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被害の連載
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家に帰りどっと疲れが出たのか自室に直行してベッドに倒れ込むように横になった。でもあまりたくさん寝てしまうと夜に寝られなくなってしまうので、夕飯前にアラームが鳴るようにセットしてからしばしの仮眠をとった。
夕飯になり母と父との3人で食卓を囲みながら食事を取る。母がもしかすると父に説教でもしたのか?というぐらいあの発言以来、父はここ最近、しおらしくなっていた。
精神的な疲労感からかハルカはご飯の味が分からなくなっていた。何を食べても味がしなかった。美味しいとも不味いとも思わない料理をただ生きるために咀嚼しお腹の中に溜めていく。
そんな中、父が「ボコッ」と咳払いをすると、「この間はすまなかった。俺が悪かった。」と言い始めた。ハルカの箸の手が止まり、ゆっくりと父を見つめた。さらに父は話し続ける。
「会社の仕事がブラックというやつか?それだと母さんから聞いてきた。上司からパワハラに合っていて逆らえずに過重労働をさせられていて精神を病んだんだと。でも、違った会社の話は母さんの嘘だった。もっと酷い目に遭わされていることを父さんは知らなかった。知っていたらあんなに酷いことは言わなかった……と言いたいところだが実際は分からない……やはり無神経な父さんはハルカを傷つていたかもしれない。知らなかったとはい言いすぎた許してくれすまん。」
と無口な父にしてはとても長い発言だった。
その父からの謝罪がハルカの体にゆっくりと時間をかけて染み渡る。ハルカの勘違いだったのか?てっきり父はハルカの被害のことを母から聞いたのかと思った。母はハルカのことを思って言わなかったのかもしれない。
それでもその場では
「……うん」とだけ言うのが精一杯だった。
母からは「ご近所の人からも時々、お嬢さん戻ってきたの?と声をかけられるんだけど。もちろん、何で帰ってきたのかっていう説明はきちんとしてないの。だから何か人から言われても…よく事情を知らない人が適当に言っているだけだと思ってね?…いい?ハルカ…あまり自分を責めないようにね?あなたは何も悪くないんだから」と言われる。
ハルカは胸が苦しくてなった。「分かった。ご馳走様」とは母に言い、自分が使った食器を片付けると自室に戻った。
”あなたは何も悪くない”という母からのセリフはハルカを安堵させた。また明日からゆっくり生活を取り戻そうと思えてくるようだった。
ハルカは被害者だ。もちろん何も悪いことはない。どんなに自分を責めようともあの時は逃げることさえ出来なかった。何一つとして抵抗など許されない状況下での地獄だった。
100%の被害者なのに母と父に心配をかけてしまうとなんだかやりきれない気持ちになっていく。私のせいでなくても、父も母も私が被害にあったから心をえぐられるような心配をしてるに違いないと思うと、ハルカはこの先、どうしていいのかまた分からなくなっていった。
生きなくてはいけないと思う。それは思うが……何もかも忘れて幸せになる道があるのだろうか?
誰か好きな人がこの先できたとしてあの行為を……あの悍おぞましい行為がハルカは再びしないといけないのだろうか?
そんな未来を描こうものならやはりハルカは死にたくなってしまう。私にはもう無理だと思ってしまう。誰かを好きになることも、その誰かに抱かれたいと思うことも今のハルカには考えられなかった。
とにかく毎日を生きていくこと。生活に支障がないレベルにまでは回復を図らなくてはと思った。遠い未来のことをあれこれ考えるのはやめようと思った。
まずは自立を目指す。
ハルカは心にそう決める。日常生活をきちんと送り、状態を見て仕事を探して社会復帰を目指そうと思った。
父と母を安心させるためにはこれしかないのだと……ハルカはたくさん、たくさん、たくさん、自分に言い聞かせて、今の辛い日常を自分自身の力で打開しなくてはいけないと思った。
夕飯になり母と父との3人で食卓を囲みながら食事を取る。母がもしかすると父に説教でもしたのか?というぐらいあの発言以来、父はここ最近、しおらしくなっていた。
精神的な疲労感からかハルカはご飯の味が分からなくなっていた。何を食べても味がしなかった。美味しいとも不味いとも思わない料理をただ生きるために咀嚼しお腹の中に溜めていく。
そんな中、父が「ボコッ」と咳払いをすると、「この間はすまなかった。俺が悪かった。」と言い始めた。ハルカの箸の手が止まり、ゆっくりと父を見つめた。さらに父は話し続ける。
「会社の仕事がブラックというやつか?それだと母さんから聞いてきた。上司からパワハラに合っていて逆らえずに過重労働をさせられていて精神を病んだんだと。でも、違った会社の話は母さんの嘘だった。もっと酷い目に遭わされていることを父さんは知らなかった。知っていたらあんなに酷いことは言わなかった……と言いたいところだが実際は分からない……やはり無神経な父さんはハルカを傷つていたかもしれない。知らなかったとはい言いすぎた許してくれすまん。」
と無口な父にしてはとても長い発言だった。
その父からの謝罪がハルカの体にゆっくりと時間をかけて染み渡る。ハルカの勘違いだったのか?てっきり父はハルカの被害のことを母から聞いたのかと思った。母はハルカのことを思って言わなかったのかもしれない。
それでもその場では
「……うん」とだけ言うのが精一杯だった。
母からは「ご近所の人からも時々、お嬢さん戻ってきたの?と声をかけられるんだけど。もちろん、何で帰ってきたのかっていう説明はきちんとしてないの。だから何か人から言われても…よく事情を知らない人が適当に言っているだけだと思ってね?…いい?ハルカ…あまり自分を責めないようにね?あなたは何も悪くないんだから」と言われる。
ハルカは胸が苦しくてなった。「分かった。ご馳走様」とは母に言い、自分が使った食器を片付けると自室に戻った。
”あなたは何も悪くない”という母からのセリフはハルカを安堵させた。また明日からゆっくり生活を取り戻そうと思えてくるようだった。
ハルカは被害者だ。もちろん何も悪いことはない。どんなに自分を責めようともあの時は逃げることさえ出来なかった。何一つとして抵抗など許されない状況下での地獄だった。
100%の被害者なのに母と父に心配をかけてしまうとなんだかやりきれない気持ちになっていく。私のせいでなくても、父も母も私が被害にあったから心をえぐられるような心配をしてるに違いないと思うと、ハルカはこの先、どうしていいのかまた分からなくなっていった。
生きなくてはいけないと思う。それは思うが……何もかも忘れて幸せになる道があるのだろうか?
誰か好きな人がこの先できたとしてあの行為を……あの悍おぞましい行為がハルカは再びしないといけないのだろうか?
そんな未来を描こうものならやはりハルカは死にたくなってしまう。私にはもう無理だと思ってしまう。誰かを好きになることも、その誰かに抱かれたいと思うことも今のハルカには考えられなかった。
とにかく毎日を生きていくこと。生活に支障がないレベルにまでは回復を図らなくてはと思った。遠い未来のことをあれこれ考えるのはやめようと思った。
まずは自立を目指す。
ハルカは心にそう決める。日常生活をきちんと送り、状態を見て仕事を探して社会復帰を目指そうと思った。
父と母を安心させるためにはこれしかないのだと……ハルカはたくさん、たくさん、たくさん、自分に言い聞かせて、今の辛い日常を自分自身の力で打開しなくてはいけないと思った。
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