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第九章 水曜日は乙女脳でチョロい
9-7話 このとおり、机の上にはうっすらとホコリが溜まっております
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「慥(たし)かに。此れはワタシ達の組のハルちゃん、席夜晴香(せきやはるか)さんですね」と、真部岡恵留(まぶおかえる)さんは眼鏡を外して拭いて、もう一度見て言った。真部岡さんは眼鏡を外しても「з」みたいな変な形になることはなく、どちらかというと美人のほうだ。
小林美咲先輩の自撮り動画「物語部フィールド(仮題)」はまだ続く。
*
「ではこの、顧問の先生にお借りした鍵で図書準備室の部屋を開けることにしましょう」
ドアが開けられると、室内はまた他撮りモードになって小林先輩のナレーションが入る。
「ご覧の通り、年に何度か使われるだけの、図書室で利用しなくなった資料が置かれているだけの、ごくありふれた図書準備室です。壁には鍵のかかったガラス窓つきのスチール製書棚があり、ここには過去の卒業アルバムといった、個人情報の関係で一般人の閲覧が禁止されている資料なども並べられています」
室内を右端から左端まで、カメラはぐるりと回って見せる。しかし席夜さんどころか、席夜さんが入った形跡すらない。
「このとおり、机の上にはうっすらとホコリが溜まっております」と、動画撮影者の小林先輩は机を触って、そのうっすらとしたホコリをカメラに見せた。確かに指の先が少し白くなっている。
「それではちょっと奥のほうに進んでみましょう。奥の窓際には、機械を入れ替えて使わなくなった昔のテレビやオーディオ機器などが置いてありますね。ああ、窓の外の雪はどんどん激しくなっている」
雪のせいでとても幻想的な窓の外の景色が写り、それから窓側から見た室内の風景に変わる。確かにどこにも席夜さんはいない。いったいどうなってしまったのか。
部屋を出て、鍵を閉めた小林先輩の、再び自撮りモードの画面が続く。今度のナレーションは廊下で、ほぼ階段のあたりに立っておこなわれている。
「このように、今回の私たちの取材は、あのくだらないミステリー&お菓子研究会の存在の確認、そして物語部というたわけた部の不在を証明する結果になりました。まったくもってくだらない。江戸川乱歩が何だ。海野十三と比べれば…」
その後しばらく、小林先輩の熱いヘイトスピーチ(って言っていいんですかね、これ)は続いたが…。
*
「あーっ、この場面、ちょっとおかしくないですか?」
おれが気づいたのは、小林先輩が話している背後、図書準備室から3人の女子っぽい人が、金色の光とともに出てきたところだ。ひとりはなんかオオカミっぽくて、生徒会長と戦えそうなスタイルのパンクファッション女子、もうひとりはなんかヒツジっぽくて、ペテン師みたいな優しそうな感じの女子で、その人はもうひとりの地味っぽい女子に話しかけていた。
「嫌だなあもう、イチカワ先輩って」と、地味っぽい子は笑いながら答えた。
「明らかにこの子…」
「はるちゃんさんですね」と、おれの言葉を今日の妹が続けた。
ちなみに映像音楽部に一緒に来た神様チームのほうは、部室の楽器を勝手に広げて音合わせとかしている。タブレットの画面をこれだけの人数で見るのは大変だし、飽きてしまっているようである。
*
「…以上の映像で、物語部は存在しないということがみんなもわかったと思う」
「全然わかんないですよ、小林先輩! どう見ても存在してるじゃないですか」と、おれは強く主張した。
これは、あとでちゃんと確認しないといけない。今日は借りてきた本を返さないといけないので、あとで上の階に行ってみよう。
「因(ちな)みに、映像音楽部って何をやる部なんでしょう?」と、真部岡さんは聞いた。
「ふっふー、いいことを聞いたね、後輩ちゃん」と、もうひとりの先輩の、ツチブタに似ているがどちらかというと美人のほうの山田さくら先輩が言った。
小林美咲先輩の自撮り動画「物語部フィールド(仮題)」はまだ続く。
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「ではこの、顧問の先生にお借りした鍵で図書準備室の部屋を開けることにしましょう」
ドアが開けられると、室内はまた他撮りモードになって小林先輩のナレーションが入る。
「ご覧の通り、年に何度か使われるだけの、図書室で利用しなくなった資料が置かれているだけの、ごくありふれた図書準備室です。壁には鍵のかかったガラス窓つきのスチール製書棚があり、ここには過去の卒業アルバムといった、個人情報の関係で一般人の閲覧が禁止されている資料なども並べられています」
室内を右端から左端まで、カメラはぐるりと回って見せる。しかし席夜さんどころか、席夜さんが入った形跡すらない。
「このとおり、机の上にはうっすらとホコリが溜まっております」と、動画撮影者の小林先輩は机を触って、そのうっすらとしたホコリをカメラに見せた。確かに指の先が少し白くなっている。
「それではちょっと奥のほうに進んでみましょう。奥の窓際には、機械を入れ替えて使わなくなった昔のテレビやオーディオ機器などが置いてありますね。ああ、窓の外の雪はどんどん激しくなっている」
雪のせいでとても幻想的な窓の外の景色が写り、それから窓側から見た室内の風景に変わる。確かにどこにも席夜さんはいない。いったいどうなってしまったのか。
部屋を出て、鍵を閉めた小林先輩の、再び自撮りモードの画面が続く。今度のナレーションは廊下で、ほぼ階段のあたりに立っておこなわれている。
「このように、今回の私たちの取材は、あのくだらないミステリー&お菓子研究会の存在の確認、そして物語部というたわけた部の不在を証明する結果になりました。まったくもってくだらない。江戸川乱歩が何だ。海野十三と比べれば…」
その後しばらく、小林先輩の熱いヘイトスピーチ(って言っていいんですかね、これ)は続いたが…。
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「あーっ、この場面、ちょっとおかしくないですか?」
おれが気づいたのは、小林先輩が話している背後、図書準備室から3人の女子っぽい人が、金色の光とともに出てきたところだ。ひとりはなんかオオカミっぽくて、生徒会長と戦えそうなスタイルのパンクファッション女子、もうひとりはなんかヒツジっぽくて、ペテン師みたいな優しそうな感じの女子で、その人はもうひとりの地味っぽい女子に話しかけていた。
「嫌だなあもう、イチカワ先輩って」と、地味っぽい子は笑いながら答えた。
「明らかにこの子…」
「はるちゃんさんですね」と、おれの言葉を今日の妹が続けた。
ちなみに映像音楽部に一緒に来た神様チームのほうは、部室の楽器を勝手に広げて音合わせとかしている。タブレットの画面をこれだけの人数で見るのは大変だし、飽きてしまっているようである。
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「…以上の映像で、物語部は存在しないということがみんなもわかったと思う」
「全然わかんないですよ、小林先輩! どう見ても存在してるじゃないですか」と、おれは強く主張した。
これは、あとでちゃんと確認しないといけない。今日は借りてきた本を返さないといけないので、あとで上の階に行ってみよう。
「因(ちな)みに、映像音楽部って何をやる部なんでしょう?」と、真部岡さんは聞いた。
「ふっふー、いいことを聞いたね、後輩ちゃん」と、もうひとりの先輩の、ツチブタに似ているがどちらかというと美人のほうの山田さくら先輩が言った。
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