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05 プリンがない! 番外編
しおりを挟むこの話は長女・ユイと末子・ヒカリが高級スイーツを買いに行く番外編になります
01を読まれてからこの話を読むことを強くオススメします
長女は妹に怒鳴られた言葉を思い出していた。
三女「今すぐプリンを買ってコォい!」
こう言わせたのが自分たちであるのは重々承知しているが、それでも王族らしく乱暴な言葉に無縁だった長女はショックだった。チクチク細かく笑顔で刺していく上の妹とはまた違う方法だ。
「お姉ちゃん、やっぱり高級なほうがいいよね?」
共犯の末っ子に意識を引き戻される。
「相当怒ってるし、謝罪の意味を込めて高いほうがいいわね」
「だよね~」
「ヒカリ、何処に向かってるの?」
「デパートだよ。高いスイーツが沢山あるんだって。貴族令嬢が通ってるって聞いたよ」
「変装は必要あるかな?」
「あたいはいらないと思うけど。お姉ちゃんってそんなに有名?」
これでも一国の王太女な長女は困惑した。
「高位貴族ならまず知っていると思うよ」
「そうなの?あたいは?」
「公爵家なら分かるかな?………耳を隠せばいいか」[隠蔽]
長女はエルフの証である長い耳を隠した。
「じゃああたいも!」[隠蔽]
ーデパートの中
王国内でも有数の高級店が立ち並んでいる。左の店はショコラ専門店で、右の店はブリュレが目玉の新規店だ。長女も名前を聞き齧ったことがあった。
「うわあ聞いてはいたけどやっぱりすご~い!」
末子は目をキラキラさせている。自分では手綱を十分に引けない長女は不甲斐なく思ったけれど彼女たちの側仕えを呼ぶことはしなかった。彼女自身の成長に利用する気だった。こういうところが次女と姉妹なのである。
「ヒカリ、国民に見られているのだから、王族として恥ずかしくないように振る舞いなさい」
「………ユイ姉もツイ姉と同じこと言うんだね」
落胆の色が滲んでいる声は社交で慣れている長女の心にも深く刺さった。でも長女は末子を教育する義務の一端を担っている。へこたれるわけにはいかなかった。
「そうよ」
「………失礼致しました、お姉様。ご無礼をお許しくださいませ」
軽く目を閉じたかと思うと、末子は美しい作法で長女に詫びた。長女は末子ができる子だと分かっていた。
「許しましょう。ではおすすめの店はありますか?」
「はい。案内致しますわ」
貴族らしくなった末子が案内したのはマカロンを主に扱う店だった。
「こちらは私も愛用しているのですよ」
「いらっしゃいませ。何をお求めですか?」
奥にいた店員が出てきた。
「妹を怒らせてしまって………。お詫びの品を買いに来たのです」
「かしこまりました。妹さま思いの方ですね」
「ありがとう存じます」
「こちらが当店で最も人気の商品になります」
マカロン食べ比べ5つセット。内容はいたってシンプルである。赤、黄色、緑、紫、白。どの色がどの味なのかは説明がなかった。食べてからのお楽しみというやつだ。これはまた斬新である。
「ではこれを2つください」
長女は三女だけではなくいつものお礼も込めて次女にも渡そうと思ったのだ。
「かしこまりました」
そのマカロンは非常に美味しく三女は機嫌を直し仲直りしたという。次女は微笑んでいた。
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