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第二章:新たなる力、メガネ付き
第8話:新たな出会い 1
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自らの鍛錬のために冒険者としての活動時間を増やしたイーライ。
積極的に魔獣の討伐依頼もこなしていくと、新人冒険者としては異例のスピードでFランクからEランクに昇格した。
突然現れた新星をパーティに加えようと多くの冒険者が声を掛けていたのだが、当然ながらイーライは首を縦に振る事はない。
しかし、臨時でパーティに加入する事はあり、Dランクに昇格するのも時間の問題だと、冒険者ギルドでは噂の的になっていた。
その間、明日香と夏希は素材採取の護衛依頼をキャロラインとリザベラに頼っていた。
「どうしましょうか、明日香さん?」
「うーん……まあ、こんな日もあるよね」
今日もカフカの森へ下級ポーションの素材を採取しに行こうとしていたものの、冒険者ギルドに到着すると二人が別の依頼でマゼリアを離れているのだとリンスに教えられた。
二人だけでマゼリアの外に向かうわけにもいかず、今日は採取を諦めようかと考えていたのだが――
「そうだ! ちょっとだけ待っていてもらえますか?」
「わ、分かりました」
ポンと手を叩いたリンスの言葉に了承すると、彼女はカウンターを出てどこかへ走っていってしまう。
どうしたのだろうかと顔を見合わせながら待っていると、リンスは一人の短い黒髪の中に僅かな白髪を生やした偉丈夫を連れて戻ってきた。
「お待たせいたしました!」
「……あの、リンスさん? そちらの方は?」
当然の質問にリンスはニコリと微笑んでから答えてくれた。
「こちらはSランク冒険者のガゼル様です! お二人の依頼を受けてもらおうと思いまして!」
「「……エ、エエエエ、Sランク!?」」
向かう先は新人冒険者が多く、魔獣のランクも低いカフカの森である。
そんな場所に冒険者の最高峰と言われているSランク冒険者を連れて行くなどできないと、二人は慌てて断ろうとした。
「ダ、ダメですよ! カフカの森ですよ? Sランク冒険者様に迷惑ですって!」
「……そう言っているが、俺はどうしたらいいんだ?」
左目のところには縦に伸びる切り傷の跡が残っており、それだけで厳つい雰囲気を醸し出しているガゼルは、剃り残した顎髭を撫でながらそう口にする。
「大丈夫ですよ、ガゼル様。……ちょっとこちらへ、アスカ様、ナツキ様」
突然小声になったリンスが手招きをしてきたので向かうと、二人は彼女がどうしてガゼルを選んだのかを教えてくれた。
「実は、王城から冒険者ギルドにも使者が訪れたのです」
「使者って……もしかして、私たちの事で?」
「はい。それで、お二人にはできるだけ信頼のおける冒険者を付けるよう言われているのです」
冒険者ギルドの中でも事情を知っているのはほんの一部のみ。
リンスは最初の出会いから今日まで、ほぼ専属のように話を聞いてもらっていた事もあり、ギルドマスターから話が下りてきていた。
「ガゼル様も事情を知っていますから、安心して任せてくれませんか?」
「……そうなんですか?」
何度も瞬きを繰り返しながら、明日香は視線をガゼルへ向ける。彼は顎髭をいじりながら欠伸をしている。
「……Sランク冒険者様、なんですもんね」
「あぁ見えて、とても頼りになる冒険者様なんですよ?」
事情も知っていて、実力も申し分ない。むしろ申し訳なさが先行してしまう相手である。
ガゼルは事情を知ったうえでこちらに来てくれているのだから、ここで断る方が失礼に当たるだろうと考えた。
「……分かりました」
「ありがとうございます、アスカ様。ナツキ様はいかがでしょうか? ……ナツキ様?」
リンスの声に明日香も夏希に視線を向ける。
すると、夏希はガゼルを見つめたまま固まっていた。
「……夏希ちゃん?」
「……」
「……夏希ちゃーん?」
「……はっ! す、すみません、明日香さん!」
「いや、大丈夫なんだけど……ガゼルさんに護衛依頼をお願いしてもいいかな?」
自分だけでは決められないと夏希に確認したのだが、彼女は食い気味にはっきりと答えた。
「――大丈夫です! お願いしましょう!」
「……わ、分かったわ」
二人はガゼルに護衛依頼をお願いした。
「助かるぜ。カフカの森には向かうつもりだったが、これでギルドからも金が貰えるからな」
「そうなんですか?」
「あぁ。あんたらの事情で、城からギルドに金が下りているんだ。そんで、護衛依頼を受けるとそこから臨時の収入が入るんだよ」
「……えっと、守銭奴?」
「違う、違う。これが冒険者ってやつなのさ。狡猾に生き残り、金を稼ぐんだよ」
まさかの事情を教えられた明日香は呆れてしまったが、ガゼルは冒険者なら狡猾にならなければいけないと、ニヤリと笑いながら口にした。
「それじゃあ行くぞ。お嬢さん方」
「明日香です」
「な、夏希です! よろしくお願いします、ガゼルさん!」
