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第二章:新たなる力、メガネ付き
第2話:新しい生活 1
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明日香はジジの道具屋に住み込みで働いている。
そして、それは夏希も同じだった。
女性の独り暮らしはいくら王都マゼリアとはいえ危険であり、さらに夏希は異世界からやって来たせいもありマグノリア王国の事に詳しいわけではない。
何か起きてからでは遅いと、明日香がジジに声を掛けたのだ。
「ほほほ。構いませんよ」
ジジも二つ返事で了承した結果、夏希の居場所はあっという間に決まってしまった。
この際、明日香と夏希が勇者召喚で異世界から召喚された者である事も説明されている。
明日香だけではなく夏希まで世話になるのだからと、マグノリア王国の第一王子であるアルディアン・マグノリア――アルが許可を出したのだ。
もちろん、それにはいくつかの条件が出されており、そのうちの一つがイーライの存在だ。
イーライはマグノリア王国騎士団の元騎士であり、彼が側にいるからこそ許可が出された経緯がある。
とはいえ、ジジの道具屋で住み込みで働いているのは女性陣二人だけで、イーライは別で部屋を借りている。
明日香の騎士となり、守り抜くと誓ったとはいえ、一つ屋根の下で暮らすというのはどうかと待ったが掛かったのだ――主にアルから。
最初から居を別にするつもりだったイーライからすると何を言っているんだという気持ちだったが、アルからすると居ても立っても居られない状況だったのだ。
「イーライはこれからギルドに行くの?」
「あぁ。そろそろEランクに上がれるかもしれないからな。ちょっと本腰を入れようと思う」
イーライの日課は毎朝ジジの道具屋で朝食を取り、そして弁当を受け取る事から始まる。
これも条件の一つになっており、明日香の無事を常に確認しなければならない。
とはいえ、イーライもそれは本位であり、毎朝明日香の顔を見られるとあって内心では上機嫌に部屋から道具屋までの距離を歩いていた。
「そっか。頑張ってね」
「あぁ。そっちも頑張れよ」
「うん!」
お互いに手を振りあいながら別れると、振り返った明日香は毎回のように微笑ましいものを見るような表情を浮かべている夏希と顔を合わせる。
「夏希ちゃん、また見てたの?」
「はい! だって、明日香さんがとても楽しそうで、羨ましいんですもの!」
明日香と行動を共にするようになってからというもの、夏希の性格は岳人たちと一緒にいた時よりも一段と明るくなっている。
否、これが本来の夏希なのだろうと明日香は思っていた。
夏希は岳人たちからいじめを受けていた。
罵声を浴びせられ、容姿を貶され、事あるごとに面倒事を命令されて、それが上手くできなければさらに罵倒される。酷い時には手が出る事もあった。
離れる事も考えたが、それがきっかけでさらに過激ないじめに発展するのではないかという恐怖を自分の中で作り上げてしまい、作り笑いを浮かべながら耐え続けてきた。
マグノリア王国に召喚されてからは、見知らぬ土地で一人になる恐怖が岳人たちへの恐怖よりも強く、結果としてこちらに来てからも心を殺しながら行動を共にするようになっていた。
明日香も夏希が元気に声を発している姿を見て驚いたものの、すぐに受け入れて今では実の妹のように可愛がっている。
実際のところ、こちらの世界で黒髪は珍しく、二人が姉妹だと言っても疑う者は誰もいないだろう。
「あっ! でも気をつけてくださいね、明日香さん!」
「どうしたの?」
「イーライさんって、イケメン騎士じゃないですか? こういう時のお約束は、彼を狙っていた別の女性が突然やって来て、泥沼に落とされる事なんですからね!」
「ど、泥沼って。いや、でも、あり得ないと思うよ?」
「あり得ますから! それがお約束なんですよ!」
夏希はどこか乙女のような表情を浮かべて何やら語り始めた。
どうやら好きな本やゲームの内容が、寝取り寝取られるようなものばかりだったらしい。
あまりそういった内容のものを見て来なかった明日香としては、ただ苦笑するしか対応を思いつかなかった。
「そ、そろそろ開店だし、中に戻ろうか」
「はっ! そうですね、戻りましょう、明日香さん!」
