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魔法競技会

慰労会

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 慰労会の場所は城の一階に造られたとてつもなく広いホールで行われた。
 ラヴァールとの謁見に参加していなかった冒険者もここには呼ばれており、結構な人数になっているのだがそれでも余裕がある。
 食事の仕方にも工夫がなされており、食事の作法など知らない冒険者のために立食形式をとっていて、さらに料理も壁際のテーブルにズラリと並べられており自由に皿へ盛る事ができる。
 ラヴァールが無礼講だと言った事もあり、食べ方が汚かったとしても誰も指摘はしなかった。

「……なんだか、凄い光景だなぁ」
「でも中には食べ方が綺麗な冒険者もいるわね」
「僕たちみたいな元貴族の冒険者じゃないかな~」

 アルもそうだが、ジャミールも貴族出身者である。
 生まれた順番が遅いというだけで当主になる事ができない運命となり、以降は長男を支えるため家に残るか、家を出て自ら仕事を見つけるか。
 多くの貴族家が子息を魔法学園に通わせる事もあり、また誰かの下に着く事を良しとしない者も多くいたりするので、家を出た多くの子息は冒険者になるのが大半だ。

「最初は先輩冒険者とぶつかる事が多いみたいだよ~」
「そうなのか?」
「まあ、家を出たとしても貴族として生活してた癖が抜けないんだよね~。それが平民出の冒険者にはイラつくんだと思うよ~」
「そういう先輩はどうなんですか?」
「僕は別に貴族じゃなくなっても構わないからね~。冒険者として生きていくつもりで人生過ごしてたから問題ないかな~」

 随分と達観した言い方にアルとシエラが苦笑していると、そこへレイリアがやって来た。

「……お邪魔してもいい?」
「あぁ、構わないよ」
「僕も問題ないよ~」
「……」
「……シエラ?」
「……まあ、いいんじゃない」

 シエラとレイリアは少なからずやり合った過去を持つ。
 とはいえ、それもキリアンの介入により収まったのだが当人たちがどう思っているかは分からなかった。

「……あの」
「今回は助かったわ。ありがとう、レイリア」
「――! ……うん、ありがとう」

 二人のやり取りを見たアルはホッと胸を撫で下ろし、そして良い友人になれるだろうと確信を得ていた。

「なあ、レイリア。お前、これからも魔法学園に通うんだよな?」
「そうだよ?」
「ヴォックスたちから嫌がらせとかされてないか?」

 アルが心配しているのはレイリアの今後である。
 レイリアが通っているのはアルたちとは違いカーザリア魔法学園であり、そこには彼女を冷遇していたヴォックスたちが通っている。
 ヴォックスは上級貴族であり実質カーザリア魔法学園を支配しているはずだとアルは考えていた。

「どうかな……学園が始まってみないと分からないかも」
「今まではどうだったの?」
「それは……まあ、あからさまに嫌がらせは受けているかな」
「やっぱりか」

 アルたちが腕組みをして考え込んだ姿を見て、レイリアは申し訳なさそうに口を開く。

「で、でも、個人部門では準優勝できたし、学園が守ってくれる可能性も――」
「それはないかな~」
「え?」

 レイリアの意見を完全否定したのはジャミールである。

「腐った貴族はどんな状況になっても腐ったままなんだよね~。平民には上から目線でマウントを取ってくるし、実力的に相手が強いなら貴族の力を持って捻る潰す事もあるんだよね~」
「貴族の、力……」

 ジャミールの言葉には重みがある。彼自身も本来ならカーザリア魔法学園に通っていてもおかしくはない立場の貴族なのだから。

「……ねえ、先輩」
「何かな~、シエラちゃん?」
「レイリアを転園させる事はできないの?」
「「……転園?」」

 シエラの言葉を受けて、それならレイリアを守れるとアルも思ってしまった。

「ユージュラッドに来てくれるなら、俺から父上に口利きしてもいいぞ? 学園長とも知り合いだしな」
「いや~。学園長が相手ならアル君が直接口利きした方が聞いてくれそうだけどね~」
「その件に関しては先輩に同意」
「そうか? なら聞いてみるか。この会場にも来ているんだろう?」
「えぇ。引率者として来ているわ」
「あ、あの、みんな? その、こっちで話をするだけだと意味がないと思うんだけど? ど、どこに行くの?」

 勝手に話を進める三人に困惑した声を漏らすレイリアだったが、アルたちは気にする事なく歩き出した。
 今回の功労者であるアルたちが動いた事で会場では少しだけ視線が集まったものの、特に何かをするわけではないと気づいた者から食事や歓談に戻っていく。
 しばらくして目的の人物を見つけたアルは早速声を掛けた。
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