「……? お、おう、よろしくな」
前のめりになりながら自己紹介をしてきた夏希に困惑しつつも、三人はカフカの森に向けて出発した。
積極的に魔獣の討伐依頼もこなしていくと、新人冒険者としては異例のスピードでFランクからEランクに昇格した。
突然現れた新星をパーティに加えようと多くの冒険者が声を掛けていたのだが、当然ながらイーライは首を縦に振る事はない。
しかし、臨時でパーティに加入する事はあり、Dランクに昇格するのも時間の問題だと、冒険者ギルドでは噂の的になっていた。
その間、明日香と夏希は素材採取の護衛依頼をキャロラインとリザベラに頼っていた。
「どうしましょうか、明日香さん?」
「うーん……まあ、こんな日もあるよね」
今日もカフカの森へ下級ポーションの素材を採取しに行こうとしていたものの、冒険者ギルドに到着すると二人が別の依頼でマゼリアを離れているのだとリンスに教えられた。
二人だけでマゼリアの外に向かうわけにもいかず、今日は採取を諦めようかと考えていたのだが――
「そうだ! ちょっとだけ待っていてもらえますか?」
「わ、分かりました」
ポンと手を叩いたリンスの言葉に了承すると、彼女はカウンターを出てどこかへ走っていってしまう。
どうしたのだろうかと顔を見合わせながら待っていると、リンスは一人の短い黒髪の中に僅かな白髪を生やした偉丈夫を連れて戻ってきた。
「お待たせいたしました!」
「……あの、リンスさん? そちらの方は?」
当然の質問にリンスはニコリと微笑んでから答えてくれた。
「こちらはSランク冒険者のガゼル様です! お二人の依頼を受けてもらおうと思いまして!」
「「……エ、エエエエ、Sランク!?」」
向かう先は新人冒険者が多く、魔獣のランクも低いカフカの森である。
そんな場所に冒険者の最高峰と言われているSランク冒険者を連れて行くなどできないと、二人は慌てて断ろうとした。
「ダ、ダメですよ! カフカの森ですよ? Sランク冒険者様に迷惑ですって!」
「……そう言っているが、俺はどうしたらいいんだ?」
左目のところには縦に伸びる切り傷の跡が残っており、それだけで厳つい雰囲気を醸し出しているガゼルは、剃り残した顎髭を撫でながらそう口にする。
「大丈夫ですよ、ガゼル様。……ちょっとこちらへ、アスカ様、ナツキ様」
突然小声になったリンスが手招きをしてきたので向かうと、二人は彼女がどうしてガゼルを選んだのかを教えてくれた。
「実は、王城から冒険者ギルドにも使者が訪れたのです」
「使者って……もしかして、私たちの事で?」
「はい。それで、お二人にはできるだけ信頼のおける冒険者を付けるよう言われているのです」
冒険者ギルドの中でも事情を知っているのはほんの一部のみ。
リンスは最初の出会いから今日まで、ほぼ専属のように話を聞いてもらっていた事もあり、ギルドマスターから話が下りてきていた。
「ガゼル様も事情を知っていますから、安心して任せてくれませんか?」
「……そうなんですか?」
何度も瞬きを繰り返しながら、明日香は視線をガゼルへ向ける。彼は顎髭をいじりながら欠伸をしている。
「……Sランク冒険者様、なんですもんね」
「あぁ見えて、とても頼りになる冒険者様なんですよ?」
事情も知っていて、実力も申し分ない。むしろ申し訳なさが先行してしまう相手である。
ガゼルは事情を知ったうえでこちらに来てくれているのだから、ここで断る方が失礼に当たるだろうと考えた。
「……分かりました」
「ありがとうございます、アスカ様。ナツキ様はいかがでしょうか? ……ナツキ様?」
リンスの声に明日香も夏希に視線を向ける。
すると、夏希はガゼルを見つめたまま固まっていた。
「……夏希ちゃん?」
「……」
「……夏希ちゃーん?」
「……はっ! す、すみません、明日香さん!」
「いや、大丈夫なんだけど……ガゼルさんに護衛依頼をお願いしてもいいかな?」
自分だけでは決められないと夏希に確認したのだが、彼女は食い気味にはっきりと答えた。
「――大丈夫です! お願いしましょう!」
「……わ、分かったわ」
二人はガゼルに護衛依頼をお願いした。
「助かるぜ。カフカの森には向かうつもりだったが、これでギルドからも金が貰えるからな」
「そうなんですか?」
「あぁ。あんたらの事情で、城からギルドに金が下りているんだ。そんで、護衛依頼を受けるとそこから臨時の収入が入るんだよ」
「……えっと、守銭奴?」
「違う、違う。これが冒険者ってやつなのさ。狡猾に生き残り、金を稼ぐんだよ」
まさかの事情を教えられた明日香は呆れてしまったが、ガゼルは冒険者なら狡猾にならなければいけないと、ニヤリと笑いながら口にした。
「それじゃあ行くぞ。お嬢さん方」
「明日香です」
「な、夏希です! よろしくお願いします、ガゼルさん!」
「……? お、おう、よろしくな」
前のめりになりながら自己紹介をしてきた夏希に困惑しつつも、三人はカフカの森に向けて出発した。
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