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「……おはようございます…デューク様」
「…あぁ。」

公爵家での生活5日目、俺はめちゃくちゃ慣れていた。
いやぁ人間の適応能力って凄いね!!
俺が生粋のジャパニーズだった頃もこんな感じだったなぁ~。呑気だって言われてたっけ?

「…むぐ…」

「……」

「…ごくっ……」

「……」

朝食中喋んないのはいつもの事、俺は原作でのデューク様しか知らないからなんとも言えないんだけど、さっすが無表情系クールって感じ。黙って飯食っててもすげぇイケメンだもん。

ギルバートも初めはこんな調子のデューク様に戸惑ってたっけ、回想シーンだけだったからわかんなかったけど、あれは可愛かったなぁ…デューク様もデューク様でギルバートの事を可愛がっててさぁ~……

「…シオン」
「……んむ」
「…付いてる。」
「……ありがとうございます!」

まぁ……俺も案外可愛がられてたりするかもな!


……


楽しい眼福な朝食が終わると、一昨日から始まった授業が始まる。
まぁいわば公爵様が子供を迎えなければ、俺が公爵家の跡取りになる訳で…勉強の山ですわ。

「シオン様お着替えを」
「リル!ごめんありがとう!ココお願いしても良い?」

そんでもって俺は使えるもんは使う主義。
極力屋敷全員に仲良くフレンドリーに、これからココに住むんだ。世渡りは上手くやらないとだしね。

「今日も大変お綺麗ですよ!」
「もう!リルってばお世辞はいいって言ってるでしょ?綺麗なのはデューク様とかそういう人!」
「シオン様~何度も申し上げました~!お世辞じゃないですって!」

デューク様の趣味なのかなんなのか分からないけど、俺の服は基本的にふわふわしてる、フリルとか、宝石とかも付いてるめちゃくちゃ高そうなやつ。

だがしかーし!俺は遠慮をしない!!貰えるならもらう!!

「それではシオン様、何かあれば私に」
「うん!じゃあまた後でね!」

俺付き侍女のリルと別れて勉強する為の部屋へ向かう。
2日前までは暗かった屋敷も、俺が来てから明るくなったっぽい、この間別の人に感謝された。

「ジェラルド先生!」
「おや、シオン様、お早いですね。」
「え…ピッタリじゃありませんでした?」
「……ふふ…健気ですね、私の準備は済んでいますから、始めましょうか。」
「はい!!」

ジェラルド先生は俺に着いた初めての先生で、デューク様の学友だったらしい…らしいと言うのはジェラルド先生からはそう聞いてるけど、デューク様には友達ではないと一喝されちゃったから。

美しい金色の長髪をなびかせて歩くジェラルド先生は男の人ながらめちゃくちゃ美しいってやつで…それでも原作に出てこなかったから、俺の頭はハテナでいっぱいだ。

「…前回は国の成り立ちからお話しましたね、復習からしましょうか。」

「まず、我が国の名前は、アーヴィング国、それでは現国王の名前は?」
「ルシアン・アーヴィング様」
「正解です。」

「それでは国王のお子になられる、おふたりのお名前は?」

「ロイド・アーヴィング殿下とニック・アーヴィング殿下です。」
「はい、正解です。」

ロイドとニックも《むらわた!》の登場人物だ、特に第2王子ニックとギルバートは歳が同じな事もあって仲良く登場している。

「それでは次です、アーヴィング国には勢力の強い4つの家がありますね?1つ目は西の黒豹とも言われるアンブローズ家。残りの家は?」

「北の獅子、パーシヴァル家と、南の鷹、フィランダー家…あと、東の蛇、レジナルド家です。」
「うん、よく覚えてましたね、正解です。」

先生は12歳の記憶力舐めすぎだよ……

「北の獅子、パーシヴァル家はデュークと同じ公爵位をお持ちの方々です。現当主のマルク様は現在60歳を迎え、そろそろ代替わりの頃ですかね。今のところ勢力があるのはマルク様のお孫であるレオナルド様ですね現在15歳とまだお若いですが。」

うん知ってる、レオナルド…レオは《むらわた!》の主要キャラだったから…
力こそ正義みたいな騎士家系のパーシヴァル家で1番の強さを誇るマルク様直々に次代当主と言われたレオナルド……
ギルバートの師匠的なポジションだったんだよね。

「南の鷹、フィンランダー家、こちらは私の家ですね、伯爵位ではありますが、資産だけはあるのでこの順位です。次期当主は私の予定ですから、デュークには仲良くして欲しいものですよ。」

フィンランダー家はそこまで語られてなかったな~…もしかして俺の知らない続編とか…?うわぁ嫌だなぁ…それ知らずに死んだって事だろ~!?

「そして東の蛇、レジナルド家ですね、こちらも男爵家と位は低いですが、正直私の家よりもお金があると思います。庶民向けの商売が多くやりくり上手とでも言いましょうか。」

うん、それも知ってる、なんてったって、このレジナルド家こそが、主人公でありヒロイン、聖女マリアの家になるんだから。

「アンブローズ家の事についても少しお話しておきますね、アンブローズ家は代々王の隣に立つ程、魔力、知力、財力と様々な功績を挙げてきた優秀な公爵家です。現当主デュークは現在19と若いですが、元々はシオン様の母君であるケイシー様並びにサイラス様が当主としてここで生活をしておられました。」

デューク様が19歳…俺とは7歳差…!?じゃあケイシーとデューク様は何歳差だったんだよ…!?

「デュークのお家事情も結構変わっていましてね…デュークとケイシー様はお母君が違います。その為かなり年の離れたご姉弟でしたが仲はよろしかったんですよ?」

へぇ……それは知らなかった……

「ケイシー様のお子であるシオン様が生きていらっしゃると知った時のデュークの顔は忘れられません。」

くすくすと笑ったジェラルド先生がこちらを見て緩やかに言った。

「あれほど取り乱していたデュークは今後見れないでしょうね。」

……そういえば…なんで俺孤児だったんだろう…ケイシー…母さんが死んだのはギルバートを産んですぐだから…俺は4歳だったのか。

「それでは、王族の血から遡り貴族の図表を見てみましょうか!」

パン!と軽やかに手を鳴らしたジェラルド先生はとても楽しそうに笑っていた。
…う……勉強…嫌いだ。
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