9 / 52
友人との再会
しおりを挟む
11月上旬、ハルカは精神科の主治医に、そろそろ働きたいという趣旨の相談をした。主治医の女医の先生は決して無理はしないこと、出来れば初めは短期間、もしくはすぐやめられるアルバイトにすること、仕事に慣れても一人暮らしはまだ心配ということと、2週に1回の診察はこれまで通り守ることをルールとして就労への許可がおりた。
秋も深まりそろそろ冬が訪れる時期になると、日がおちるのがとても早い。それでも毎日、自己流のリハビリを繰り返し、比較的穏やかな生活を送っていた。
ハルカには今でも死にたいという気持ちが、たまに襲ってくることがある。心も体もめちゃくちゃにされて、殺されてしまうのではないかという恐怖も味わった。
いや、むしろ複数の男から中出しされ顔にもたくさん精液をかけられ、髪の毛を鷲掴みにされながらイマラチオをされ殴られたり蹴られたりと、ボロ雑巾のように酷く扱われたハルカは、あのまま殺されていれば良かったと何百回も思った。
それでも今、生きてる。
不思議な話だが、あんな目にあっても生きようとしてることがハルカ自身、1番信じられない。
一度、自殺未遂をしたが失敗した。母親にバレて両親2人も自分の娘が性被害にあってしまうという悲劇に落とされた。親のため?そうなのかは分からない。分からないが、ハルカはなんとか死なずに生きなくてはいけないなと漠然と思っている。
今でも夜の人気がない道が怖い。車に乗るのが怖い。男性はとても怖い。複数の男性に囲まれたらきっと恐怖で気絶してしまうだろうと思う。それでも生きる。生きるしかないんだと自分に数千回言い聞かせている。
そんなことをぼんやりと考えながら通院の帰り道、仕事を探すならと久しぶりにお化粧をした方がいいか?と思い、バス停近くのドラッグストアに寄った時のこと、
「……ハルカ?」とドラッグストアの店内でふいに声をかけられた。友達の彩乃だった。都会に就職して1年と数ヶ月、田舎に戻ってきてそろそろ3ヶ月。久しぶりの友人との再会にハルカは体がゾワゾワとなった。
彩乃とは高校時代の友人だった。ハルカが都会へ行っても頻繁に連絡を取り合って、近況報告をしていた仲だった。来年のお正月には帰省するから、その時に遊ぼうと約束をしていた。
その約束した来年のお正月はあと2ヶ月足らずでやってくるが、ハルカは帰省するどころか都会で最悪な目にあい、のこのこと田舎に帰ってきたのだ。どんな話をすればいいのか?何度も彩乃からLINEが来ていたがその全てを既読スルーしてしまっていた。今更、気まずい。
会えて嬉しいというよりかは”今の自分を見られたくない”という気持ちがどうしても上回った。なんと言えばいい?なんと答えればいい?と頭が真っ白になってしまったハルカだが……
彩乃はとても落ち着いた優しい目で、ハルカに少し近づいて「おかえりハルカ。おかえり…おかえりだよ?」と温かく声をかけられ、ハルカは「あっ……」と声を漏らすと、ポタポタと頬から涙を流していることに気がついた。
ポロポロと涙が溢れてきて止まらなかった。都会への憧れを抑えきれず田舎を捨てるように離れたハルカ。そして傷ついて田舎に戻って日常生活もままらなくて、情けなくて、精神科の薬だって処方されていて、こんな自分が惨めで惨めで死にたい気持ちに今でもときどになるハルカに対して、目の前の友人からの『おかえり』はハルカの心に響いた。
「彩乃……ごめん……何度も何度もLINEくれてたのに返信……してなくて………」と涙をぬぐいながら彩乃に告げると「いいんだよ。そんなことは気にしないで。それよりもまたハルカと会えてよかったよ」と彩乃の目にも涙が溜まっているように見えた。
ハルカは両親のために生きようと思っていた。もう自分に残されているもの、心の支えになっているものは両親しかいないと思っていた。でもそれだけじゃなかった。
ハルカにはまだ友達がいたのだ。まだ会いたくないと思っていた友達。、どんな顔をしてあえばいいのか分からなかった友達。
そんな風に思っていた友達なのにこうして何も言わずにただただ「おかえり」と言ってくれる彩乃という存在にハルカは心から感謝した。
ドラッグストアを出てお茶でもする?と彩乃から提案させるハルカだったがその日はもう帰ることにした。通院でさえ外出すると体力と気力を使う。こんな状態で仕事など出来るのかと臆病風邪に吹かれるが……今日はお茶をする気分にはなれなかった。
何してたの?何でLINEの返事しないの?都会で何があったの?と怒涛の質問攻めではなく、“おかえり”と言ってくれた彩乃にハルカの気持ちは救われたが、喫茶店に入ってお茶をするほどの時間をさいて、一緒にいるのはハルカのメンタルが持たなそうだった。
ハルカは今日は帰ることを告げ、LINEの返信は今度からきちんとすると言ってその場をあとにした。家に帰るとさっそく彩乃からLINEが来ていて「今日、会えて嬉しかったよ!また今度、ランチでも行こうね!連絡するから!」と連絡が来ていた。
ハルカは「ありがとう」とだけ返事をする。少しだけ少しだけだけど……ハルカの心に満たされる何かを感じた気がした。
秋も深まりそろそろ冬が訪れる時期になると、日がおちるのがとても早い。それでも毎日、自己流のリハビリを繰り返し、比較的穏やかな生活を送っていた。
ハルカには今でも死にたいという気持ちが、たまに襲ってくることがある。心も体もめちゃくちゃにされて、殺されてしまうのではないかという恐怖も味わった。
いや、むしろ複数の男から中出しされ顔にもたくさん精液をかけられ、髪の毛を鷲掴みにされながらイマラチオをされ殴られたり蹴られたりと、ボロ雑巾のように酷く扱われたハルカは、あのまま殺されていれば良かったと何百回も思った。