駆け足で道具屋に戻っていった夏希の背中を見つめながら、明日香は明るくなった彼女の人生がこれから開けるような、そんなイメージを膨らませるのだった。
そして、それは夏希も同じだった。
女性の独り暮らしはいくら王都マゼリアとはいえ危険であり、さらに夏希は異世界からやって来たせいもありマグノリア王国の事に詳しいわけではない。
何か起きてからでは遅いと、明日香がジジに声を掛けたのだ。
「ほほほ。構いませんよ」
ジジも二つ返事で了承した結果、夏希の居場所はあっという間に決まってしまった。
この際、明日香と夏希が勇者召喚で異世界から召喚された者である事も説明されている。
明日香だけではなく夏希まで世話になるのだからと、マグノリア王国の第一王子であるアルディアン・マグノリア――アルが許可を出したのだ。
もちろん、それにはいくつかの条件が出されており、そのうちの一つがイーライの存在だ。
イーライはマグノリア王国騎士団の元騎士であり、彼が側にいるからこそ許可が出された経緯がある。
とはいえ、ジジの道具屋で住み込みで働いているのは女性陣二人だけで、イーライは別で部屋を借りている。
明日香の騎士となり、守り抜くと誓ったとはいえ、一つ屋根の下で暮らすというのはどうかと待ったが掛かったのだ――主にアルから。
最初から居を別にするつもりだったイーライからすると何を言っているんだという気持ちだったが、アルからすると居ても立っても居られない状況だったのだ。
「イーライはこれからギルドに行くの?」
「あぁ。そろそろEランクに上がれるかもしれないからな。ちょっと本腰を入れようと思う」
イーライの日課は毎朝ジジの道具屋で朝食を取り、そして弁当を受け取る事から始まる。
これも条件の一つになっており、明日香の無事を常に確認しなければならない。
とはいえ、イーライもそれは本位であり、毎朝明日香の顔を見られるとあって内心では上機嫌に部屋から道具屋までの距離を歩いていた。
「そっか。頑張ってね」
「あぁ。そっちも頑張れよ」
「うん!」
お互いに手を振りあいながら別れると、振り返った明日香は毎回のように微笑ましいものを見るような表情を浮かべている夏希と顔を合わせる。
「夏希ちゃん、また見てたの?」
「はい! だって、明日香さんがとても楽しそうで、羨ましいんですもの!」
明日香と行動を共にするようになってからというもの、夏希の性格は岳人たちと一緒にいた時よりも一段と明るくなっている。
否、これが本来の夏希なのだろうと明日香は思っていた。
夏希は岳人たちからいじめを受けていた。
罵声を浴びせられ、容姿を貶され、事あるごとに面倒事を命令されて、それが上手くできなければさらに罵倒される。酷い時には手が出る事もあった。
離れる事も考えたが、それがきっかけでさらに過激ないじめに発展するのではないかという恐怖を自分の中で作り上げてしまい、作り笑いを浮かべながら耐え続けてきた。
マグノリア王国に召喚されてからは、見知らぬ土地で一人になる恐怖が岳人たちへの恐怖よりも強く、結果としてこちらに来てからも心を殺しながら行動を共にするようになっていた。
明日香も夏希が元気に声を発している姿を見て驚いたものの、すぐに受け入れて今では実の妹のように可愛がっている。
実際のところ、こちらの世界で黒髪は珍しく、二人が姉妹だと言っても疑う者は誰もいないだろう。
「あっ! でも気をつけてくださいね、明日香さん!」
「どうしたの?」
「イーライさんって、イケメン騎士じゃないですか? こういう時のお約束は、彼を狙っていた別の女性が突然やって来て、泥沼に落とされる事なんですからね!」
「ど、泥沼って。いや、でも、あり得ないと思うよ?」
「あり得ますから! それがお約束なんですよ!」
夏希はどこか乙女のような表情を浮かべて何やら語り始めた。
どうやら好きな本やゲームの内容が、寝取り寝取られるようなものばかりだったらしい。
あまりそういった内容のものを見て来なかった明日香としては、ただ苦笑するしか対応を思いつかなかった。
「そ、そろそろ開店だし、中に戻ろうか」
「はっ! そうですね、戻りましょう、明日香さん!」
駆け足で道具屋に戻っていった夏希の背中を見つめながら、明日香は明るくなった彼女の人生がこれから開けるような、そんなイメージを膨らませるのだった。
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