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第一章 月曜日は普通

1-2話 待ってたよ、そのお供えを

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 その小さな公園からコンビニまでは歩いて5分ぐらいのところにあり、そこからさらに5分ほど歩くと、妹が事故に会った神社につく。三毛猫が歩きながら話そう、と言ったので歩きはじめたけど、なんか寒いし腹も減ってきたので早足になってしまった。

 後ろから靴音がしたのに気がついて振り向くと、幼女と言うには大きすぎるが少女というにはいろいろなところが残念すぎる女子が、暖かそうなフードつきの猫オレンジ色のコートを着て息を切らしていた。

「も、もう少しゆっくり歩いてくれないか」と、その子は言った。

「あ、ごめん。…しかしまあ、うまく化けたね。しっぽとかはないの?」

「しっぽはさすがにまずいので消せるのだが、属性としての八重歯と琥珀色の虹彩と髪の毛の色は無理なんだな。ちなみに語尾に「にゃ」とつけるみたいな属性も消せる」

 そう言って彼女はフードを取ると、ナチュラルボブの髪は向かって左から黒・白・茶に分かれていた。

 おれが頭をぽんぽん、とすると、その子は怒った。

「わ、私の頭に軽々しくさわるにゃ。私も神様だぞ。まず喉のところをなでて、耳に軽く息を吹きかける、みたいにするのがコツなのだ」

「うんわかった。今度気が向いて、覚えてたらやってみるよ。それから、少し興奮すると「にゃ」とか「にょ」とか言うんだ」

 だいたいの話はコンビニに行くまでに聞き、おかかとツナとシャケのおにぎりを2個ずつにあつあつの鶏の空揚げ、お茶と烏龍茶のペットボトル、それから神社の守り神のためにいなり寿司を3パックと、何か洋風の甘いものを買っていったほうがご利益があるということで、クッキーシューをひと袋、さらにエナジードリンクを3種類買ったので、電子マネーの残高がものすごく減った。

「これから会う奴らは食い意地が張ってるからな。頼みごとをするにはお供えが必要だ」

「おにぎりを3つと、手をべとべとにして鶏の唐揚げ食べながら歩いてる猫神様にそんなこと言われたくないと思うよ。あと、頼まれごとをされてるのはおれのほうだよね?」

 おれはポケットティッシュを出して、べとべとの手をなめているその子というかまあ、猫神様に渡した。

「神を甘く見るなよ。私は福の神だ。そのティッシュを出したポケットの中をもう少しがさごそしてみろ」

 言われたとおりにすると48円の小銭が出てきた。これは妹に頼まれて駅前のビデオレンタル兼本屋で漫画の単行本を買ったときのお釣りで、本来は妹のものなのだ。しかしもう多分向こうもすっかり忘れているだろうし、おれもどの妹に頼まれたのかすっかり忘れている。

「そのうち40円を私に、5円と3円をこれから会いにいく奴らに、賽銭として渡すのだ」

「ちなみに、これから行く神社の賽銭箱の下をがさごそとかおれにさせたりする?」

「それはまあ、今後の話の展開しだいだな」

 神社の賽銭箱の前には、しっぽが炎みたいにゆらゆらしている火狐がいて、おれが見ている前でちゃんと女子高生か女子中学生に見える、それもどちらかというと可愛いほうの姿に変わった。燃えるようなセミロングの赤髪と紫色の瞳に、薄緑色のあまりごちゃごちゃしていないコートを着ていたその子は言った。

「待ってたよ、そのお供えを。それから曽根地敏行くんも」

 おれみたいな勇者を200年ぐらい待っていたらしい。
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