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第二部・狼煙の章
2-3話 なにもかにもあるか。こんなん、なろうどころかカクヨムでもアルファポリスでも駄目だっつーの
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「ちなみに今、どんな話を考えてるの」と、おれは作者に聞いてみた。
「トラ転かな。おっさんが異世界に幼女転生する奴の一種ね」
「TS転生か。略すとトラック転生と紛らわしいな。だけどさ」と、おれは重ねて聞いた。
「なんで幼女ばっかりなんだよ。女子が転生すると悪役令嬢かほっこりスローライフで、美少年転生はあまりないよね」
「いや、あるじゃん、有名なのが」と、作者は参考資料にしているらしき本を、バッグの中から取り出した。
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』
*
「えーっ、あれってTS転生なの。タラシのベル君はこっちの世界だとブラック企業に勤めてて過労死した若い女性かよ」
「ヘスティア様と毎晩一緒に寝ていながらムラムラッとしないところとか、憧れの勇者がアイズ・ヴァレンシュタインだとか、どう考えてもベル君の前世は女子だろ」
ここでおれは一応、「なろう」その他ウェブ小説掲載サイトのガイドラインとか禁止事項を読んでみた。
「うーん…「特定の団体、個人に対する誹謗中傷」「二次創作ガイドラインに反している作品」は禁止だけど、他作品に関する妄想の展開に関してはよくわからないのな」
「シリーズが10巻以上出てて、アニメが3期まで作られてる作品だったら、何やってもいいんだよ」
「さすがに何やってもいい、ってことはないと思うよ」
「なんか運営に言われたら消すけどね。でもって、あの話の学園版を考えてみたんだ」
作者はA4用紙1枚のプロットを、おれに見せた。
『学園に出会いを求めるのは間違っているだろうか』
「……いや、学園に出会いを求めるのは普通でしょ。ふーん、ロリ系女子が英語の先生で、卒業してる大学がICUだからあまり先輩・後輩がいない……生徒会長が会津さんで、体育会系番長がミノベさんね。主人公の後輩女子が、なにかと役に立つリリちゃん……」
おれはその紙をひき破った。
「何すんだよ」
「なにもかにもあるか。こんなん、なろうどころかカクヨムでもアルファポリスでも駄目だっつーの」
*
おれも話を考えてみることにした。
物語の登場人物が物語を考えるっての、ありなのかよ。
「まず、異世界の学校があるわけよ。貴族と平民、下級市民とかモンスターとかが一緒に通えるところね。ネトゲだけど」
「ふんふん」と、作者は新しい紙にメモしていた。
「主人公は悪役になりそこねた下級市民で、それが超絶ソロプレイ勇者の貴族令嬢とチームを組む」
「面白そうじゃん」
「最初の依頼は、馴れ馴れしいが頭の軽い貴族の娘で、贈呈用の手作り焼き菓子作りを手伝う」
「作りが重なるのが日本語的にどうかと思うけどね。それから」
「次に、上級貴族と昼休みの居場所を巡って、球技勝負をする」
「だいたいわかってきたよ。新しい仲間は男の娘っぽい子だね」
「それから、手汗が気持ち悪いキングゴブリンが書いた物語を、みんなで読んで感想を言う」
「最初のダンジョンは、夏休みに小学生と一緒に行くのね」
すでにもう、作者はおれの話は聞いていながら、メモには違うことを大文字で書きはじめていた。
「その貴族令嬢には、姉はいるのかな」
「いる」
「頭の軽い子はペット飼ってるとか」
「イヌみたいなのを飼ってる。なんだよ、アキネイターかよ」
「あなたが考えてる話は、ずばりこれでしょう」
作者は、書いた紙を見せた。
『やはり俺のダンジョンはまちがっている。』
「略して『ダンまち』。じゃなくて『ダンガイル』」と、作者は言った。
「で」と、おれは頭をかきながら答えた。
「で、じゃねーよ」
