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第二章:自由と束縛と
第80話:冒険者アリシア 5
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冒険者ギルドは宿屋を出て五分ほど歩いた場所に位置している。
頑強な石造りの建物は威風堂々としており、ここだけが周囲の華やかな建物とは一線を画していた。
「王都では冒険者ギルドの前を通ることはあったが、ここはどうにも活気がないなぁ」
「魔導都市ですから、魔導士ギルドに人が多くいるんじゃないですか?」
「その可能性は高いわね。でもまあ、私たちは魔導士ではないし、やっぱり冒険者ギルドへ登録するべきよね」
アリシアはそう口にしたものの、二人の視線はそれを否定するものだった。
「……お前は魔法が使えるだろうが」
「……それも、とびっきりすごい魔法が!」
「はいはい。お世辞はいいから、さっさと冒険者ギルドに登録しましょう」
手をひらひらと振りながら歩き出したアリシアを追って、ゼーアとケイナも冒険者ギルドへ足を踏み入れる。
ギルド内は通りとは違い多くの人がひしめき合っていた。
依頼版にはいくつもの依頼書が張られており、冒険者たちは依頼を吟味して依頼書を剥がしていく。
とはいえ、あくまでもギルド内に多くの人がいるというだけで、その規模は王都の冒険者ギルドとは比較にならない。あちらでは依頼書を吟味する時間もごくわずかで、そうでなければ先に依頼を取られてしまうほど多くの冒険者が活動しているのだ。
「比べるもんじゃねえが、やっぱり少ねぇなぁ」
「アリシア様は魔導士ギルドに登録した方がいいんじゃないですか?」
「私だけ仲間外れにするつもりなの?」
「そ、そんなことは!」
「だったら登録しちゃいましょう。登録カウンターは……うん、あっちだね」
左奥のカウンターへ歩き出したアリシアたちは、暇そうにあくびをしていた受付嬢に声を掛けた。
「あの、すみませーん」
「ふああぁぁ。……ふえ?」
「冒険者登録をしたいんですけど」
「……登録? …………ええええぇぇええぇぇ!? と、登録ですか! ぼ、冒険者ギルドでええええぇぇっ!!」
受付嬢の悲鳴にも似た大声を聞いて、ギルド内にいた冒険者たちの視線がこちらに集まってきた。
どうしてそこまで驚かれてしまったか理解できず、アリシアたちは困惑してしまう。
「あぁ、申し訳ございません! しょ、少々お待ちを! えぇっと、書類はどこだっけ~?」
バタバタと動き出した受付嬢は、引き出しを何度も開け閉めしながら書類を取り出すと、額に汗を浮かべながらニコリとほほ笑んだ。
「えっと、その……こ、こちらにお名前、年齢、性別、扱う武器の記載をお願いいたします!」
「……は、はぁ」
アリシアたちは顔を見合わせ、困惑したままだが言われた通りに書類を記入していこうとしたが、名前を書いた時点でゼーアとケイナの手が止まったままだ。
「あれ? どうしたの?」
「えっと、その……」
「あー、俺たちは奴隷同然の扱いを受けてきたからなぁ。読むことはなんとかできるんだが、名前以外は書くことができねえんだ」
「あっ! し、失礼しました! 冒険者になる方にはそういう方も結構多いんです。なので、代筆も承っていますよ!」
説明がところどころ抜けていることにどうにも信用に欠けるなとアリシアは思い、代筆は遠慮することにした。
「いえ、大丈夫です。二人とも、私が書いてもいいかしら?」
「も、申し訳ございません、アリシア様」
「俺らも文字を学ばないといけないかねぇ」
「無理にとは言わないけど、少しでも書けるようになっていけば、読みの方もはるかに楽になるから、時間があればやってみてもいいかもね」
そんな会話をしながらも、アリシアは手を止めることなく自分の書類、ゼーア、ケイナの書類と記入を進めていく。
そのまま受付嬢に書類を提出すると、彼女は不備がないことを確認すると、机の一番下にある大きな引き出しから無色透明の水晶を取り出してカウンターに置き、一度席を立つとカウンター裏の一番奥にある金庫から三つの銅色のバッジを手に戻ってきた。
「それでは最後に、こちらのバッジへ記載いただいた内容を登録させていただきますね」
そう口にした受付嬢は書類に重ねるようバッジを置き、水晶を書類とバッジの上部に置いた。
「まずはアリシアさんから水晶に両手を置いてください」
「わかりました」
内心でドキドキしながら、アリシアは両手を水晶に置いた。
すると、水晶から光が放たれると、その光は書類とバッジに収束していく。
しばらくして光が消えると、受付嬢はバッジを手に取りアリシアへ差し出した。
「こちらで登録は完了です。細かな説明はゼーアさん、ケイナさんの登録を終えてからいたしますね」
