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第一章:不当解雇
第32話:VS Aランク魔獣
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反射的に振り返ると、そこには見たことのない光景が広がっていた。
「……デン。お前、この光景を、見た事があるか?」
「……我もこの世に生を受けて長いが、初めて見る光景だな」
デンでも見た事がないって事は、相当珍しい場面に俺たちは出くわしているらしい。
おそらく、魔獣の生態について研究している研究者なら目を輝かせるだろう光景だろうな。
「まさか、魔獣が生まれ落ちる現場に居合わせるとはな!」
目の前の空間に亀裂が走り、まるでそこから這い出てくるかのようにして腕が現れると、その姿が徐々に露わになっていく。
肩が、足が、体が、頭が出てくると、その魔獣はこちらに真っ赤な瞳を向けて声をあげた。
『グルゴアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!!』
オーガは角が一本、額から生えているだけだった。
しかし、目の前に生まれ落ちた魔獣には角が二本、こめかみのあたりから生えている。
「こいつは、オーガファイター?」
「オーガの上位種といったところかのう」
「ってことは、ランクはAが妥当か」
「我がやろうか?」
「いいや、俺がやるよ。サクラハナ国の魔獣の情報は貴重だからな」
Aランクともなれば、今の自警団では大勢で掛かっても犠牲なしでは倒せないだろう。もしかすると、全滅だってあり得るかもしれない。
だからこそ、俺がやらなければならない。
やり過ぎは魔獣を進化させるだけなので、自警団にはCランクやBランクの魔獣は倒してもらわないといけないけどな。
「さっきは突然過ぎて引いてもらったが、正解だったな」
「お主、ずいぶんと余裕だのう」
「そういうデンだって、自分がやろうか? なんて言ってたじゃないか」
「ふん! こ奴がAランクだったとしても、我には問題にならんからな!」
そして、どうして俺たちがこうも普段と変わらないのかというと、Aランクだからと恐怖するわけがないからだ。
『グルゴアアアアッ!』
「それじゃあ、いってくるよ」
「油断だけはするんじゃないぞ」
飛び込んできたオーガファイターを俺が右に、デンが左に回避する。
振り下ろされた拳が地面を粉砕し、大きく陥没させた。
「腕力も速度もオーガ以上か。さすが上位種だな」
『ゴアアアアッ!』
「硬さはどうだっ!」
素早く振り返ったオーガファイターの拳めがけて剣を振り抜くと、まるで金属同士が打ち合ったかのような音が響き渡り、腕に痺れが残る。
その拳が一撃だけではなく、左右の連打で襲い掛かってくるのだから威圧感は相当なものだ。
ギレインが相手をするなら、オークを単独で無傷で倒せるくらいになってくれなければならないな。それも、同程度の実力者が三人以上は必要だろう。
一人は攻撃を防ぐか、注意を引きつける役目を担ってもらう。全てを回避して攻撃を加えるなら、相当な体力が必要だろう。
『グルアアッ!』
体力でいえばギースがいるが、まだまだ実力が足りなさすぎる。
伸びしろに期待、といった感じだな。
『グガアアッ!』
自警団の実力者がどの程度なのか、そこの確認も必要になるか。
メリースさんやカリーさんの実力もわからないし、どうやって魔獣の進化についていかせるか……ん?
「違ったか。俺が指導するのはギースだけだし、他の自警団の人たちとは顔を合わせていない人の方が多いしな」
『グ、グルル、グルゴアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!』
「ん? あぁ、すまない。別に無視していたわけじゃないんだ。お前の実力を把握し、どうやって戦えば他の人でも倒せるかを考えていたんだ」
俺の態度が気に障ったらしい。
真っ赤だった瞳がさらに深い赤に染まり、連打の速度も上がっていく。
『グルアアアアアアアアッ!』
「これは――ブレスか!」
人型魔獣がブレスを放つだなんて、聞いた事がないぞ!
