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第一章:逆行聖女
第24話:自警団員アリシア 2
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「――あぁー、もうー! また負けちゃったよー!」
「でも、ジーナちゃんも強くなっていると思うよ?」
「ってか、二人とも強くなり過ぎ。男の俺の立場がなくなっちまうよ」
嬉しそうにしているジーナとは対照的に、ヴァイスは肩を落としながら歩いている。
三人の中で特別に優劣をつける必要はどこにもないのだが、それでもヴァイスからすると悔しいの一言に尽きるというものだった。
「焦っちゃダメだよ、ヴァイス兄。お父さんも言ってたじゃないのよ」
「そうだよー! お兄ちゃんはお父さんの剣を使うんでしょう? だったら我慢、がまーん!」
「……なんでお前は楽しそうなんだよ、ジーナ!」
あははと笑いながら道を走り出したジーナとヴァイス。
その姿を微笑みながら見つめていたアリシアは、ふとこれからのことを考える。
(そういえば、国を巻き込むような出来事しか思い出していなかったけど、ディラーナ村でも何かなかったかしら?)
子供の頃に戻った当初はあまりの出来事に困惑し、落ち着いたあとも自分が死んでしまう、もしくはそれに直結するような大きな出来事しか思い浮かばなかった。
もちろんそれも大事なのだが、直近で何か大きな出来事があったのではないかと記憶を掘り起こしていく。
(私が一一歳というこのタイミング、何かあったはずなんだけど、なんだったかしら?)
そう考えながら歩いていると、ハッとした表情となりその場で立ち止まってしまう。
前を歩いていたヴァイスとジーナだが、立ち止まったアリシアに気づいて振り返り呼び掛けた。
「アリシア、どうしたんだ?」
「アリシアちゃーん、早く帰ろうよー!」
しかし、二人の呼び掛けにも答えられないほどアリシアは思い出してしまったとある出来事へ思いを巡らせていく。
(……マズい、マズいわ! このままじゃあ自警団が……お父さんが、大けがを負っちゃう!)
「おい、アリシア!」
「きゃあっ!」
「うおっ! ……お前、大丈夫か?」
「アリシアちゃん、どうしたの?」
返事のないアリシアを心配して目の前まで戻ってきていた二人にも気づかないほど、アリシアは思考の海に沈んでいた。
声を掛けられたことに驚いたアリシアを見て、二人はさらに心配を募らせてしまう。
「あ……えっと、大丈夫だよ! ごめん、ちょっと考え事をしてたんだー」
「考え事って、歩きながらか? そんなに心配なことだったら、相談に乗るぞ?」
「そうだよー! 私たちはもう、自警団員の仲間だもんねー!」
ジーナの言葉を受けて、アリシアはさらにハッとしてしまう。
(……そうだ。今はもう、ヴァイス兄もジーナちゃんも自警団員なんだ。危険な場所に向かうようなことはないと思うけど、まさかがないわけじゃないんだ!)
そう思い至ると、アリシアの足は自然と走り出していた。
「おい、アリシア!」
「アリシアちゃーん!」
「ごめん、二人とも! 私、お父さんと帰るから詰め所に戻るね!」
そう口にしながら自警団詰め所へと戻っていくアリシア。
(どうして国のことばかり考えていたの! もっと近い未来、ディラーナ村で起きる悲劇だってあったじゃないの!)
この出来事のせいでアーノルドは大怪我を負い、剣を持つことができなくなってしまった。
アリシアに対しては変わらず優しい父親であり続けてくれたが、剣を握ることができなくなってから時折見せるようになった寂しそうな背中を、どうして今まで忘れてしまっていたのだろうか。
(この悲劇だけは、絶対に起こさせちゃいけないわ! 私が、お父さんを守るんだから!)
体力には自信を持っていたアリシアだったが、この時ばかりは息を切らすくらいに全力で駆け抜けていったのだった。
「でも、ジーナちゃんも強くなっていると思うよ?」
「ってか、二人とも強くなり過ぎ。男の俺の立場がなくなっちまうよ」
嬉しそうにしているジーナとは対照的に、ヴァイスは肩を落としながら歩いている。
三人の中で特別に優劣をつける必要はどこにもないのだが、それでもヴァイスからすると悔しいの一言に尽きるというものだった。
「焦っちゃダメだよ、ヴァイス兄。お父さんも言ってたじゃないのよ」
「そうだよー! お兄ちゃんはお父さんの剣を使うんでしょう? だったら我慢、がまーん!」
「……なんでお前は楽しそうなんだよ、ジーナ!」
あははと笑いながら道を走り出したジーナとヴァイス。
その姿を微笑みながら見つめていたアリシアは、ふとこれからのことを考える。
(そういえば、国を巻き込むような出来事しか思い出していなかったけど、ディラーナ村でも何かなかったかしら?)
子供の頃に戻った当初はあまりの出来事に困惑し、落ち着いたあとも自分が死んでしまう、もしくはそれに直結するような大きな出来事しか思い浮かばなかった。
もちろんそれも大事なのだが、直近で何か大きな出来事があったのではないかと記憶を掘り起こしていく。
(私が一一歳というこのタイミング、何かあったはずなんだけど、なんだったかしら?)
そう考えながら歩いていると、ハッとした表情となりその場で立ち止まってしまう。
前を歩いていたヴァイスとジーナだが、立ち止まったアリシアに気づいて振り返り呼び掛けた。
「アリシア、どうしたんだ?」
「アリシアちゃーん、早く帰ろうよー!」
しかし、二人の呼び掛けにも答えられないほどアリシアは思い出してしまったとある出来事へ思いを巡らせていく。
(……マズい、マズいわ! このままじゃあ自警団が……お父さんが、大けがを負っちゃう!)
「おい、アリシア!」
「きゃあっ!」
「うおっ! ……お前、大丈夫か?」
「アリシアちゃん、どうしたの?」
返事のないアリシアを心配して目の前まで戻ってきていた二人にも気づかないほど、アリシアは思考の海に沈んでいた。
声を掛けられたことに驚いたアリシアを見て、二人はさらに心配を募らせてしまう。
「あ……えっと、大丈夫だよ! ごめん、ちょっと考え事をしてたんだー」
「考え事って、歩きながらか? そんなに心配なことだったら、相談に乗るぞ?」
「そうだよー! 私たちはもう、自警団員の仲間だもんねー!」
ジーナの言葉を受けて、アリシアはさらにハッとしてしまう。
(……そうだ。今はもう、ヴァイス兄もジーナちゃんも自警団員なんだ。危険な場所に向かうようなことはないと思うけど、まさかがないわけじゃないんだ!)
そう思い至ると、アリシアの足は自然と走り出していた。
「おい、アリシア!」
「アリシアちゃーん!」
「ごめん、二人とも! 私、お父さんと帰るから詰め所に戻るね!」
そう口にしながら自警団詰め所へと戻っていくアリシア。
(どうして国のことばかり考えていたの! もっと近い未来、ディラーナ村で起きる悲劇だってあったじゃないの!)
この出来事のせいでアーノルドは大怪我を負い、剣を持つことができなくなってしまった。
アリシアに対しては変わらず優しい父親であり続けてくれたが、剣を握ることができなくなってから時折見せるようになった寂しそうな背中を、どうして今まで忘れてしまっていたのだろうか。
(この悲劇だけは、絶対に起こさせちゃいけないわ! 私が、お父さんを守るんだから!)
体力には自信を持っていたアリシアだったが、この時ばかりは息を切らすくらいに全力で駆け抜けていったのだった。
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