83 / 361
魔法学園
二度目のダンジョンへ
しおりを挟む
翌日は学園に到着するとすぐにダンジョンへと向かった。
エルクとクルルがなぜだか教室を早く出たいと言ったためなのだが、それにも理由があったらしい。
「ゾランと取り巻きがめっちゃ睨んでくるんだよなぁ」
「そうそう、あいつら絶対にアルのことを待ってたわよ」
リリーナの意見に関してはアルも同意だった。
というのも、アルが教室に姿を見せた途端に取り巻きがあわただしく動き出す。
ゾランも立ち上がりアルへ近づこうとしていたところで、二人がダンジョンに行こうと先手を打ったのだ。
「あれには助かったよ。これ以上ゾランに関わるのは面倒だなって思ってたからな」
それに元々ダンジョンに行く予定だったのだから、早くに潜った方が成果は上げられるので良いことしかないのだ。
「それじゃあ行くか」
アルの合図に合わせ、エルクたちを先頭にダンジョンへと潜って行った。
※※※※
──一方、教室では。
「あいつら、俺様にまたなめた真似をしやがって!」
「どうしますか、ゾラン様」
「俺たちもダンジョンに行きますか?」
ゾランたちもダンジョンに潜る予定ではある。
しかし予定していた道具が手に入っていないこともあり一日先延ばしにしようかと考えていたところだった。
そのことをゾランは取り巻きに伝えてはいない。自分だけが知っていればいいと思っていたからだ。
「……そうだな。あいつらよりも下の階層に行って、俺様の方が優れているというところを見せつけてやる」
結局、ゾランは自分のプライドを守ることを優先させた。
この決定が、自分たちを危険に晒すことを知らずに。
※※※※
──さらに別のところ、ダンジョンの七階層。
そこにはガルボ率いるパーティが力任せに攻略を推し進めていた。
「ちょっと、ガルボ! あんた、急ぎ過ぎだよ!」
「そうですよ! ちょっと足を止めてください!」
「うるさい! 俺はあいつに負けるわけにはいかないんだ。こうなったら、キリアン兄上の記録を抜いて、ダンジョン攻略の新記録を打ち立ててやる!」
アルたちが二日掛けて到着した七階層に、ガルボのパーティは午前中だけで到着していた。
これには理由があり、下層につながる階段までのルートをマッピング済み、さらにモンスターを無視して突き進んだ結果なのだ。
「キリアン様の記録は卒業時点で二三階層。僕たちの現時点での最高記録は一二階層。絶対に届くわけないんですよ」
「そんなわけあるか! 俺たちなら、俺なら絶対にキリアン兄上を超えられる!」
パーティの中で唯一の援護担当、一番冷静に状況を判断できる眼鏡を掛けた男性──フォルト・ハッシュバーグがガルボを諫めようとするが、話を聞こうとはしない。
「ったく、あんたのせいで服がボロボロなんですけどー」
「群がってくるザコモンスターに絡まれるからだろうが!」
攻撃担当で赤髪の女性──フレイア・ミリオンが破れた服を指差しながら皮肉を口にするが、それでもガルボは聞く耳を持とうとはしない。
「全く、弟君が優秀な成績を修めたからと言って、あなたが焦る必要はどこにもないでしょう」
「そうよー。っていうか、Fクラスで七階層まで行ったとか、むしろ褒めてあげるべきじゃないの?」
「どうして俺があいつを褒めないといけないんだ! あいつにだけは、負けられないんだよ!」
こぶしを握りしめ、ガルボは八階層へと進む階段を目の前にする。
そんな背中を見た二人は顔を見合わせて肩を竦めていた。
「俺は、絶対に……ん、なんだこれは?」
「どうしたの、ガルボ?」
「何かあったのですか?」
ガルボの様子に二人が近づくと、足元に謎の木像が転がっていた。
「「……なんだこれ?」」
「……もしかしたら、アルの奴が落としたのか?」
謎の木像を拾い上げたガルボはそれを力任せ握りしめ、そして──
「こんなもの!」
「「あっ」」
ガルボは渾身の力で森の奥に投げ捨ててしまった。
「あーあー、よかったの、ガルボー。あれって、なんかの神像みたいじゃなかった?」
「知らん」
「誰かの落しものなら、分かりやすい場所に置いておくのがルールじゃないのか?」
「そんなルールを守っている奴なんて見たことないぞ。……とりあえず、俺たちはさっさと次の階層に行くぞ!」
「「はいはい」」
ガルボは身勝手な性格だ。それは同学年の誰もが知っている。
しかし、この二人は──一年次からパーティを組んでガルボのことをよく知っているフォルトとフレイヤだけは、そんなガルボを見捨てようとはしなかった。
それは、ガルボが本当は心優しい人だと知っているから。
「全く、なんでこうまでして弟のためにいい成績を出そうとするのか理解できんな」
「それで仲が悪くなっていたら元も子もないんだけどねー」
「俺は自分のためにやっているんだ! アルのためにとか、そんなわけあるか!」
ガルボの想いにアルが気づくのは、もう少し先のことである。
エルクとクルルがなぜだか教室を早く出たいと言ったためなのだが、それにも理由があったらしい。
「ゾランと取り巻きがめっちゃ睨んでくるんだよなぁ」
「そうそう、あいつら絶対にアルのことを待ってたわよ」
リリーナの意見に関してはアルも同意だった。
というのも、アルが教室に姿を見せた途端に取り巻きがあわただしく動き出す。