大きく口を開いた直後、深紅の炎が俺の眼前に広がった。
「レインズ!」
「……おーおー、さすがに今のはヤバかったな。デンもそこまで驚くなよ」
くそ、前髪が少しだけ焼けてしまったか。
だがまあ、目の前でブレスを放たれて火傷一つしていないなら、儲けものだな。
それに、ブレスはおそらくオーガファイターの奥の手だろう。
こういう奥の手を使った後は、どうしても動きが鈍るものだ。
『……グ、グルルゥゥ』
「もう少し観察したかったが、そろそろ終わらせるぞ!」
奥の手まで出させたのだから、これ以上の収穫はなさそうだしな。
俺が蹴りつけた地面が陥没する。
その勢いそのままに真っすぐ駆け出した俺は、オーガファイターの両碗から放たれる連打を全て回避。一瞬にして懐に潜り込むと、渾身の力で剣を斬り上げた。
『グガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?』
股から皮を、肉を、骨を、臓腑を切り裂きながら、最後に刀身が一就いた先は脳天だ。
肉体を左右に分かたれたオーガファイターからはどす黒い血が溢れ出し、自らの血だまりにその身を横たえたのだった。
「……デン。お前、この光景を、見た事があるか?」
「……我もこの世に生を受けて長いが、初めて見る光景だな」
デンでも見た事がないって事は、相当珍しい場面に俺たちは出くわしているらしい。
おそらく、魔獣の生態について研究している研究者なら目を輝かせるだろう光景だろうな。
「まさか、魔獣が生まれ落ちる現場に居合わせるとはな!」
目の前の空間に亀裂が走り、まるでそこから這い出てくるかのようにして腕が現れると、その姿が徐々に露わになっていく。
肩が、足が、体が、頭が出てくると、その魔獣はこちらに真っ赤な瞳を向けて声をあげた。
『グルゴアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!!』
オーガは角が一本、額から生えているだけだった。
しかし、目の前に生まれ落ちた魔獣には角が二本、こめかみのあたりから生えている。
「こいつは、オーガファイター?」
「オーガの上位種といったところかのう」
「ってことは、ランクはAが妥当か」
「我がやろうか?」
「いいや、俺がやるよ。サクラハナ国の魔獣の情報は貴重だからな」
Aランクともなれば、今の自警団では大勢で掛かっても犠牲なしでは倒せないだろう。もしかすると、全滅だってあり得るかもしれない。
だからこそ、俺がやらなければならない。
やり過ぎは魔獣を進化させるだけなので、自警団にはCランクやBランクの魔獣は倒してもらわないといけないけどな。
「さっきは突然過ぎて引いてもらったが、正解だったな」
「お主、ずいぶんと余裕だのう」
「そういうデンだって、自分がやろうか? なんて言ってたじゃないか」
「ふん! こ奴がAランクだったとしても、我には問題にならんからな!」
そして、どうして俺たちがこうも普段と変わらないのかというと、Aランクだからと恐怖するわけがないからだ。
『グルゴアアアアッ!』
「それじゃあ、いってくるよ」
「油断だけはするんじゃないぞ」
飛び込んできたオーガファイターを俺が右に、デンが左に回避する。
振り下ろされた拳が地面を粉砕し、大きく陥没させた。
「腕力も速度もオーガ以上か。さすが上位種だな」
『ゴアアアアッ!』
「硬さはどうだっ!」
素早く振り返ったオーガファイターの拳めがけて剣を振り抜くと、まるで金属同士が打ち合ったかのような音が響き渡り、腕に痺れが残る。
その拳が一撃だけではなく、左右の連打で襲い掛かってくるのだから威圧感は相当なものだ。
ギレインが相手をするなら、オークを単独で無傷で倒せるくらいになってくれなければならないな。それも、同程度の実力者が三人以上は必要だろう。
一人は攻撃を防ぐか、注意を引きつける役目を担ってもらう。全てを回避して攻撃を加えるなら、相当な体力が必要だろう。
『グルアアッ!』
体力でいえばギースがいるが、まだまだ実力が足りなさすぎる。
伸びしろに期待、といった感じだな。
『グガアアッ!』
自警団の実力者がどの程度なのか、そこの確認も必要になるか。
メリースさんやカリーさんの実力もわからないし、どうやって魔獣の進化についていかせるか……ん?
「違ったか。俺が指導するのはギースだけだし、他の自警団の人たちとは顔を合わせていない人の方が多いしな」
『グ、グルル、グルゴアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!』
「ん? あぁ、すまない。別に無視していたわけじゃないんだ。お前の実力を把握し、どうやって戦えば他の人でも倒せるかを考えていたんだ」
俺の態度が気に障ったらしい。
真っ赤だった瞳がさらに深い赤に染まり、連打の速度も上がっていく。
『グルアアアアアアアアッ!』
「これは――ブレスか!」
人型魔獣がブレスを放つだなんて、聞いた事がないぞ!
大きく口を開いた直後、深紅の炎が俺の眼前に広がった。
「レインズ!」
「……おーおー、さすがに今のはヤバかったな。デンもそこまで驚くなよ」
くそ、前髪が少しだけ焼けてしまったか。
だがまあ、目の前でブレスを放たれて火傷一つしていないなら、儲けものだな。
それに、ブレスはおそらくオーガファイターの奥の手だろう。
こういう奥の手を使った後は、どうしても動きが鈍るものだ。
『……グ、グルルゥゥ』
「もう少し観察したかったが、そろそろ終わらせるぞ!」
奥の手まで出させたのだから、これ以上の収穫はなさそうだしな。
俺が蹴りつけた地面が陥没する。
その勢いそのままに真っすぐ駆け出した俺は、オーガファイターの両碗から放たれる連打を全て回避。一瞬にして懐に潜り込むと、渾身の力で剣を斬り上げた。
『グガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?』
股から皮を、肉を、骨を、臓腑を切り裂きながら、最後に刀身が一就いた先は脳天だ。
肉体を左右に分かたれたオーガファイターからはどす黒い血が溢れ出し、自らの血だまりにその身を横たえたのだった。
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