それでも今、生きてる。
不思議な話だが、あんな目にあっても生きようとしてることがハルカ自身、1番信じられない。
一度、自殺未遂をしたが失敗した。母親にバレて両親2人も自分の娘が性被害にあってしまうという悲劇に落とされた。親のため?そうなのかは分からない。分からないが、ハルカはなんとか死なずに生きなくてはいけないなと漠然と思っている。
今でも夜の人気がない道が怖い。車に乗るのが怖い。男性はとても怖い。複数の男性に囲まれたらきっと恐怖で気絶してしまうだろうと思う。それでも生きる。生きるしかないんだと自分に数千回言い聞かせている。
そんなことをぼんやりと考えながら通院の帰り道、仕事を探すならと久しぶりにお化粧をした方がいいか?と思い、バス停近くのドラッグストアに寄った時のこと、
「……ハルカ?」とドラッグストアの店内でふいに声をかけられた。友達の彩乃だった。都会に就職して1年と数ヶ月、田舎に戻ってきてそろそろ3ヶ月。久しぶりの友人との再会にハルカは体がゾワゾワとなった。
彩乃とは高校時代の友人だった。ハルカが都会へ行っても頻繁に連絡を取り合って、近況報告をしていた仲だった。来年のお正月には帰省するから、その時に遊ぼうと約束をしていた。
その約束した来年のお正月はあと2ヶ月足らずでやってくるが、ハルカは帰省するどころか都会で最悪な目にあい、のこのこと田舎に帰ってきたのだ。どんな話をすればいいのか?何度も彩乃からLINEが来ていたがその全てを既読スルーしてしまっていた。今更、気まずい。
会えて嬉しいというよりかは”今の自分を見られたくない”という気持ちがどうしても上回った。なんと言えばいい?なんと答えればいい?と頭が真っ白になってしまったハルカだが……
彩乃はとても落ち着いた優しい目で、ハルカに少し近づいて「おかえりハルカ。おかえり…おかえりだよ?」と温かく声をかけられ、ハルカは「あっ……」と声を漏らすと、ポタポタと頬から涙を流していることに気がついた。
ポロポロと涙が溢れてきて止まらなかった。都会への憧れを抑えきれず田舎を捨てるように離れたハルカ。そして傷ついて田舎に戻って日常生活もままらなくて、情けなくて、精神科の薬だって処方されていて、こんな自分が惨めで惨めで死にたい気持ちに今でもときどになるハルカに対して、目の前の友人からの『おかえり』はハルカの心に響いた。
「彩乃……ごめん……何度も何度もLINEくれてたのに返信……してなくて………」と涙をぬぐいながら彩乃に告げると「いいんだよ。そんなことは気にしないで。それよりもまたハルカと会えてよかったよ」と彩乃の目にも涙が溜まっているように見えた。
ハルカは両親のために生きようと思っていた。もう自分に残されているもの、心の支えになっているものは両親しかいないと思っていた。でもそれだけじゃなかった。
ハルカにはまだ友達がいたのだ。まだ会いたくないと思っていた友達。、どんな顔をしてあえばいいのか分からなかった友達。
そんな風に思っていた友達なのにこうして何も言わずにただただ「おかえり」と言ってくれる彩乃という存在にハルカは心から感謝した。
ドラッグストアを出てお茶でもする?と彩乃から提案させるハルカだったがその日はもう帰ることにした。通院でさえ外出すると体力と気力を使う。こんな状態で仕事など出来るのかと臆病風邪に吹かれるが……今日はお茶をする気分にはなれなかった。
何してたの?何でLINEの返事しないの?都会で何があったの?と怒涛の質問攻めではなく、“おかえり”と言ってくれた彩乃にハルカの気持ちは救われたが、喫茶店に入ってお茶をするほどの時間をさいて、一緒にいるのはハルカのメンタルが持たなそうだった。
ハルカは今日は帰ることを告げ、LINEの返信は今度からきちんとすると言ってその場をあとにした。家に帰るとさっそく彩乃からLINEが来ていて「今日、会えて嬉しかったよ!また今度、ランチでも行こうね!連絡するから!」と連絡が来ていた。
ハルカは「ありがとう」とだけ返事をする。少しだけ少しだけだけど……ハルカの心に満たされる何かを感じた気がした。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
皇帝陛下は皇妃を可愛がる~俺の可愛いお嫁さん、今日もいっぱい乱れてね?~
一ノ瀬 彩音
恋愛
ある国の皇帝である主人公は、とある理由から妻となったヒロインに毎日のように夜伽を命じる。
だが、彼女は恥ずかしいのか、いつも顔を真っ赤にして拒むのだ。
そんなある日、彼女はついに自分から求めるようになるのだが……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件
百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。
そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。
いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。)
それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる!
いいんだけど触りすぎ。
お母様も呆れからの憎しみも・・・
溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。
デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。
アリサはの気持ちは・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる