魂を殺された女

新年の挨拶。

　勇一と会ったのはハルカが就職が決まった年の、お正月なのでちょうど2年ぶりということになる。

　「ハルカちゃん久しぶり。あけましておめでとう。今年はハルカちゃんが家にいるって聞いて、新年の挨拶に来ちゃった。これどうぞ。あとこの人は俺の奥さん。美人でしょ？」

　勇一からお年賀を受け取りつつ、ハルカも

「あけましておめでとうございます。お年賀ありがとう。今、留守番してて親いなくて…………ってお嫁さん！凄く綺麗な人だね！初めまして！」

　勇一はハルカが専門学生の時に結婚した。結婚したとは聞いていたがお嫁さんとハルカが会うのは初めてだった。冬の厚手のコートを来ていても勇一のお嫁さんは、スタイルの良さが滲み出ている体型をしていた。

　モデルさんのようにスラっとした細身でなのに、胸はふっくらとあって、セミロングな黒髪はしっかり手入れされているのか艶々だった。顔も凛とした切長の目は妖艶で唇は薄いピンクの口紅が控えめに塗ってあった。

　勇一のお嫁さんは圧倒的な美人だった。存在感というのかオーラも凄い。女のハルカですらドキドキしてしまうほどの
魅力の持ち主だった。

　ハルカは勇一のお嫁さんと簡単に挨拶を済ませると、その2人の後ろについてきた勇太が気になった。あれから勇太に会うのは初めてで、どことなく気まずい……その気まずさを勇太の方が感じ取ってくれたのか、勇一のお嫁さんとの挨拶を終えると、すぐに勇太の方から

「よ！今年もよろしくな！」

と元気に声をかけてくれた。

「あ。うん。こちらこそよろしく」

　家の中に招いてお茶でも振る舞った方がいいのだろうか？と考えるものの、勇一から

「新年早々ビックリしたけど、コイツ、お嫁さんに逃げられてやんの。聞いたでしょ？今、ちょっと女性不信なんだって（笑）ハルカちゃん、もし良かったらコイツのお嫁さんになってあげてよ～」

「ばっ！バカ！バカ！兄貴！
　　余計なこと言ってんじゃねーーーぞ！」

「えええ～いいじゃん別に。ハルカちゃんのイメチェン？ショートになったの可愛いかったって言ってたの母さんから聞いたぞ。」

「おい。マジでやめろよ。俺は新年早々、兄貴を呪い殺したくはない。」

「はいはい。分かったよ」

　ハルカはどういう反応をしていいか分からなかった。勇太のお嫁さん？そんな未来は今のところない。勇太のことはもちろん嫌いじゃないけど恋愛対象としてはどうだろう？そもそも男の人をもう一度愛せるだろうか？

　勇太ではないにしても、また誰かを好きになれたとして、その誰かとセックスする想像がハルカには出来なかった。

　それとも誰かを好きになったら、あんな目にあったハルカでもまた誰かと体の芯からとろけるような愛のあるセックスをしたいと思うのだろうか。体を求める欲求が今のハルカには空っぽでいまいち実感が湧かない。

　「それじゃ帰るね。ハルカちゃんのご両親にもよろしく言っておいて。勇太は少しゆっくりしてけば？笑」

　「なんでだよ。俺も帰る。」

　と勇一とそのお嫁さん、そして勇太は
帰ろうとしていたので

　ハルカは慌てて……

「あ、うん。勇兄これありがとう。またうちの両親からも改めて新年の挨拶しに行くかもだけど。あと……勇太。この間はありがとう。助かったよ」

　とハルカはこの間のバイト先でパニックになって勇太に助けられたことのお礼を言った。

「お、おう。俺はたいしたことしてねぇーよ。
　　　　　　　　　　あんま気にすんなよ。」

と言って勇一、勇一のお嫁さん、勇太の3人は帰っていった。ハルカはこの間の時のお礼を
勇太に言えて良かったなと思った。