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《sideデューク》





(…屋敷に…可愛いのが来てしまった……)

すぅ…すぅ…と柔らかな寝息を立てて眠る白い子供…とても薄いが俺と血が同じとは思えない可愛さだ…。
健気な強さに優しい儚さがある。
見た目こそ姉上の生き写しだが、性格は真逆だったな。

お前が生きてると知った時…俺がどんな思いだったか…。
2人目の報告は来ていたが、シオン、お前だけ何も聞かされてなかったんだ。

…こんなに綺麗なんだ…孤児院で囲われない訳が無い。


……
………
……

「覗き見とは感心しませんね?デューク」
「…ジェラルド…まだ居たのか。」

金色の髪を緩く結び他人の家で優雅に足を組んでいるのは、学生の頃よく世話になった、ジェラルド・フィンランダー。
美しいと今も評判だが、やはりシオンには敵わないな。

「全く…少しは私やウィルに興味を持ったらどうです?貴方が愛するシオンの教師なのですから。」
「…シオンはどうだ?」
「どう…とは?」
「授業は大丈夫かと聞いている」

相変わらず、この男にはイライラする。
学生の頃から何ら変わりのない、紳士に見えてどす黒い策士だ。コイツが当主になったらフィンランダー家は成長するだろうな。

「シオン様は案外…何か考えているようで何も考えていない…でも聞けば的確な意見が来る…面白い方ですよ。」
「…悪口か?」
「いい意味です。」

愛しのシオンが遠回しに呑気だと言われた気がしたが、コイツに突っかかるだけ無駄だ。諦めよう。

「そうだ、ジェラルド、ウィルフレッドは一緒じゃ無かったのか?明日は体術だろう。間に合うのか?」

ウィルフレッド・パーシヴァル。
北の獅子パーシヴァル家の脳筋バカ、コイツもジェラルドと同様、同学年だったので、実力を信用してシオンの剣と体術の教師選んだのだが…

「ウィルは大丈夫ですよ、少々雑な所もありますが…約束は守る男ですし、それはデュークもご存知でしょう?」
「…お前がそう言うならそうなんだろうな。」

元より俺たちに会話という会話は無い、双方話したい事を話し終えたら黙りお互いの事を始める。

穏やかなシーンとした空気をぶち壊したのは今、噂をしていた人物だった。

「よォ!!!どーだ!デューク!!間に合ったろ!!!」

バタンと空いた窓から堂々不法侵入してきたのは、赤髪の獅子ウィルフレッド。
頼まれたらやるし頼まなくてもやる結構便利なやつ。まぁうるさいが。

「まずお前はその煩いのをどうにかしろ。」
「……ウィル…今は夜ですよ…?」
「わーってるよ!っあ~疲れたわ…オレにも茶~」
「全く…貴方って人は……」

実力はあるが貴族らしくないと当主選びから外された哀れなウィルフレッドは、冒険者と混ざり稀に洞窟やそこら辺の魔物を退治している。

「今回は何処にいってたんだ?お前にしては長かったじゃないか。」

「東東!お~それがよ~?なぁんかきな臭いンだよなぁ~…」
「きな臭い?」
「そー!…ンー…まぁ2匹だな。」
「あぁ…またか。お前の感にハズレは無い信用してやる。」

東のが暴れだしたか…
面倒な事になりそうだが、シオンが入学する前に排除しておかなくてはな。

「おや、それでは私にお任せ下さい!ドカンと1発かましてきますね」
「ほう…なら任せる、力が欲しいなら頼れ。」

……はぁー…気が重い。また後でシオンを見に行くか。

「…あ…そうでしたそうでした!デュークに朗報ですよ、シオン様はデュークがお好きらしいので、良かったですねぇ」


「……は?」


………なんだそれ…可愛いが過ぎるぞ…?
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