろう。愉快なインテリアの完成じゃね。
楽しい未来を考えながら、ピンポーンとショーゴの部屋の呼び鈴を鳴らす。
(……。……うん?)
死体でも生体でもどちらでもいい。
そんな気分で待ったが、どうも反応がない。
もう一度、強く押す。
ピンポーン。うんうん。
確実に鳴っていると確認して少し待ってみたが、やはり反応がない。
そりゃそうか。死体は呼び鈴に反応しねぇもんね。ジョーシキ的に。
もう一度押して出てこなかったらかーえろ、と思って呼び鈴を鳴らそうとした時、屋の中から足音が聞こえてインターホンを押す指を引っ込めた。
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