作者はその紙を破った。
今回の話は、書籍化されたときにはカットされる予定である。
そもそも書籍化の予定なんてないけどね。
貴族とリア充はすこし似てる。
「トラ転かな。おっさんが異世界に幼女転生する奴の一種ね」
「TS転生か。略すとトラック転生と紛らわしいな。だけどさ」と、おれは重ねて聞いた。
「なんで幼女ばっかりなんだよ。女子が転生すると悪役令嬢かほっこりスローライフで、美少年転生はあまりないよね」
「いや、あるじゃん、有名なのが」と、作者は参考資料にしているらしき本を、バッグの中から取り出した。
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』
*
「えーっ、あれってTS転生なの。タラシのベル君はこっちの世界だとブラック企業に勤めてて過労死した若い女性かよ」
「ヘスティア様と毎晩一緒に寝ていながらムラムラッとしないところとか、憧れの勇者がアイズ・ヴァレンシュタインだとか、どう考えてもベル君の前世は女子だろ」
ここでおれは一応、「なろう」その他ウェブ小説掲載サイトのガイドラインとか禁止事項を読んでみた。
「うーん…「特定の団体、個人に対する誹謗中傷」「二次創作ガイドラインに反している作品」は禁止だけど、他作品に関する妄想の展開に関してはよくわからないのな」
「シリーズが10巻以上出てて、アニメが3期まで作られてる作品だったら、何やってもいいんだよ」
「さすがに何やってもいい、ってことはないと思うよ」
「なんか運営に言われたら消すけどね。でもって、あの話の学園版を考えてみたんだ」
作者はA4用紙1枚のプロットを、おれに見せた。
『学園に出会いを求めるのは間違っているだろうか』
「……いや、学園に出会いを求めるのは普通でしょ。ふーん、ロリ系女子が英語の先生で、卒業してる大学がICUだからあまり先輩・後輩がいない……生徒会長が会津さんで、体育会系番長がミノベさんね。主人公の後輩女子が、なにかと役に立つリリちゃん……」
おれはその紙をひき破った。
「何すんだよ」
「なにもかにもあるか。こんなん、なろうどころかカクヨムでもアルファポリスでも駄目だっつーの」
*
おれも話を考えてみることにした。
物語の登場人物が物語を考えるっての、ありなのかよ。
「まず、異世界の学校があるわけよ。貴族と平民、下級市民とかモンスターとかが一緒に通えるところね。ネトゲだけど」
「ふんふん」と、作者は新しい紙にメモしていた。
「主人公は悪役になりそこねた下級市民で、それが超絶ソロプレイ勇者の貴族令嬢とチームを組む」
「面白そうじゃん」
「最初の依頼は、馴れ馴れしいが頭の軽い貴族の娘で、贈呈用の手作り焼き菓子作りを手伝う」
「作りが重なるのが日本語的にどうかと思うけどね。それから」
「次に、上級貴族と昼休みの居場所を巡って、球技勝負をする」
「だいたいわかってきたよ。新しい仲間は男の娘っぽい子だね」
「それから、手汗が気持ち悪いキングゴブリンが書いた物語を、みんなで読んで感想を言う」
「最初のダンジョンは、夏休みに小学生と一緒に行くのね」
すでにもう、作者はおれの話は聞いていながら、メモには違うことを大文字で書きはじめていた。
「その貴族令嬢には、姉はいるのかな」
「いる」
「頭の軽い子はペット飼ってるとか」
「イヌみたいなのを飼ってる。なんだよ、アキネイターかよ」
「あなたが考えてる話は、ずばりこれでしょう」
作者は、書いた紙を見せた。
『やはり俺のダンジョンはまちがっている。』
「略して『ダンまち』。じゃなくて『ダンガイル』」と、作者は言った。
「で」と、おれは頭をかきながら答えた。
「で、じゃねーよ」
作者はその紙を破った。
今回の話は、書籍化されたときにはカットされる予定である。
そもそも書籍化の予定なんてないけどね。
貴族とリア充はすこし似てる。
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