ゾランも立ち上がりアルへ近づこうとしていたところで、二人がダンジョンに行こうと先手を打ったのだ。
「あれには助かったよ。これ以上ゾランに関わるのは面倒だなって思ってたからな」
それに元々ダンジョンに行く予定だったのだから、早くに潜った方が成果は上げられるので良いことしかないのだ。
「それじゃあ行くか」
アルの合図に合わせ、エルクたちを先頭にダンジョンへと潜って行った。
※※※※
──一方、教室では。
「あいつら、俺様にまたなめた真似をしやがって!」
「どうしますか、ゾラン様」
「俺たちもダンジョンに行きますか?」
ゾランたちもダンジョンに潜る予定ではある。
しかし予定していた道具が手に入っていないこともあり一日先延ばしにしようかと考えていたところだった。
そのことをゾランは取り巻きに伝えてはいない。自分だけが知っていればいいと思っていたからだ。
「……そうだな。あいつらよりも下の階層に行って、俺様の方が優れているというところを見せつけてやる」
結局、ゾランは自分のプライドを守ることを優先させた。
この決定が、自分たちを危険に晒すことを知らずに。
※※※※
──さらに別のところ、ダンジョンの七階層。
そこにはガルボ率いるパーティが力任せに攻略を推し進めていた。
「ちょっと、ガルボ! あんた、急ぎ過ぎだよ!」
「そうですよ! ちょっと足を止めてください!」
「うるさい! 俺はあいつに負けるわけにはいかないんだ。こうなったら、キリアン兄上の記録を抜いて、ダンジョン攻略の新記録を打ち立ててやる!」
アルたちが二日掛けて到着した七階層に、ガルボのパーティは午前中だけで到着していた。
これには理由があり、下層につながる階段までのルートをマッピング済み、さらにモンスターを無視して突き進んだ結果なのだ。
「キリアン様の記録は卒業時点で二三階層。僕たちの現時点での最高記録は一二階層。絶対に届くわけないんですよ」
「そんなわけあるか! 俺たちなら、俺なら絶対にキリアン兄上を超えられる!」
パーティの中で唯一の援護担当、一番冷静に状況を判断できる眼鏡を掛けた男性──フォルト・ハッシュバーグがガルボを諫めようとするが、話を聞こうとはしない。
「ったく、あんたのせいで服がボロボロなんですけどー」
「群がってくるザコモンスターに絡まれるからだろうが!」
攻撃担当で赤髪の女性──フレイア・ミリオンが破れた服を指差しながら皮肉を口にするが、それでもガルボは聞く耳を持とうとはしない。
「全く、弟君が優秀な成績を修めたからと言って、あなたが焦る必要はどこにもないでしょう」
「そうよー。っていうか、Fクラスで七階層まで行ったとか、むしろ褒めてあげるべきじゃないの?」
「どうして俺があいつを褒めないといけないんだ! あいつにだけは、負けられないんだよ!」
こぶしを握りしめ、ガルボは八階層へと進む階段を目の前にする。
そんな背中を見た二人は顔を見合わせて肩を竦めていた。
「俺は、絶対に……ん、なんだこれは?」
「どうしたの、ガルボ?」
「何かあったのですか?」
ガルボの様子に二人が近づくと、足元に謎の木像が転がっていた。
「「……なんだこれ?」」
「……もしかしたら、アルの奴が落としたのか?」
謎の木像を拾い上げたガルボはそれを力任せ握りしめ、そして──
「こんなもの!」
「「あっ」」
ガルボは渾身の力で森の奥に投げ捨ててしまった。
「あーあー、よかったの、ガルボー。あれって、なんかの神像みたいじゃなかった?」
「知らん」
「誰かの落しものなら、分かりやすい場所に置いておくのがルールじゃないのか?」
「そんなルールを守っている奴なんて見たことないぞ。……とりあえず、俺たちはさっさと次の階層に行くぞ!」
「「はいはい」」
ガルボは身勝手な性格だ。それは同学年の誰もが知っている。
しかし、この二人は──一年次からパーティを組んでガルボのことをよく知っているフォルトとフレイヤだけは、そんなガルボを見捨てようとはしなかった。
それは、ガルボが本当は心優しい人だと知っているから。
「全く、なんでこうまでして弟のためにいい成績を出そうとするのか理解できんな」
「それで仲が悪くなっていたら元も子もないんだけどねー」
「俺は自分のためにやっているんだ! アルのためにとか、そんなわけあるか!」
ガルボの想いにアルが気づくのは、もう少し先のことである。
0
お気に入りに追加
353
あなたにおすすめの小説
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話
菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。
そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。
超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。
極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。
生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!?
これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。
異世界へ全てを持っていく少年- 快適なモンスターハントのはずが、いつの間にか勇者に取り込まれそうな感じです。この先どうなるの?
初老の妄想
ファンタジー
17歳で死んだ俺は、神と名乗るものから「なんでも願いを一つかなえてやる」そして「望む世界に行かせてやる」と言われた。
俺の願いはシンプルだった『現世の全てを入れたストレージをくれ』、タダそれだけだ。
神は喜んで(?)俺の願いをかなえてくれた。
希望した世界は魔法があるモンスターだらけの異世界だ。
そう、俺の夢は銃でモンスターを狩ることだったから。
俺の旅は始まったところだが、この異世界には希望通り魔法とモンスターが溢れていた。
予定通り、バンバン撃ちまくっている・・・
だが、俺の希望とは違って勇者もいるらしい、それに魔竜というやつも・・・
いつの間にか、おれは魔竜退治と言うものに取り込まれているようだ。
神にそんな事を頼んだ覚えは無いが、勇者は要らないと言っていなかった俺のミスだろう。
それでも、一緒に居るちっこい美少女や、美人エルフとの旅は楽しくなって来ていた。
この先も何が起こるかはわからないのだが、楽しくやれそうな気もしている。
なんと言っても、おれはこの世の全てを持って来たのだからな。
きっと、楽しくなるだろう。
※異世界で物語が展開します。現世の常識は適用されません。
※残酷なシーンが普通に出てきます。
※魔法はありますが、主人公以外にスキル(?)は出てきません。
※ステータス画面とLvも出てきません。
※現代兵器なども妄想で書いていますのでスペックは想像です。
【古代召喚魔法】を悪霊だとよばれ魔法学園を追放されました。でもエルフの王女に溺愛されて幸せです。だから邪魔する奴らは排除していいよね?
里海慧
ファンタジー
「レオ・グライス。君は呪いの悪霊を呼び寄せ、危険極まりない! よって本日をもって退学に処す!!」
最終学年に上がったところで、魔法学園を退学になったレオ。
この世界では魔物が跋扈しており、危険から身を守るために魔法が発達している。
だが魔法が全く使えない者は、呪われた存在として忌み嫌われていた。
魔法が使えないレオは貴族だけが通う魔法学園で、はるか昔に失われた【古代召喚魔法】を必死に習得した。
しかし召喚魔法を見せても呪いの悪霊だと誤解され、危険人物と認定されてしまう。
学園を退学になり、家族からも見捨てられ居場所がなくなったレオは、ひとりで生きていく事を決意。
森の奥深くでエルフの王女シェリルを助けるが、深い傷を負ってしまう。だがシェリルに介抱されるうちに心を救われ、王女の護衛として雇ってもらう。
そしてシェリルの次期女王になるための試練をクリアするべく、お互いに想いを寄せながら、二人は外の世界へと飛び出していくのだった。
一方レオを追い出した者たちは、次期女王の試練で人間界にやってきたシェリルに何とか取り入ろうとする。
そして邪魔なレオを排除しようと画策するが、悪事は暴かれて一気に転落していくのだった。
※きゅんきゅんするハイファンタジー、きゅんファン目指してます。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う
馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない
そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!?
そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!?
農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!?
10個も願いがかなえられるらしい!
だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ
異世界なら何でもありでしょ?
ならのんびり生きたいな
小説家になろう!にも掲載しています
何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる