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第一章:逆行聖女
第12話:剣士アリシア 6
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「――柔の剣を教えるんですか?」
「その通りだが……お前はいったい何をしているのだ、シエナ?」
いざ剣の訓練をと思っていたアーノルドだったが、何故かシエナがそのまま居座っていた。
「でもですよ、団長。柔の剣を教えるのであれば、私も一緒にいた方がよくありませんか?」
「それはそうだが……」
「シエナさんは柔の剣の使い手なんですか?」
二人のやり取りを耳にしたアリシアが質問を口にする。
「その通りよ、アリシアちゃん! しかも私は自警団の中でも随一の柔の剣の使い手なんだからね!」
「自分で言うんじゃない」
「でも団長、本当のことじゃないですか?」
「……はぁ。まあ、その通りだな」
前世では自警団について、アーノルドのことしか知らない。
特にシエナはパッと見ではあるが線も細く、とてもじゃないが実力者には見えなかった。
「女性で強いだなんて、シエナさんってすごいんですね!」
「そうなの! ……えへへ~、アリシアちゃんに褒めてもらえると、ものすごく嬉しくなるなぁ」
「訓練の邪魔をするなら離れていてくれないか?」
「団長は酷いですね! 私も一緒に指導しますから許してくださいよ!」
「うぬぬ……アリシア、どうする?」
実のところ、アーノルドも自分の都合がどうしても合わない時にはシエナに指導をお願いするつもりでいた。
柔の剣の実力もそうだが、やはり同性という部分が一番大きなところでもある。
加えてアーノルドは柔の剣の実力者でもあるが、それは一〇年以上も昔の話だ。
男性と女性では体の使い方も変わってくるだろうと考えてのことでもあった。
「……私はお父さんに習いたい」
「そんなあっ!?」
「でも、シエナさんからも教わりたいです」
「ア、アリシアちゃん!!」
アリシアの言葉に喜怒哀楽が激しく揺さぶられているシエナ。
そんな彼女を見てクスリと笑いながら、アリシアはアーノルドへ振り向いた。
「お父さん。二人から習うと、問題が起きたりするのかな?」
「あまりに剣術のスタイルが違えば問題になるが、私が見たところではシエナの柔の剣は私と大きく変わることはないだろうし、大丈夫だろう」
「当然ですよ! 私の柔の剣の師匠は団長なんですからね!」
「えぇっ! そうだったんですか!?」
まさかの事実にアリシアは声をあげて驚き、アーノルドへ視線を向けた。
「最初は私も驚いたんだよ? こんなにごつくてでかい、さらに剛剣のアーノルドって呼ばれている団長が柔の剣を教えるって言ってきた時は」
「お前、私のことをバカにしていないか?」
「してませんよ! むしろ、尊敬しましたからね! 剛の剣を極めながら、さらに柔の剣まで使えるなんて思いませんでしたから!」
「……それはつまり、最初は尊敬していなかったということか?」
「違いますよ! どうしてそう揚げ足を取ろうとするんですか!」
シエナが抗議の声をあげると、アーノルドは苦笑しながら片手を上げて軽く謝った。
「もう! ……でも、今となっては柔の剣では私の方が上なんですからね!」
「ほほう? 本当にそう思っているのか?」
「当たり前じゃないですか! あっ、だったら今から模擬戦をしませんか? もちろん、団長も柔の剣を使ってのですけどね!」
「ダメだ。今日の私はアリシアに剣を教えるという大事な役目があるのだからな」
「「えぇ~?」」
「……ア、アリシア?」
再び抗議の声があがったが、まさかシエナだけではなくアリシアからも声があがるとは思わなかった。
「私も見てみたいです、二人の柔の剣を!」
「そうだよねー! それに、アリシアちゃんはずっと剛の剣しか見たことがないんじゃないかな?」
「その通りです!」
「ほらー、やっぱりー! 教える前に一度は柔の剣を見せておいた方がいいですって!」
アリシアも一度は柔の剣を見てみたいと思っていたので、今回のシエナの提案は非常にありがたいものだった。
「うーむ、だがなぁ……」
「お願い、お父さん!」
「お願い、団長!」
「…………はあぁぁぁぁ。わかった、アリシアの頼みなら仕方がないか」
「団長! 私は!?」
「お前は関係ない。……だが、一度見せておく必要があるのは事実だからな」
事実、アーノルドもどこかのタイミングで柔の剣を見せようと思っていた。
それが早いか遅いかの問題であり、アリシアが望むのならと承諾した。
「だがなあ、シエナ。娘の前だ、手加減はできないぞ?」
「それはこちらのセリフです! 私もアリシアちゃんにいいところを見せたいですからね!」
「ふ、二人とも、頑張ってね!」
まさかの展開に自警団員も集まり始め、気づけば訓練場はちょっとしたお祭り騒ぎのようになっていた。
「その通りだが……お前はいったい何をしているのだ、シエナ?」
いざ剣の訓練をと思っていたアーノルドだったが、何故かシエナがそのまま居座っていた。
「でもですよ、団長。柔の剣を教えるのであれば、私も一緒にいた方がよくありませんか?」
「それはそうだが……」
「シエナさんは柔の剣の使い手なんですか?」
二人のやり取りを耳にしたアリシアが質問を口にする。
「その通りよ、アリシアちゃん! しかも私は自警団の中でも随一の柔の剣の使い手なんだからね!」
「自分で言うんじゃない」
「でも団長、本当のことじゃないですか?」
「……はぁ。まあ、その通りだな」
前世では自警団について、アーノルドのことしか知らない。
特にシエナはパッと見ではあるが線も細く、とてもじゃないが実力者には見えなかった。
「女性で強いだなんて、シエナさんってすごいんですね!」
「そうなの! ……えへへ~、アリシアちゃんに褒めてもらえると、ものすごく嬉しくなるなぁ」
「訓練の邪魔をするなら離れていてくれないか?」
「団長は酷いですね! 私も一緒に指導しますから許してくださいよ!」
「うぬぬ……アリシア、どうする?」
実のところ、アーノルドも自分の都合がどうしても合わない時にはシエナに指導をお願いするつもりでいた。
柔の剣の実力もそうだが、やはり同性という部分が一番大きなところでもある。
加えてアーノルドは柔の剣の実力者でもあるが、それは一〇年以上も昔の話だ。
男性と女性では体の使い方も変わってくるだろうと考えてのことでもあった。
「……私はお父さんに習いたい」
「そんなあっ!?」
「でも、シエナさんからも教わりたいです」
「ア、アリシアちゃん!!」
アリシアの言葉に喜怒哀楽が激しく揺さぶられているシエナ。
そんな彼女を見てクスリと笑いながら、アリシアはアーノルドへ振り向いた。
「お父さん。二人から習うと、問題が起きたりするのかな?」
「あまりに剣術のスタイルが違えば問題になるが、私が見たところではシエナの柔の剣は私と大きく変わることはないだろうし、大丈夫だろう」
「当然ですよ! 私の柔の剣の師匠は団長なんですからね!」
「えぇっ! そうだったんですか!?」
まさかの事実にアリシアは声をあげて驚き、アーノルドへ視線を向けた。
「最初は私も驚いたんだよ? こんなにごつくてでかい、さらに剛剣のアーノルドって呼ばれている団長が柔の剣を教えるって言ってきた時は」
「お前、私のことをバカにしていないか?」
「してませんよ! むしろ、尊敬しましたからね! 剛の剣を極めながら、さらに柔の剣まで使えるなんて思いませんでしたから!」
「……それはつまり、最初は尊敬していなかったということか?」
「違いますよ! どうしてそう揚げ足を取ろうとするんですか!」
シエナが抗議の声をあげると、アーノルドは苦笑しながら片手を上げて軽く謝った。
「もう! ……でも、今となっては柔の剣では私の方が上なんですからね!」
「ほほう? 本当にそう思っているのか?」
「当たり前じゃないですか! あっ、だったら今から模擬戦をしませんか? もちろん、団長も柔の剣を使ってのですけどね!」
「ダメだ。今日の私はアリシアに剣を教えるという大事な役目があるのだからな」
「「えぇ~?」」
「……ア、アリシア?」
再び抗議の声があがったが、まさかシエナだけではなくアリシアからも声があがるとは思わなかった。
「私も見てみたいです、二人の柔の剣を!」
「そうだよねー! それに、アリシアちゃんはずっと剛の剣しか見たことがないんじゃないかな?」
「その通りです!」
「ほらー、やっぱりー! 教える前に一度は柔の剣を見せておいた方がいいですって!」
アリシアも一度は柔の剣を見てみたいと思っていたので、今回のシエナの提案は非常にありがたいものだった。
「うーむ、だがなぁ……」
「お願い、お父さん!」
「お願い、団長!」
「…………はあぁぁぁぁ。わかった、アリシアの頼みなら仕方がないか」
「団長! 私は!?」
「お前は関係ない。……だが、一度見せておく必要があるのは事実だからな」
事実、アーノルドもどこかのタイミングで柔の剣を見せようと思っていた。
それが早いか遅いかの問題であり、アリシアが望むのならと承諾した。
「だがなあ、シエナ。娘の前だ、手加減はできないぞ?」
「それはこちらのセリフです! 私もアリシアちゃんにいいところを見せたいですからね!」
「ふ、二人とも、頑張ってね!」
まさかの展開に自警団員も集まり始め、気づけば訓練場はちょっとしたお祭り騒ぎのようになっていた。
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