このままゼーアとケイナの登録も終えて、アリシアたちは晴れて冒険者になったのだった。
頑強な石造りの建物は威風堂々としており、ここだけが周囲の華やかな建物とは一線を画していた。
「王都では冒険者ギルドの前を通ることはあったが、ここはどうにも活気がないなぁ」
「魔導都市ですから、魔導士ギルドに人が多くいるんじゃないですか?」
「その可能性は高いわね。でもまあ、私たちは魔導士ではないし、やっぱり冒険者ギルドへ登録するべきよね」
アリシアはそう口にしたものの、二人の視線はそれを否定するものだった。
「……お前は魔法が使えるだろうが」
「……それも、とびっきりすごい魔法が!」
「はいはい。お世辞はいいから、さっさと冒険者ギルドに登録しましょう」
手をひらひらと振りながら歩き出したアリシアを追って、ゼーアとケイナも冒険者ギルドへ足を踏み入れる。
ギルド内は通りとは違い多くの人がひしめき合っていた。
依頼版にはいくつもの依頼書が張られており、冒険者たちは依頼を吟味して依頼書を剥がしていく。
とはいえ、あくまでもギルド内に多くの人がいるというだけで、その規模は王都の冒険者ギルドとは比較にならない。あちらでは依頼書を吟味する時間もごくわずかで、そうでなければ先に依頼を取られてしまうほど多くの冒険者が活動しているのだ。
「比べるもんじゃねえが、やっぱり少ねぇなぁ」
「アリシア様は魔導士ギルドに登録した方がいいんじゃないですか?」
「私だけ仲間外れにするつもりなの?」
「そ、そんなことは!」
「だったら登録しちゃいましょう。登録カウンターは……うん、あっちだね」
左奥のカウンターへ歩き出したアリシアたちは、暇そうにあくびをしていた受付嬢に声を掛けた。
「あの、すみませーん」
「ふああぁぁ。……ふえ?」
「冒険者登録をしたいんですけど」
「……登録? …………ええええぇぇええぇぇ!? と、登録ですか! ぼ、冒険者ギルドでええええぇぇっ!!」
受付嬢の悲鳴にも似た大声を聞いて、ギルド内にいた冒険者たちの視線がこちらに集まってきた。
どうしてそこまで驚かれてしまったか理解できず、アリシアたちは困惑してしまう。
「あぁ、申し訳ございません! しょ、少々お待ちを! えぇっと、書類はどこだっけ~?」
バタバタと動き出した受付嬢は、引き出しを何度も開け閉めしながら書類を取り出すと、額に汗を浮かべながらニコリとほほ笑んだ。
「えっと、その……こ、こちらにお名前、年齢、性別、扱う武器の記載をお願いいたします!」
「……は、はぁ」
アリシアたちは顔を見合わせ、困惑したままだが言われた通りに書類を記入していこうとしたが、名前を書いた時点でゼーアとケイナの手が止まったままだ。
「あれ? どうしたの?」
「えっと、その……」
「あー、俺たちは奴隷同然の扱いを受けてきたからなぁ。読むことはなんとかできるんだが、名前以外は書くことができねえんだ」
「あっ! し、失礼しました! 冒険者になる方にはそういう方も結構多いんです。なので、代筆も承っていますよ!」
説明がところどころ抜けていることにどうにも信用に欠けるなとアリシアは思い、代筆は遠慮することにした。
「いえ、大丈夫です。二人とも、私が書いてもいいかしら?」
「も、申し訳ございません、アリシア様」
「俺らも文字を学ばないといけないかねぇ」
「無理にとは言わないけど、少しでも書けるようになっていけば、読みの方もはるかに楽になるから、時間があればやってみてもいいかもね」
そんな会話をしながらも、アリシアは手を止めることなく自分の書類、ゼーア、ケイナの書類と記入を進めていく。
そのまま受付嬢に書類を提出すると、彼女は不備がないことを確認すると、机の一番下にある大きな引き出しから無色透明の水晶を取り出してカウンターに置き、一度席を立つとカウンター裏の一番奥にある金庫から三つの銅色のバッジを手に戻ってきた。
「それでは最後に、こちらのバッジへ記載いただいた内容を登録させていただきますね」
そう口にした受付嬢は書類に重ねるようバッジを置き、水晶を書類とバッジの上部に置いた。
「まずはアリシアさんから水晶に両手を置いてください」
「わかりました」
内心でドキドキしながら、アリシアは両手を水晶に置いた。
すると、水晶から光が放たれると、その光は書類とバッジに収束していく。
しばらくして光が消えると、受付嬢はバッジを手に取りアリシアへ差し出した。
「こちらで登録は完了です。細かな説明はゼーアさん、ケイナさんの登録を終えてからいたしますね」
このままゼーアとケイナの登録も終えて、アリシアたちは晴れて冒険者になったのだった。
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