上 下
2 / 95
第一章 月曜日は普通

1-2話 待ってたよ、そのお供えを

しおりを挟む
 その小さな公園からコンビニまでは歩いて5分ぐらいのところにあり、そこからさらに5分ほど歩くと、妹が事故に会った神社につく。三毛猫が歩きながら話そう、と言ったので歩きはじめたけど、なんか寒いし腹も減ってきたので早足になってしまった。

 後ろから靴音がしたのに気がついて振り向くと、幼女と言うには大きすぎるが少女というにはいろいろなところが残念すぎる女子が、暖かそうなフードつきの猫オレンジ色のコートを着て息を切らしていた。

「も、もう少しゆっくり歩いてくれないか」と、その子は言った。

「あ、ごめん。…しかしまあ、うまく化けたね。しっぽとかはないの?」

「しっぽはさすがにまずいので消せるのだが、属性としての八重歯と琥珀色の虹彩と髪の毛の色は無理なんだな。ちなみに語尾に「にゃ」とつけるみたいな属性も消せる」

 そう言って彼女はフードを取ると、ナチュラルボブの髪は向かって左から黒・白・茶に分かれていた。

 おれが頭をぽんぽん、とすると、その子は怒った。

「わ、私の頭に軽々しくさわるにゃ。私も神様だぞ。まず喉のところをなでて、耳に軽く息を吹きかける、みたいにするのがコツなのだ」

「うんわかった。今度気が向いて、覚えてたらやってみるよ。それから、少し興奮すると「にゃ」とか「にょ」とか言うんだ」

 だいたいの話はコンビニに行くまでに聞き、おかかとツナとシャケのおにぎりを2個ずつにあつあつの鶏の空揚げ、お茶と烏龍茶のペットボトル、それから神社の守り神のためにいなり寿司を3パックと、何か洋風の甘いものを買っていったほうがご利益があるということで、クッキーシューをひと袋、さらにエナジードリンクを3種類買ったので、電子マネーの残高がものすごく減った。

「これから会う奴らは食い意地が張ってるからな。頼みごとをするにはお供えが必要だ」

「おにぎりを3つと、手をべとべとにして鶏の唐揚げ食べながら歩いてる猫神様にそんなこと言われたくないと思うよ。あと、頼まれごとをされてるのはおれのほうだよね?」

 おれはポケットティッシュを出して、べとべとの手をなめているその子というかまあ、猫神様に渡した。

「神を甘く見るなよ。私は福の神だ。そのティッシュを出したポケットの中をもう少しがさごそしてみろ」

 言われたとおりにすると48円の小銭が出てきた。これは妹に頼まれて駅前のビデオレンタル兼本屋で漫画の単行本を買ったときのお釣りで、本来は妹のものなのだ。しかしもう多分向こうもすっかり忘れているだろうし、おれもどの妹に頼まれたのかすっかり忘れている。

「そのうち40円を私に、5円と3円をこれから会いにいく奴らに、賽銭として渡すのだ」

「ちなみに、これから行く神社の賽銭箱の下をがさごそとかおれにさせたりする?」

「それはまあ、今後の話の展開しだいだな」

 神社の賽銭箱の前には、しっぽが炎みたいにゆらゆらしている火狐がいて、おれが見ている前でちゃんと女子高生か女子中学生に見える、それもどちらかというと可愛いほうの姿に変わった。燃えるようなセミロングの赤髪と紫色の瞳に、薄緑色のあまりごちゃごちゃしていないコートを着ていたその子は言った。

「待ってたよ、そのお供えを。それから曽根地敏行くんも」

 おれみたいな勇者を200年ぐらい待っていたらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...