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魔法学園

二度目のダンジョンへ

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 翌日は学園に到着するとすぐにダンジョンへと向かった。
 エルクとクルルがなぜだか教室を早く出たいと言ったためなのだが、それにも理由があったらしい。

「ゾランと取り巻きがめっちゃ睨んでくるんだよなぁ」
「そうそう、あいつら絶対にアルのことを待ってたわよ」

 リリーナの意見に関してはアルも同意だった。
 というのも、アルが教室に姿を見せた途端に取り巻きがあわただしく動き出す。
 ゾランも立ち上がりアルへ近づこうとしていたところで、二人がダンジョンに行こうと先手を打ったのだ。

「あれには助かったよ。これ以上ゾランに関わるのは面倒だなって思ってたからな」

 それに元々ダンジョンに行く予定だったのだから、早くに潜った方が成果は上げられるので良いことしかないのだ。

「それじゃあ行くか」

 アルの合図に合わせ、エルクたちを先頭にダンジョンへと潜って行った。

 ※※※※

 ──一方、教室では。

「あいつら、俺様にまたなめた真似をしやがって!」
「どうしますか、ゾラン様」
「俺たちもダンジョンに行きますか?」

 ゾランたちもダンジョンに潜る予定ではある。
 しかし予定していた道具が手に入っていないこともあり一日先延ばしにしようかと考えていたところだった。
 そのことをゾランは取り巻きに伝えてはいない。自分だけが知っていればいいと思っていたからだ。

「……そうだな。あいつらよりも下の階層に行って、俺様の方が優れているというところを見せつけてやる」

 結局、ゾランは自分のプライドを守ることを優先させた。
 この決定が、自分たちを危険に晒すことを知らずに。

 ※※※※

 ──さらに別のところ、ダンジョンの七階層。
 そこにはガルボ率いるパーティが力任せに攻略を推し進めていた。

「ちょっと、ガルボ! あんた、急ぎ過ぎだよ!」
「そうですよ! ちょっと足を止めてください!」
「うるさい! 俺はあいつに負けるわけにはいかないんだ。こうなったら、キリアン兄上の記録を抜いて、ダンジョン攻略の新記録を打ち立ててやる!」

 アルたちが二日掛けて到着した七階層に、ガルボのパーティは午前中だけで到着していた。
 これには理由があり、下層につながる階段までのルートをマッピング済み、さらにモンスターを無視して突き進んだ結果なのだ。

「キリアン様の記録は卒業時点で二三階層。僕たちの現時点での最高記録は一二階層。絶対に届くわけないんですよ」
「そんなわけあるか! 俺たちなら、俺なら絶対にキリアン兄上を超えられる!」

 パーティの中で唯一の援護担当、一番冷静に状況を判断できる眼鏡を掛けた男性──フォルト・ハッシュバーグがガルボを諫めようとするが、話を聞こうとはしない。

「ったく、あんたのせいで服がボロボロなんですけどー」
「群がってくるザコモンスターに絡まれるからだろうが!」

 攻撃担当で赤髪の女性──フレイア・ミリオンが破れた服を指差しながら皮肉を口にするが、それでもガルボは聞く耳を持とうとはしない。

「全く、弟君が優秀な成績を修めたからと言って、あなたが焦る必要はどこにもないでしょう」
「そうよー。っていうか、Fクラスで七階層まで行ったとか、むしろ褒めてあげるべきじゃないの?」
「どうして俺があいつを褒めないといけないんだ! あいつにだけは、負けられないんだよ!」

 こぶしを握りしめ、ガルボは八階層へと進む階段を目の前にする。
 そんな背中を見た二人は顔を見合わせて肩を竦めていた。

「俺は、絶対に……ん、なんだこれは?」
「どうしたの、ガルボ?」
「何かあったのですか?」

 ガルボの様子に二人が近づくと、足元に謎の木像が転がっていた。

「「……なんだこれ?」」
「……もしかしたら、アルの奴が落としたのか?」

 謎の木像を拾い上げたガルボはそれを力任せ握りしめ、そして──

「こんなもの!」
「「あっ」」

 ガルボは渾身の力で森の奥に投げ捨ててしまった。

「あーあー、よかったの、ガルボー。あれって、なんかの神像みたいじゃなかった?」
「知らん」
「誰かの落しものなら、分かりやすい場所に置いておくのがルールじゃないのか?」
「そんなルールを守っている奴なんて見たことないぞ。……とりあえず、俺たちはさっさと次の階層に行くぞ!」
「「はいはい」」

 ガルボは身勝手な性格だ。それは同学年の誰もが知っている。
 しかし、この二人は──一年次からパーティを組んでガルボのことをよく知っているフォルトとフレイヤだけは、そんなガルボを見捨てようとはしなかった。
 それは、ガルボが本当は心優しい人だと知っているから。

「全く、なんでこうまでして弟のためにいい成績を出そうとするのか理解できんな」
「それで仲が悪くなっていたら元も子もないんだけどねー」
「俺は自分のためにやっているんだ! アルのためにとか、そんなわけあるか!」

 ガルボの想いにアルが気づくのは、もう少し先のことである。
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