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第一章:勇者召喚、おまけ付き
第44話:ガゼリア山脈の魔獣 8
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直後、前方から大きな爆発と共に熱波と冷気が同時に吹きつけてきた。
「きゃあっ!」
「ウインドローブ!」
明日香の悲鳴を聞いたイーライは、咄嗟に風のローブを顕現させる。
勢いよく吹きつけてきた熱波と冷気は、風のローブに包まれた途端にその温度を柔らかくさせると、ほのかに吹きつける優しい風に一変した。
「……これも、魔法なの?」
「あぁ。ウインドローブ、周囲の気温を遮断し、強くない攻撃なら逸らせてくれる防御魔法だ」
「そうなんだ、ありが……とう……」
熱波も冷気も遮り、吹きつけてきた突風は直撃を避けて周囲に逸れていく。
明日香は驚きと共にイーライに感謝を告げようとしたが、舞い上がった土煙の中に見えた巨大なシルエットに目を奪われてしまう。
すでにイーライもシルエットを視覚しており、それが討伐目標である事を理解していた。
『グルオオオオガアアアアアアアアァァァァッ!!』
そして、大咆哮により発生した衝撃波が土煙を吹き飛ばすと、アースドラゴンの全容が明らかになった。
長大な首に太く分厚い胴体、四肢が力強く大地を踏みしめており、一歩踏み出すたびに地面が陥没していく。
足が短く胴体が太いので腹を地面に引きずっており、通って来ただろう山道はひたすらに長く跡が続いている。
空を飛ぶ事ができないのだろうか、背中から翼は生えているものの所々に穴が開いており、ボロボロになっている。騎士団の攻撃でこうなったのか、元々がこうなのか、明日香に分かるはずもない――はずだった。
「……空は、飛べないんですね」
「……分かるのか?」
「うん。メガネが、教えてくれるの」
アースドラゴンの全容を視界に捉えてからというもの、様々な情報がメガネの中に映し出されていく。
その中には次に何をするのかという項目もあり、その内容を見た明日香は咄嗟に声をあげた。
「尻尾の攻撃が来る!」
「りゅ、竜尾攻撃に備えろ!」
明日香の言葉をイーライがより大きな声で飛ばすと、騎士たちは反射的に大きく飛び退く。
直後、先ほどまで多くの騎士が立っていた場所に太く重い竜尾が振り下ろされた。
竜尾が降って来た部分が大きく陥没しており、あまりの衝撃に周囲の崖が崩れて大きな岩が転げ落ちてくる。
アースドラゴンの挙動を見てから回避行動に移っていた騎士たちにとっては毎回が死と隣り合わせの状況なのだが、今回は動きを見せる前に指示が飛んできた。
何が起きたのか理解できず、戦闘中であるにもかかわらず多くの騎士がイーライの方に顔を向けていた。
「まだ戦闘中だぞ! よそ見をするな!」
「「「「は、はい!」」」」
そこにダルトの檄が飛ぶと戦闘を再開させる。
この様子を離れたところから見ていたリヒトは、魔法を放ちながら二人の下へ駆けつけた。
「イーライ! 今のはアスカ様が?」
「バーグマン様! はい、アスカのメガネには、まだ隠された能力があったようです」
「アースドラゴンが次に何をしてくるのかが分かります。アル様にも許可を取っているので、何も言わないでくださいね」
「……言いませんよ。では、アスカ様の言葉をイーライが変わって騎士団に伝えてください」
「はっ!」
「……あの、リヒト様? 岳人君たちが見当たらないんですが?」
最前線までやって来て初めて気づいたのだが、勝手に飛び出して事態を悪化させた岳人たちの姿が見当たらなかった。
まさか、すでに殺されてしまったのか、食べられてしまったのか。最悪の事態を想像してしまった明日香だったが、そうではなかった。
むしろ、場合によっては死んでいた事よりも最悪の事実がリヒトの口から告げられる。
「勇者様方は……逃げました」
「……へ?」
「なあっ!? あ、あり得ない! ここまで事態を引っ搔き回しておいて、逃げただと!」
「最初は我々と一緒になって……いや、あれを一緒にと言ってはいけませんか。合流したものの、勇者様方は勝手に戦闘を開始して、自分たちの攻撃が通用しないと見るや、この場から逃げ出してしまったのです」
歯噛みしながら伝えられた事実にイーライは憤りを露わにする。
今も目の前で多くの騎士がアースドラゴンと戦っており、中には傷を負い血を流しながら戦っている者も少なくはない。
「アースドラゴンに対処するのは当然ですが、勇者様方の保護も必要だと騎士が数名駆り出される事にもなってしまって……」
「あ、あり得ないわ!」
疲労困憊といった様子でリヒトがそう口にすると、明日香は堪っていたイライラが爆発したかのように大声をあげていた。
「ふざけるんじゃないわよ! こっちは巻き込まれただけなのに、年増だとか、存在が不愉快だとか言われてもあんたらを信じていたのよ? 助けようとしたのよ? それなのに、逃げたですって? アル様やリヒト様を巻き込んでおいて? マジであり得ないわ!」
「……ア、アスカ?」
「……落ち着いてください、アスカ様?」
「イーライ! 指示は私が出すから、あなたも前に行きなさい!」
「「はああぁぁぁぁっ!?」」
まさかの発言に二人は慌てて止めようとしたのだが、明日香は全く聞く耳を持たなかった。
「きゃあっ!」
「ウインドローブ!」
明日香の悲鳴を聞いたイーライは、咄嗟に風のローブを顕現させる。
勢いよく吹きつけてきた熱波と冷気は、風のローブに包まれた途端にその温度を柔らかくさせると、ほのかに吹きつける優しい風に一変した。
「……これも、魔法なの?」
「あぁ。ウインドローブ、周囲の気温を遮断し、強くない攻撃なら逸らせてくれる防御魔法だ」
「そうなんだ、ありが……とう……」
熱波も冷気も遮り、吹きつけてきた突風は直撃を避けて周囲に逸れていく。
明日香は驚きと共にイーライに感謝を告げようとしたが、舞い上がった土煙の中に見えた巨大なシルエットに目を奪われてしまう。
すでにイーライもシルエットを視覚しており、それが討伐目標である事を理解していた。
『グルオオオオガアアアアアアアアァァァァッ!!』
そして、大咆哮により発生した衝撃波が土煙を吹き飛ばすと、アースドラゴンの全容が明らかになった。
長大な首に太く分厚い胴体、四肢が力強く大地を踏みしめており、一歩踏み出すたびに地面が陥没していく。
足が短く胴体が太いので腹を地面に引きずっており、通って来ただろう山道はひたすらに長く跡が続いている。
空を飛ぶ事ができないのだろうか、背中から翼は生えているものの所々に穴が開いており、ボロボロになっている。騎士団の攻撃でこうなったのか、元々がこうなのか、明日香に分かるはずもない――はずだった。
「……空は、飛べないんですね」
「……分かるのか?」
「うん。メガネが、教えてくれるの」
アースドラゴンの全容を視界に捉えてからというもの、様々な情報がメガネの中に映し出されていく。
その中には次に何をするのかという項目もあり、その内容を見た明日香は咄嗟に声をあげた。
「尻尾の攻撃が来る!」
「りゅ、竜尾攻撃に備えろ!」
明日香の言葉をイーライがより大きな声で飛ばすと、騎士たちは反射的に大きく飛び退く。
直後、先ほどまで多くの騎士が立っていた場所に太く重い竜尾が振り下ろされた。
竜尾が降って来た部分が大きく陥没しており、あまりの衝撃に周囲の崖が崩れて大きな岩が転げ落ちてくる。
アースドラゴンの挙動を見てから回避行動に移っていた騎士たちにとっては毎回が死と隣り合わせの状況なのだが、今回は動きを見せる前に指示が飛んできた。
何が起きたのか理解できず、戦闘中であるにもかかわらず多くの騎士がイーライの方に顔を向けていた。
「まだ戦闘中だぞ! よそ見をするな!」
「「「「は、はい!」」」」
そこにダルトの檄が飛ぶと戦闘を再開させる。
この様子を離れたところから見ていたリヒトは、魔法を放ちながら二人の下へ駆けつけた。
「イーライ! 今のはアスカ様が?」
「バーグマン様! はい、アスカのメガネには、まだ隠された能力があったようです」
「アースドラゴンが次に何をしてくるのかが分かります。アル様にも許可を取っているので、何も言わないでくださいね」
「……言いませんよ。では、アスカ様の言葉をイーライが変わって騎士団に伝えてください」
「はっ!」
「……あの、リヒト様? 岳人君たちが見当たらないんですが?」
最前線までやって来て初めて気づいたのだが、勝手に飛び出して事態を悪化させた岳人たちの姿が見当たらなかった。
まさか、すでに殺されてしまったのか、食べられてしまったのか。最悪の事態を想像してしまった明日香だったが、そうではなかった。
むしろ、場合によっては死んでいた事よりも最悪の事実がリヒトの口から告げられる。
「勇者様方は……逃げました」
「……へ?」
「なあっ!? あ、あり得ない! ここまで事態を引っ搔き回しておいて、逃げただと!」
「最初は我々と一緒になって……いや、あれを一緒にと言ってはいけませんか。合流したものの、勇者様方は勝手に戦闘を開始して、自分たちの攻撃が通用しないと見るや、この場から逃げ出してしまったのです」
歯噛みしながら伝えられた事実にイーライは憤りを露わにする。
今も目の前で多くの騎士がアースドラゴンと戦っており、中には傷を負い血を流しながら戦っている者も少なくはない。
「アースドラゴンに対処するのは当然ですが、勇者様方の保護も必要だと騎士が数名駆り出される事にもなってしまって……」
「あ、あり得ないわ!」
疲労困憊といった様子でリヒトがそう口にすると、明日香は堪っていたイライラが爆発したかのように大声をあげていた。
「ふざけるんじゃないわよ! こっちは巻き込まれただけなのに、年増だとか、存在が不愉快だとか言われてもあんたらを信じていたのよ? 助けようとしたのよ? それなのに、逃げたですって? アル様やリヒト様を巻き込んでおいて? マジであり得ないわ!」
「……ア、アスカ?」
「……落ち着いてください、アスカ様?」
「イーライ! 指示は私が出すから、あなたも前に行きなさい!」
「「はああぁぁぁぁっ!?」」
まさかの発言に二人は慌てて止めようとしたのだが、明日香は全く聞く耳を持たなかった。
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